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ホテルのポットに入っている水をそのまま使えますか?

瀧澤信秋ホテル評論家
抵抗感ある人も多いというポットにセットされた水(筆者撮影)

ホテルの客室ポットの水やお湯あれこれ

コロナ禍はホテルの多くを変容させてきたが、清掃・消毒といった感染症対策はわれわれゲストの目に見える部分でもあり印象に残る。入館時の手指消毒をはじめ、客室のリモコンがビニールに包まれていたり、ブッフェレストランでは手袋の着用を義務づけられたりするるなど、コロナ禍前では想像もできなかったようなことが常識化しつつある。清潔感に対する意識はホテルのさまざまを変えており、歴史上、宿泊施設がこれほどまで清潔で除菌されている時代はなかったのではないかと思うほどだ。あくまでも“総体的に”という話ではあるが。

以前、ホテルの客室にあるポットへ水が入っていた場合、そのまま使用するか否かというテーマで(本記事と同様のタイトルで)Yahoo!ニュース(個人)へ掲載し反響をいただいた。具体的なホテル名が推測できる内容の有料記事だったこともあり、多くの読者への公開は叶わなかったが、先日、久々に同じホテルへ宿泊する機会があったので確認したところ、同じく水が入ったポットがセットされていた。

コロナ禍前に宿泊した別のホテルでは、既に沸かされ保温されたお湯が入っているケースもあったが、過日そのホテルを再訪したところ、コロナ禍による何らかの対策か否かはわからないが空のポットに変わっていた。ポットへの水やお湯の事前セットはコロナ禍でどのような変化があったのかに興味が湧くきっかけにもなった。

いずれにしても前回の記事掲載後、“初めからポットにセットされた水なりお湯をそのまま使うことに抵抗感がある”という感想を何人かからいただいた。“都度新しい水に入れ替えられているのだろうか”という疑念もあると推測するが、水またはお湯が満足な質か否か判断し難いという思いは何となく理解できる。(水だけに!?)善意だけ汲み取り一度捨てて入れ直すという意見もあった。中には、一度沸かしてポット洗浄をしたあとに捨てて入れ直すという慎重派も。

洗面台の水を入れるか否か

捨てて水を入れ直すという行為でいえば、浴室洗面台(独立した洗面台も見かける)の蛇口を利用するケースもあるだろうが、飲用可能と表記があっても蛇口から汲む水には抵抗があるという人もいることだろう。洗面台の蛇口といえば、ポットに給水しようと思っても蛇口の位置が低くポットが引っかかり、半分くらいしか入らなかったという経験も思い起こされる。かといってバスタブの蛇口やシャワーから給水するのは、同じ水とはいえ抵抗感がある。やはりミネラルウォーターが客室にセットされていると何かと安心だ。

客室の水道水にミネラルウォーターといえば、先日地方のホテルで興味深いシーンに出会った。客室にセットされたコーヒーについては、お湯を注ぐタイプのコーヒーパックを以前は多く見かけたが、最近ではカートリッジを使用するタイプのコーヒーマシンがアッパーなホテルの必須アイテムになりつつある。こうしたコーヒーマシンとセットともいえるのが、説明不要であるがミネラルウォーターのペットボトルだ。ところがそのホテルでは“水道水をご利用いただけます”との表記があり、ミネラルウォーターは客室になかった。

ミネラルウォーターがセットされていなかったコーヒーマシン(筆者撮影)
ミネラルウォーターがセットされていなかったコーヒーマシン(筆者撮影)

特定の地域の人から自分の住む町の水道水は美味しい!という話を時々見聞きする。水質について地域差があることは以前ニュースで見たが、そのホテルの地域では水質の高さが住民の意識も含め広く知られているとしたら、くだんの表記も何となく理解出来るだろうか。筆者は水道の専門家でなくこのホテルの地域については特段の調査もしていないが、一方、そもそもビルの場合は貯水タンクから給水という話を聞いたことがある。

客室の無料ミネラルウォーターペットボトルについていえば、コーヒーマシンの有無にかかわらずビジネスホテルでも見かけるようになった(ロビーにウォーターサーバーが設置されたビジネスホテルも)。空のポットへ入れるのにも重宝するミネラルウォーターであるが、以前宿泊したリゾートホテルではご当地モノの2リットルサイズがセットしてあり驚いた。このように“客室の蛇口よりペットボトル”というわけで、事前に購入し持参するという人もいる。やはり安心感にはかえられないのだろう。

一方で、高級ホテルに泊まる機会が多いという知人は「デラックスホテルで見かけるデザイン性の高いポットに入れられたお湯や水は何だか“信用できる”」と話す。そんなホテルのポット・コーヒーマシン問題!?が話題になった際にとあるホテル好きの友人から聞いた話であるが、“(ポットへ)ミネラルウォーターを入れてありますのでそのままご利用ください”というカードが添えられていて感心し、そのホテルのリピーターとなるきっかけになったという。

水ひとつ(一滴)にもホテルとゲストの良好な信頼関係構築のエッセンスがある。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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