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ComcastとAppleの交渉、期待すること

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
下から、Comcastのケーブルボックス、Apple TV、そしてテレビ。

Appleが米国大手のケーブルテレビ会社Comcastと交渉しているという噂が、Wall Street Journalで伝えられました。Appleとリビングルームのテレビを結びつける材料であり、米国でも注目されるニュースになっています。

これに関連する製品として、Appleには「Apple TV」というテレビに接続してネットやMacなどのコンテンツをリビングで視聴するプロダクトがあります。またSteve Jobs氏の伝記ではテレビ業界を音楽や携帯電話と同様に変革したいという示唆が読み取れます。そのためか、どんな取り組みがあるのか、気になるのも無理はないでしょう。

ちなみに米国でソチオリンピックを見ようと思ったら、いくら有料ストリーミングなどにお金を払う意志があっても、ケーブルテレビを契約しなければ、テレビ・アプリともに視聴出来なかった、という経験があります。羽生選手の金メダルの滑りの2時間前に、Comcastに駆け込んで観戦できました。

確かに、この部分は、変革のしようがある、と身を以て体験した次第です。

日本では、gorin.jpやNHKなどでストリームやアーカイブが見られたと聞きます(米国でもアプリはダウンロードできますが、映像は流れてきません)。英国でもBBCがばっちりカバーしていたというのに、米国ときたら…。

さて、ComcastとAppleの話に話題を戻します。

私の体験上、せっかく自宅にケーブルのネット回線とApple TVがあるのだから、この両社が組むなら、1回の試合や1週間の期間などでもよいので、ソチオリンピックをネットを介してライブ放送で見られるようにしてほしい、ということです。

欲を言えば、お金を払って視聴したコンテンツを、iTunes in the Cloudで保管し、いつでも好きなときにApple TVやiPhone・iPad・iTunes(Mac/PC)で見られるようにしてくれると、それをメリットにライブコンテンツを購入して、繰り返し観ることができると、放送+録画機という現在のテレビの体験を、Appleがリプレイス可能になります。

こうしたライブチャンネルのストリーミングやコンテンツ化・販売可能化をComcastとAppleがトラフィックの融通とともに取り組んだらどうでしょう。もしもテレビを変革できるとしたら、この部分になるのではないか、と考えました。

ただし、日本でこうしたサービスが直ちに利用できるかという期待は持たない方が良いでしょう。iTunes関連のサービスになるはずで、他のAppleのハードウェアやソフトウエアと違い、環境が整備された国から順次開始、というスタイルを取っているためです。

例えば、iTunes Storeでの音楽の購入は日本でも米国でも可能ですが、音楽ストリーミングを行うiTunes Radioは現段階では日本で利用できません。映像コンテンツのビジネスモデルが違う場合は、米国の実情に合わせた環境整備がそもそも行われない可能性もあり、となるとサービスは利用できないままになってしまうからです。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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