高いカップルユース需要

ホテルにも様々なスタイルがある。シティホテルやビジネスホテル、リゾートホテルなどは馴染み深いが、比べることによりサービスの本質を考察すべく、様々なスタイルの宿泊施設を評論の対象としている筆者にとって、業態のボーダレス化というアプローチから「レジャーホテル」についても、評論家になった当初から積極的にメディア発信してきた。

コロナ禍で改めて業界でフォーカスされてきたのがカップルユースの需要である。宿泊需要が激減する中、一般の高級ホテルでもテレワークプランなど日中のデイユースプランが多く出された。そうした現場の声を聞くと、純粋なテレワークというよりも、カップルでの利用もかなりの割合であり助けられたという話が印象的だった。

ウォーターホテルS国立店(筆者撮影)
ウォーターホテルS国立店(筆者撮影)

デイユースの十八番といえば、伝統的にレジャーホテルであったが、レジャーホテルという呼称は、ここ数年で業界から一般的にも認知されてきたワードである。無論まさに!というイメージのトラディショナル的ホテルはいまだ多くみられる。他方、伝統的な男女同伴といった”本来の目的”とは異なり、女子会やリゾートホテルとしての癒しを求める利用なども増加しており、ハードそのものも妖艶、淫靡という言葉とはほど遠いイメージの施設も増加、業界のイメージ転換の象徴でもあり、広く人気を博している。

プライバシー性の高さ

レジャーホテルでは、サウナやジャグジー、果ては露天風呂といった充実の温浴設備を客室に設けるケースもあり、癒しもテーマにスタイルの多様化を見せているのもこのカテゴリーの特徴だ。最近ではパブリックスペースを充実させ、ドリンクバーやアメニティバーなど、ゲスト同士が顔を合わせることも臆することない光景が見られるホテルもあり驚かされる。

とはいえ、一般ホテルとの大きな差はプライバシー性の高さとその実現であり、ゲスト同士はもとよりスタッフと対面することすらもタブー視されている。確かにスタッフとゲストが対面するフロントはなく(法令の詳述は避けるが対面フロントを設けるレジャーホテルもある)、到着してから出発するまで誰にも会わないのはレジャーホテルでは当然の事象だ。

人気レジャーホテル

個人的にレジャーホテルで利用率の高い施設が「WATER HOTEL S 国立店(東京都国立市)」であるが、シンプルで美しい外観にして至る所に「水」をテーマとした仕掛けがあり、客室に置かれたミネラルウォーターまで厳選、まさに水がコンセプトのレジャーホテルである。動線も秀逸でプライバシー感の高さは一級だ。 

テラス付きの客室が人気(筆者撮影)
テラス付きの客室が人気(筆者撮影)

さまざまなタイプの客室が用意されているが、いずれの客室も調度品やリネンの質感、アメニティのクオリティに至るまで厳選されている。人気の客室はテラスの付いた部屋で、全室サウナ付きのホテルにして低温の軟水が張れるジャグジーに加え、外気浴スペースも確保できるのはサウナファンにも嬉しいだろう。

特筆すべきはルームサービス。利用率90パーセント超とゲストから圧倒的な支持を受ける。バックヤードには本格的な厨房を設置、和・洋・シーズナリティメニュー、デザートに各種ドリンク、質を重視した豊富なラインナップでグルメなゲストを唸らせる。原価率なんと60パーセント超という食材への飽くなき追求はゲストに安い!と思わせるわけで、都心からも多くのゲストが来訪する。

内容からすると相当安価に感じるメニューが並ぶ(筆者撮影)
内容からすると相当安価に感じるメニューが並ぶ(筆者撮影)

一般のホテルでは料飲部門も利益の要であるが、「客室での快適滞在を実現するために、美味しい食事を楽しんでいただくことのみに主眼を置くので、そこで儲けようという発想はない」と運営者は話す。結果として長時間の滞在に繋がり、リピーターも獲得、驚異的な稼働を誇るホテルとしても知られるようになった。

チャイムを2回鳴らす理由

ところで、レジャーホテルではスタッフとゲストが対面することはタブーであると前述したが、ルームサービスメニューの受け渡し方法も興味深い。よく見られるのが、ドアの横に受け渡し用の小窓を設けるパターンだが、ウォーターホテルS国立店には(少なくとも筆者が利用したことのある客室には)そのような窓はなかったと記憶している。

メニューに添えられた説明書き(筆者撮影)
メニューに添えられた説明書き(筆者撮影)

まず、ルームサービスのオーダーはテレビ画面上で行う。料理が出来上がると運ばれる前に内線電話が鳴る(出る必要は無し)。到着すると1回目のチャイムが1度鳴る(ここで出てはいけない)。部屋のエントランスに料理が載せられたワゴンが置かれ、スタッフがドアを閉めたタイミングで2回目のチャイムが2度鳴らされる。これが到着完了の合図だ。

複数のドライヤーも当然

筆者は2014年に372軒の宿泊施設へチェックインするというミッションを遂行したが、その際にアメニティは使用せず、ミッション遂行後に比較するため、持ち帰れるものは全て持ち帰りホテル毎にパックキングして保管していた(これについても後日記事にしたいと思う)。ミッション後、比較してみると世界的ラグジュアリーホテルよりも、レジャーホテルのアメニティが多かったことに驚いたが、よくよく考えると当然のことなのかもしれない。

アメニティの豊富さも特徴(筆者撮影)
アメニティの豊富さも特徴(筆者撮影)

突発的利用も多く基本ウォークイン(予約をしないで直接来訪する)の業態であることに加え、そもそも直接的なサービスを提供出来ないことから、ホテル側は想定出来る選択肢を可能な限り用意しておく必要に迫られる。たとえば、ドライヤー類が複数(ドライヤー、カールドライヤー、ヘアアイロンなど)置かれているのもレジャーホテルでは当然だ。

タブー?

タブーというワード繋がりでいえば、運営会社によってはレジャーホテルも運営しつつ一般ホテルも手がけているというケースは意外に多い。タブーというのは(ステークホルダーへも含めた)イメージの問題もあり、実質的に同一の運営会社であっても完全に情報拡散は峻別されている。

そうした意味で具体的なホテル名など記せないものの、特徴的なのは、レジャーホテルも運営する会社が手がける一般ホテルの口コミが概して高評価ということだ。いかに先入観を排するかは評論家として日頃から大切にしていることであるが、人的サービスのないこの業態のポスピタリティ・マインドを取材するほどに、妙な先入観にとらわれていたことに気付かされる。

対面接客を忌避、デイユースやお籠もり需要、ルームサービスといった元来レジャーホテルに尊ばれてきたものが、コロナ禍において一般ホテルでも大きくフォーカスされている。これまでの常識を次々と覆してきたコロナ禍であるが、ホテル業態のボーダレス化もますます加速しているのかもしれない。