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ネット活用の選挙運動を成功に導くには - Obama for America CTOのアドバイス

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
Obama for AmericaのCTO、Harper Reed氏。

国会の衆議院政治倫理・公選法特別委員会で、2013年4月11日、公職選挙法改正案が全会一致で可決されました。12日中に衆議院を通過し、4月中に可決する見通しです。この改正案では、インターネットを活用した選挙運動を公示後も行うことができるようになります。

日本でこれまでインターネットを活用した選挙運動を行うことはできませんでした。公示後から投票までの1週間、例えば、BlogやTwitter、Facebookなどで情報発信をしてきた候補者は沈黙し、投票締め切りまでインターネット上の一切の更新が途絶えていました。

今回の改正で、政党と候補者は電子メールを含む選挙運動が公示後も行えるようになり、有権者も電子メール以外のTwitterやFacebook、Blogでの投票や支持の呼びかけを行うことができるようになります。政党と候補者以外の電子メール活用についても、夏の参院選後に解禁に向けて「適切な措置を講じる」と明記されました。

改正後の選挙は夏に予定されている参議院議員選挙からとなる見込みです。

参考:ネット選挙解禁法案、全会一致で衆院委可決 月内成立へ

ネットでオバマ大統領再選を支えたObama for AmericaのCTOからのアドバイス

OFAはAmazon Web Serviceを活用して、「オバマ再選」という1つの目標に向けて、活動をしました。数千人のボランティアの管理や、寄付金の活用など、時間がない中でクラウドを活用しながらシステムを組み上げ、リアルとソーシャルのキャンペーンを成功に導きました。

そんな仕組み作りを指揮していたReed氏は、日本のネット選挙解禁にも強い関心を持っていると話していました。

今まで使えなかったものが使えるようになるインパクトは、最初の選挙の試行錯誤の大きさによって決まります。OFAではあらゆるコミュニケーションツールを活用して「有権者を動員する」という事を重視していました。動員とは、支持者を集会に集めたり、寄付金を集めたりすると言う意味です。

そこでReed氏が、米国と同じであろう日本でのネット選挙の問題点として、「デジタル・デバイド」を挙げました。

いくらネットが解禁になっても、ネットに明るくない、あるいはネットメディアの影響力がそれほど高くないユーザーにとっては、「聞いてもらえない声」になってしまいます。効率的な選挙運動やネットでの速度の速い拡散の裏で、伝わっていない人の数の膨大さをついつい見落としてしまう問題点があります。

ネット選挙が解禁されたときに重要なことは、意外にも、ネットでキャンペーンに参加する事を決めた人が、隣の家のドアをノックして、非ネットユーザーにもアナログな手段で「伝える」「拡げる」事だと言います。あるいは電話をかけて話をすることも、OFAでは1つの成功事例としてあげられていました。

直接有権者に呼びかけるツールとしてインターネットを活用することはもちろんですが、いかに支持を拡げるかを支えるツールとしての活用もデザインしていくべきでしょう。夏まであまり時間がありませんが、定着する新しい選挙の姿が作られていくことに期待しています。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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