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旅館でこんな色の豚肉料理出てきたけど・・・本当に食べられるのか?

瀧澤信秋ホテル評論家
まだ調理前?と思いきや・・・(筆者撮影)

この夏の終わりに訪れた旅館で偶然出会った驚きの夕食。その旅館は「澄江 知多」といい、その名の通り知多半島に位置、風光明媚な内海千鳥ヶ浜海水浴場に面しています。アクセスは、以前中部国際空港へ出向いた際に利用したことのあった知多半島道路を走り、もっと南下すると蛸で有名な日間賀島への船にも乗れる港へ至りますが、手前の南知多ICが宿への最寄りです。電車なら名鉄内海駅より車で5分ほど。海岸まで出ると突然南国感溢れるビーチが開け雰囲気抜群です。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

18歳以上限定の大人の宿で、到着するとウェルカムドリンクで生ビールもセレクト可能。

ウェルカムドリンク(筆者撮影)
ウェルカムドリンク(筆者撮影)

ロビーに面してワインやウイスキーといったアルコールなどフリーの共用ラウンジもあり、お得感高い宿です。ロケーションやそんなところにも魅力を抱きつつ訪れたわけですが、そこで出会ったのが低温調理ディナー。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

低温調理法は、以前から気になる調理法でテレビで見たことが知るきっかけで食材がすこぶる美味しくなるという触れ込みでした。でも、調理の温度や時間をはじめ相当留意しなくてはならない点が多いとのことで、食品の安全という点からも素人が安直にやれるものではないというのは何となく理解しつつ、いずれにしても自分でやるのにはハードルが高いなぁと実行するのを諦めていました。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

宿の方から聞くところによると、コロナ禍の影響もありご多分に漏れずクローズしていた旅館だったとのことですが、リスタートに際して低温調理についても見識の深い凄腕料理長を迎え“低温調理料理と旨い魚が食べられる旅館”というコンセプトで魅力を発信していこうと取り組んでいるとのこと。タイミングのいい幸運な訪問となりました。

(澄江 知多提供)
(澄江 知多提供)

そもそも低温調理とは何か-調べてみる。

「肉の低温調理に注意! 自己流は危険です。」(群馬県ホームページより引用/一部筆者が句読点など修正)

●低温調理は、肉がしっとりと柔らかく仕上がり、幅広い世代に人気があります。しかし、インターネットなどに掲載されているレシピの中には、食中毒菌を十分に殺菌できないものもあり、大変危険です。基本を押さえて、正しい調理をしましょう。

●肉の低温調理で食中毒菌を殺菌するのに必要な温度と時間は、肉の中心部の温度が 63度で30分間以上、70度で3分間以上、75度で1分間以上。お湯の温度ではなく、肉の中心部の温度です。63度未満では十分な殺菌はできません。必ず63度以上を保ってください。

●肉を入れるビニール袋は、空気をしっかり抜いてください。肉がお湯の外に出ないように、たっぷりのお湯で調理しましょう。調理中は、お湯の温度を一定に保つ必要があります。家庭用の低温調理器などを利用すると便利です。この場合、必要な温度の1~2度高めに設定しましょう。必ず肉の中心温度を測り、目標温度に達したことを確認します。肉の中心部の温度が目標温度に達してから、必要時間を計ります。

●特に注意が必要な点。肉は加熱が十分でない場合も色が変化するため、肉の色だけでは判断できません。お湯に入れてから肉の中心部の温度が上がるまで、相当な時間が必要です。肉の部位や厚みによっても低温調理の時間が異なるので、必ず料理用温度計などで確認しましょう。(以下詳細はホームページ参照)

-以上引用終わり

細かな諸条件があるようですが、いずれにしても、専用の調理器具の準備や低温調理について知識・技術を持つ人の手による提供が安心のようです。前述のとおり澄江 知多の料理長は、低温調理について知識・経験とも豊富とのこと。専用の器具も揃え満を持しての低温調理グルメの手腕をこの旅館で発揮していくといいます。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

実際のメニューとしては、海辺にして魚の旨い宿ということで刺身の提供のほか、伊勢海老や鮑は早くも低温調理で出されました。甘みが際立ち食材の持つ本来の旨みを実感できましたが、何より驚いたのがブランド豚である「恋美豚(こいびとん)」の低温調理でした。

SPF認証ブランド豚である恋美豚は、ご当地「愛知県美浜町大字奥田地区にある恋の水神社付近で、徹底した管理によりストレスの少ない環境で育った年間約17000頭のみ出荷される豚」(美浜町ホームページより一部引用)といい、厚みがあるのに美味しく柔らかで後味さわやかといわれています。

これで完成です(筆者撮影)
これで完成です(筆者撮影)

そんな恋美豚ですが、表面はしっかりと焼き上げられているところ、その断面を見るに、まだ赤身の残っている豚ロース・・・本当に食べられるのだろうか?と疑心暗鬼になってしまうほどのビジュアルです。豚肉だけに牛肉のレアステーキとはワケが違います。ところが口に含むとその柔らかさに驚き次々押し寄せるギュッと濃縮された旨み・・・長時間かけて調理されたことの効用でしょうか。

念願だったグルメの実力をブランド豚で存分満喫、低温調理驚愕の宴となりました。ロビーラウンジに移動してフリーのワインやウイスキーで余韻に浸る充実時間な知多の夜はまだまだ長いです。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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