プリンスホテル売却!?

このところ有名ホテルに関する報道が目白押しだ。前回寄稿したバッハ会長が宿泊しているとされる「The Okura Tokyo(オークラ東京)」のように五輪関連でホテルが注目されるケースもあれば、「帝国ホテル 東京」のサービスアパートメントのようなコロナ禍の影響ともいえる従来では考えられなかった内容のニュースも際立つ。

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最近話題になったのが、西武ホールディングス(HD)保有のホテルなど40施設程度を売却する方向で検討していることが分かったというニュースだ。「売却する方向で検討しているのは、ザ・プリンスパークタワー東京や札幌プリンスホテル、びわ湖大津プリンスホテルなど約10のホテルのほか、ゴルフ場やスキー場といったレジャー施設。売却後も運営は続け、不動産の保有と分離することでコストを抑えて収益性を高める」という(時事ドットコムニュース)。

西武HD、40施設売却へ ホテルなど、1000億円超で 時事ドットコムニュース

プリンスホテルといえば、多くの人々が知っているホテルブランドだろう。一方で、知っているようで奥深い部分があるのもまたホテルだ。売却に至る経緯やホテルの所有や運営といった専門的な観点からの論評は別に譲るとして、ここではホテル評論家として“そもそもプリンスホテルってどんなホテル?”という点にフォーカスしたいと思う。

都心にあって緑豊かで贅沢なロケーション

結婚式や宴会、レストランやバー、カフェラウンジの利用など数多くのサービスを提供する“シティホテル”と呼ばれるホテルの懐は深い。都心に多く展開するプリンスホテルへも、宿泊はせずとも一度は出向いたことがあるという人も多いのではないだろうか。「宴も高輪(たかなわ)プリンスホテル」なんて一昔前に流行った親父ギャグではないが、プリンスホテルには特徴的なエリアがある。

ザ・プリンス パークタワー東京(筆者撮影)
ザ・プリンス パークタワー東京(筆者撮影)

中でも“品川・高輪エリア”は知られるところ。約3500室というスケールの「品川プリンスホテル」をはじめ、有名人の結婚式や様々なイベントでも知られる“飛天の間”擁する「グランドプリンスホテル新高輪」「ザ・プリンス さくらタワー東京」など、都心にして広大で緑豊かなロケーションという“プリンスホテルエリア”だ。

品川・高輪エリアからほど近い“芝公園エリア”も緑溢れる贅沢なロケーション。「ザ・プリンス パークタワー 東京」「東京プリンスホテル」といったホテルがあり、東京タワーの迫力ある姿が眼前に望めるのも魅力だ。東京都心の地図を広げてみると、いずれのエリアも周囲にビルなど林立しない贅沢な立地であることがわかる。

プリンスホテルのブランド構成

先ほどから「グランドプリンス」や「ザ・プリンス」といった書き方をしているが、プリンスホテルと一口で言っても様々なブランドがある。このようなブランドの中でカテゴライズしたものを“サブブランド”とも言うが、プリンスホテルでいえば上位カテゴリーから「ザ・プリンス」「グランドプリンスホテル」「プリンスホテル」(後述する「プリンス スマート イン」もある)ということになる。

新横浜プリンスホテルからの眺望(筆者撮影)
新横浜プリンスホテルからの眺望(筆者撮影)

前述の品川・高輪エリアや芝公園エリアのように上位ブランドが集まるエリアが見られる一方、「新横浜プリンスホテル」「川越プリンスホテル」のようにザ・プリンスやグランドプリンスを冠しないプリンスホテルも多い。こうしたホテルは、ご当地で代表的なフルサービスホテルという存在であることも特徴だ。

また、西武新宿線西武新宿駅に直結する「新宿プリンスホテル」やプリンスホテル本社のある池袋には「池袋 サンシャインシティプリンスホテル」など、西武クループのスケールメリットを感じるホテルもある。いずれにしても首都圏エリアのプリンスホテルは、全体として共通したテーマでイベントやプランなど打ち出すことも多く、サブブランドやカテゴリーにかかわらずシティホテルとしてのクオリティ堅持もテーマだ。

世相やトレンドとプリンスホテル

ところで、プリンスホテルといえば世相やトレンドというアプローチからも何かと注目されてきた。たとえば「赤プリ(赤坂プリンスホテル)」といえば、バブル華やかなりし頃、クリスマスシーズンの宿泊予約は1年前から満室になるという代名詞的なホテルであった。

その後、赤プリはなくなり跡地は「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」(ザ・プリンスでもグランドプリンスでもない特別なブランド)という現在の光景であるが、ホテルの伝統と共にいまだ語り継がれる逸話の多さもプリンスホテルの特色であろう。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

映画やドラマの舞台としてもプリンスホテルの存在感は大きい。「私をスキーに連れてって」で当時大ブームになったのが、苗場・万座といったスキーリゾートであるが、まさにプリンスホテルあってのエリアともいえる。苗場といえばユーミンの冬のリゾートライブも思い浮かべるが、会場は「苗場プリンスホテル」だ。

今年40周年というドラマ「北の国から」は北海道富良野市が舞台だが、北の国からをはじめ倉本聰さんのドラマの制作現場を支えてきたのも富良野のプリンスホテルであることはよく知られている。新富良野プリンスホテルに隣接する「ニングルテラス」「風のガーデン」「森の時計」など、倉本ファンなら一度は訪れたい垂涎のエリアだ。

リゾートとプリンスホテル

ザ・プリンス 箱根芦ノ湖(筆者撮影)
ザ・プリンス 箱根芦ノ湖(筆者撮影)

スキーリゾートや北海道のプリンスホテルのように、都市部ばかりではなくリゾートエリアへの展開も際立つ。東京近郊では箱根・伊豆が馴染み深い。箱根ではザ・プリンスブランドである「ザ・プリンス 箱根芦ノ湖」があり上質なリゾートホテルとしてファンも多い。

過日、ホテルのレストランスタッフが腕時計を内側に着ける理由、という寄稿をし反響をいただいたが、本文には記さなかったものの、実はこちらのホテルにある「メインダイニングルーム ル・トリアノン」での出来事を綴ったものだ。

ホテルレストランの男性スタッフが【腕時計を内側に着ける】理由 Yahoo!ニュース(個人)

箱根ではゴルフリゾートもテーマとした展開が見られる。「仙石原プリンスホテル」「箱根湯の花プリンスホテル」などは、客室の窓から望む雄大なゴルフコースの光景が圧巻。こうした“リゾート”と“プリンスホテル”といえば、前記した新富良野プリンスホテルをはじめ北海道も主戦場だ。「函館大沼プリンスホテル」「屈斜路プリンスホテル」といったまさにリゾートホテルの格を感じるホテルから「札幌プリンスホテル」「釧路プリンスホテル」のように都市部への展開もみられる。

日南海岸南郷プリンスホテル(筆者撮影)
日南海岸南郷プリンスホテル(筆者撮影)

北海道と比して九州には1軒のみ。宮崎県日南海岸に面する「日南海岸南郷プリンスホテル」で、西武ライオンズがキャンプの際に利用するホテルとしても知られる。リゾートという点では、軽井沢もプリンスホテルエリアとして名高い。「ザ・プリンス 軽井沢」「軽井沢プリンスホテル(ウエスト・イースト)」など広大なプリンスホテルエリアを控える。東北地方にも「十和田プリンスホテル」「雫石プリンスホテル」が、また「ザ・プリンス 京都宝ヶ池」「びわ湖大津プリンスホテル」といった関西や名古屋、広島にもプリンスホテルがある。

“プリンスホテル”を冠しない施設

ザッと全国の“プリンスホテル名を冠するホテル”をおさらいしてみたが、プリンスホテルを冠しないグループホテルもある。公式サイト“プリンスホテルズ&リゾーツ”のホテル一覧で確認してみると、国内で“プリンスホテル”を冠する施設が39、冠しないホテルや旅館が8施設となっている。

冠しない施設としては、ゴルフコースが名高いクラシックホテルとして高名な「川奈ホテル」「箱根園コテージ」、近頃京都に誕生したラグジュアリーとして話題になった「ザ・ホテル青龍 京都清水」などがみられる。

東京ベイ潮見プリンスホテル(筆者撮影)
東京ベイ潮見プリンスホテル(筆者撮影)

近年の展開をみると、これまでの伝統的なシティホテルといったプリンスホテルのイメージとは異なるホテルも手がけているのが特徴的だ。たとえば「東京ベイ潮見プリンスホテル」は、近年ホテル業界で流行している都市型の“ライフスタイルホテル”にして、大胆なデザインに広大な温浴施設を擁する異色の施設であるし、恵比寿を皮切りに熱海、京都にも進出している「プリンス スマート イン」といったシームレスな最先端ホテルも存在感を高めている。

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プリンスホテルを駆け足で見てきたが、施設概要のような内容だけでスペースが尽きてしまうさすがの層の厚さを感じる。他方、それぞれのプリンスホテルには個性的かつ魅力溢れるテーマやコンセプトを有する。またの機会に取り上げられればと思う。