【熊本地震】「二極化が進んでいる」 業者不足などで寺院の復興は道半ば

倒壊した浄信寺の重要文化財の門と小田孝行住職

熊本地震から2年が過ぎた。インフラや建物の復旧が進む一方で、震源地に近い寺院では、業者不足や人件費高騰などの問題により、本堂などの再建が遅れている。

浄信寺の仮本堂。天井に穴が空き、雨漏りしている=2018年4月、熊本県益城町の浄信寺(山田桂士撮影)
浄信寺の仮本堂。天井に穴が空き、雨漏りしている=2018年4月、熊本県益城町の浄信寺(山田桂士撮影)

「やっとここまで来ましたよ」。近くを断層が走る、熊本県益城町田原の浄信寺。小田孝行住職は、疲労感をにじませつつ、こう口にした。

本堂は本震で全壊。今は隣接する建物を仮本堂として使用している。しかしその仮本堂も、天井に穴が空き、雨漏りが。雨天だった取材日は、穴の真下にバケツが置かれていた。

小田住職によると、地震後からしばらくの間、宮大工を擁する建築会社がなかなか見つからなかった。ようやく見つけたと思っても、人件費の高騰などで契約後に新たな見積もりを提示されるケースもあり、頓挫。本堂は昨年7月になって、やっと着工したという。現在、基礎部分の工事がようやく完了したところで、来年12月中の完成を目指す。

解体後に再建が進む本堂は、ようやく基礎部分が完成した=2018年4月、熊本県益城町の浄信寺(山田桂士撮影)
解体後に再建が進む本堂は、ようやく基礎部分が完成した=2018年4月、熊本県益城町の浄信寺(山田桂士撮影)

地震前、本堂の天井には、寺院絵師が10年かけて制作した、美しい183枚の天井絵があった。十二支や野菜などの絵が、人々の目を楽しませていたという。しかし、天井絵も含め本堂は文化財指定を受けておらず、国や県からの再建のための補助金は期待できない。門徒のほとんどが被災しており、寄付を募ることも難しい。多額の本堂再建費用は、支援金や自己資金、融資により捻出した。

仮設の鐘楼と小田住職。奥には地震で落下した梵鐘が見える=2018年4月、熊本県益城町の浄信寺(山田桂士撮影)
仮設の鐘楼と小田住職。奥には地震で落下した梵鐘が見える=2018年4月、熊本県益城町の浄信寺(山田桂士撮影)

浄信寺は、地域住民らにとって身近な場所だった。毎年大晦日には、約300人が除夜の鐘を聴きに訪れた。しかし、梵鐘(ぼんしょう)も地震により落下。現在に至るまで、仮設の鐘楼(しょうろう)でしのいでいる。それでも、昨年の大晦日には、約200人の地域住民が訪れた。

「(地震があったことを)忘れたいが、忘れられないし、忘れたらいかん」と語気を強める小田住職。「地域のためにも一刻も早く本堂を再建したい。もちろん災害に対応できる寺として」と前を向いた。

「地域のためにも一刻も早く本堂を再建したい」と語る小田孝行住職=2018年4月、熊本県益城町の浄信寺(山田桂士撮影)
「地域のためにも一刻も早く本堂を再建したい」と語る小田孝行住職=2018年4月、熊本県益城町の浄信寺(山田桂士撮影)

熊本県内で最も寺が多い、浄土真宗本願寺派の熊本教区教務所によると、県内にある同派の寺465のうち、324が被災。うち21の寺で本堂が全壊した。特に、震源地に近い浄信寺を含む3つの寺では、本堂が倒壊したという。ほかにも庫裏(くり)や付属建物の被害も多くの寺で確認されており、再建が進んでいないケースも多い。

浄土真宗本願寺派の熊本教区教務所には今も「現地緊急災害対策本部」が置かれている=2018年4月、熊本市中央区(筆者撮影)
浄土真宗本願寺派の熊本教区教務所には今も「現地緊急災害対策本部」が置かれている=2018年4月、熊本市中央区(筆者撮影)

教務所には寺から「工事費用が高騰しており困っている」といった声が寄せられている。また、再建の目処が立っている寺とそうでない寺の二極化も進んでおり、今も本堂が全壊した寺のうち、2~3割は先の見通しが立たない状態だという。

教務所には今も「現地緊急災害対策本部」が置かれている。担当者は「本堂が使えず近所の公民館で法要するケースも見られる。寺に関してはまだ復興にはほど遠い状況だ」と話している。