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Twitter分析、ネットと選挙と「政治参加」について

松村太郎ジャーナリスト/iU 専任教員
バークレーのビアレストランで、オバマ大統領再選が決まった瞬間、歓喜の支持者たち。

冒頭の写真は、先月行われた米国大統領選挙で、開票中、オバマ大統領の再選が決まった瞬間の写真です。カリフォルニア州バークレーにあるビール工場併設のレストラン。この地域の民主党支持者たちが集まり、東海岸で投票が締め切られた西海岸時間の午後5時から、ビールを飲みながら開票状況を見守っていました。

カリフォルニア州は人口も多く、選挙人の数も多く、そしてこれまで民主党支持のエリア。他の州の開票状況では拮抗していましたが、カリフォルニア州がオバマ大統領を選んだことが報じられた瞬間歓声が上がり、程なくしてオバマ大統領の再選が決定的となってさらに大きな歓声が上がりました。西海岸時間8時15分頃でしょうか。投票が締め切られてすぐの再選決定は意外とあっけなかったようです。

支持者たちがレストランに集まって、わいわい開票を見守るという風景は日本の投票日のそれとは違います。我が家では選挙の日、午前中に投票を済ませて、午後は出かけて、夕方早めに戻ってきてから、開票状況をテレビで見守るという過ごし方をしていました。どちらかというと家族で見ていましたが、米国ではパブリックな場に集まるという点に違いを感じました。良い体験だったと思います。

Twitterの分析と選挙結果、パターンを見つけ始めるきっかけとして

シリコンバレーにあるKDDI研究所のオフィスでは、ソーシャルメディアの分析エンジン「Social Media Visualizer」を開発しています。KDDI研究所が提供するSocial Media Visualizer(http://smviz.com)を利用して11月28日から12月13日までに収集したTwitterデータを解析した結果を見てみましょう。

なお、今回限りではなく継続的にTwitterの分析を見ていくなかでパターンを発見することが大切ですので、実際とTwitterとどういう関係性があるのか、という視点で見ていきたいと思います。

政党別Tweet数と、ネガティブ・ポジティブの推移。
政党別Tweet数と、ネガティブ・ポジティブの推移。

まずは自民党、民主党、日本維新の会のツイート数とポジティブ、ネガティブの分析です。日本維新の会は11月の終わりに、Twitter上で言及されていた数が最も高いという状況でした。しかし期間の後半になるにつれて言及数は他の政党と同程度になり、13日の段階で自民党・維新の会・民主党の順となりました。

また、ポジティブ、ネガティブのグラフを見ていると、必ずしも大勝した自民党がポジティブに受け止められ続けていたわけではなかったようです。例えばニコニコ動画や報道ステーションの党首討論があった日には自民党に対するネガティブな言及が増えるという結果が出ています。一方読売による世論調査では3党共にポジティブが最大値を取っている様子も分かります。

人名別Tweet数、ネガティブ・ポジティブの推移。
人名別Tweet数、ネガティブ・ポジティブの推移。

続いて、「安部」「石原」「野田」「橋下」各氏の名前での言及数とネガティブ、ポジティブの分析です。これを見ると、期間を通じて安部氏が言及数で多く推移していた様子が分かります。次いで石原氏、そして野田氏と橋下氏が同程度の言及数であったことが分かります。

また、各党が言及されている内容のキーワードを見ると、政策に関するキーワードが言及されています。「改憲」「徴兵制」「TPP」「脱原発」といった政策に関するキーワードは、世代や男女別で分析すると、各世代の関心領域を浮き彫りにすることができそうです。

例えば30代未満のツイートで際立つキーワードに「消費税」が上がっていたり、自民党に関するツイートでは「脱原発」が指摘されており、文脈としてはいずれもネガティブな指摘で触れられています。また失言や問題が表面化した際には、そのキーワードが多く言及されやすいことも指摘できるでしょう。

ソーシャルメディアを、「読み解く」ツールに

今回、そして2013年にも行われる選挙の情報を継続的に収集・分析することで、当落だけでなく、個別の政策に対するソーシャルリスニングのツールとして活用すること可能になっていくでしょう。

というのも、日本の場合、選挙戦はどうしても解散から公示、投票までの非常に短い期間にフォーカスされてしまい、より長いスパンで関心を集め続けているわけではない点は、分析以前の問題です。2012年12月から2013年8月にかけてという期間で、引き続き、分析に注目してみたいと思っています。

ちょうど時を同じくして、TwitterとNielsenは、ブランドに続いてテレビの視聴率に関しての調査でも提携を発表しました(参考:http://jp.techcrunch.com/archives/20121217nielsen-twitter-tv-rating/)。視聴しながらのツイートだけでなく、これに対するレスポンスも含めて番組への反響として調査し、既存の視聴率調査を補完する目的があるといいます。

日本でも、テレビ局や番組名のハッシュタグで多数のツイートがなされており、非常に膨大な数のツイートが流れ、定性的、というよりはシーンごとの反応数を集める定量的な分析も可能になるのではないか、という状態です。画面の中には流れないまでも、ちょうどニコニコ動画のように、シーンにツイートが流れてくる感覚。例えば面白いシーンは文字で画面が埋まる、というと分かりやすいはずです。

政治参加を日常にするきっかけをいかにつくるか

政治の話に戻すと、もちろん議員のみなさんは活動報告の集会を地元で開くなどしてコミュニケーションをとってきましたが、より多くの人に触れる情報は、新聞やテレビといったマスメディアを通して我々の手元に届けられる情報でした。

一方で、ブログ、ソーシャルメディアは、より直接的に、そして日常的に、情報を直接有権者に届ける手段も充実しています。例えば自民党の安倍総裁はFacebookでその活動や意見を直接書き込むようになりました(参考:https://www.facebook.com/abeshinzo)。こうした手段は、メディアによって切り取られた情報ではなく、有権者が直接政治家と対話したりチェックする「日常」を作るでしょう。

一方、新しいメディアにアクセスできない人たちが政治参加できなくなるとの批判もあり、リテラシーや所得格差に起因する属性が生まれてしまうことは問題だと感じる一方で、そうしたメディアにアクセスできる属性がより「政治参加」する場面も考えていくべきではないか、と思います。

米国では、投票する事はもちろん、投票への呼びかけ、候補者・政策を選ぶことによってあなたの将来がどうなるか、といった具体的な理解を深める活動を、多くのボランティアが支えています。開票速報をビアレストランに集まって共有するのは、その最後の段階であって、継続的な活動の結果でした。

選挙が1つ終わり、1年以内に次の選挙が必ずある今のタイミングは、非常によいきっかけを与えていると考えています。

ジャーナリスト/iU 専任教員

1980年東京生まれ。モバイル・ソーシャルを中心とした新しいメディアとライフスタイル・ワークスタイルの関係をテーマに取材・執筆を行う他、企業のアドバイザリーや企画を手がける。2020年よりiU 情報経営イノベーション専門職大学で、デザイン思考、ビジネスフレームワーク、ケーススタディ、クリエイティブの教鞭を執る。

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米国カリフォルニア州バークレー在住の松村太郎が、東京・米国西海岸の2つの視点から、テクノロジーやカルチャーの今とこれからを分かりやすく読み解きます。毎回のテーマは、モバイル、ソーシャルなどのテクノロジービジネス、日本と米国西海岸が関係するカルチャー、これらが多面的に関連するライフスタイルなど、双方の生活者の視点でご紹介します。テーマのリクエストも受け付けています。

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