国会は閉幕したが、成立した法律の中に、議員立法で提出されていた改正建築物木材利用促進法がある。

 この法律、元の正式名称を「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」という。それを「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改正したものである。

 改正点は、名前だけではない。大きな部分は、これまで公共建築物を中心に定めていた木材利用の促進を、今後は民間を含む一般での木材利用をめざすということだろう。そして、気候変動防止のための「脱炭素」の動きを進めるという。

 また農林水産省内に木材利用促進本部を設置するほか、木材利用促進の日(10月8日)および木材利用促進月間(10月1~31日まで)を設けるなども入っている。

 本当に木材利用を増やせば二酸化炭素排出の抑制になるのか、逆に森林破壊を進めてしまわないか、カーボンニュートラルと言ったって数十年しないと成立しないんじゃないか……など、いくつかツッコみたいところもあるが、そこは置いておこう。

 私が法律の条項に目を通して感じたのは、ちょっと別の点だ。

注目点は「国産材」という言葉の有無

 それは、条文の中に幾度も「木材」は登場するが、「国産材」とはどこにも書かれていないこと。つまり利用するのは木材ならいいわけで、外材を使っても「木材利用促進」になると読み取れたのだ。

 現在、建築業界を騒がせているウッドショックは、外材(主に米材やヨーロッパ材)の価格が上がり、木材不足に陥ったことから始まっている。そこで代用として国産材を“しぶしぶ”使おうとしたら、こちらまで手に入らなくなった、価格が上がってしまった、という状態なのである。

 現実に、日本の住宅建築材の約6割は外材だ。またコンクリートを打つのに必要なコンクリートパネル(合板)も、熱帯産木材でつくられたものが多い。国産材は、なかなか取って代われない。柱は国産材でなんとかなっても、梁や土台用の木材は、外材の方が多用されるのだ。木材強度などの違いもあるし、なにより国産材が供給力不足であることは、今回のウッドショックが証明した。

 つまり木材をもっと使おうと呼びかけた結果、外材依存が進んでしまうことになってもおかしくないわけである。もちろんウッドショックが起きたように外材の調達も簡単ではなくなりつつあるが、正直、まだまだ外材は強い。建築材を全部国産材に切り換えようとしたら、設計から見直さないといけなくなるから敬遠されがちだ。

 しかし、外材は海の向こうから運ばれて来るわけで、その移動にかけるエネルギーを考えても「脱炭素」の趣旨から外れるのではなかろうか。

貿易協定で「国産材」は使えない

 とはいえ、法律に「国産材を使うように」とは明記できないだろう。それこそ世界貿易機関(WTO)の協定を初めとして、昨今はTPPやEPA、FTAなどたくさんの貿易協定が各国と結ばれているが、いずれも貿易の障害となる規定をなくすことが主眼となっている。つまり「外材ではなく国産材を」なんて法律に書き込めば、協定違反になってしまうのだ。

 これは、外材と国産材は対等に扱わなくてはならないことを示している。ある意味、当たり前のことだ。

 しかし、ここで「国産材の供給力不足」という問題が持ち上がる。つまり、法律でいくら木材利用を促進しようと思っても、足元の国産材の安定供給を実現しなければ絵に描いた餅どころか、外材を応援していることになりかねない。

国産材の評判落とした木材ポイント

 9年前から3年間、林野庁は木材利用推進のための「木材ポイント事業」というものを行ったことがある。

 住宅の新築や改築時に木材を使うとポイントがつけられて、さまざまな商品および商品券が受け取れるという制度だ。その際は、対象を国産材に限定するとまずいからと「地域材」という言葉を使って行われた。

 ところがカナダなどいくつかの国からクレームがつき、結局一定の条件を充たした外材もOKとなった。しかも、国産材産地の動きが鈍く、工務店などが使おうとしても、なかなか思うような部材がなく、しかも注文してもすぐに届かないなどの不協和音が発生した。結局は、国産材の評判を落としたとさえ言われたのである。

奮起すべきは山と製材の現場

 今回の改正木材利用促進法も、お題目としての利用促進を唱えても、しっかり要求される性能の部材の種類と数量を充たした国産材を供給できなければ、やがて建築側は外材に流れるだろう。

 山側は、林業を応援する法律ができた、と手放しで喜べる状態でははない。利用促進の要である原木の供給と製材加工の現場こそ奮起しなければなるまい。