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あとからもう1人侵入はバレる? ホテルの防犯カメラはどこまで見ている!?

瀧澤信秋ホテル評論家
(筆者撮影)

ホテルと防犯カメラ

筆者はホテル評論家であるが、時にジャーナリストの側面で活動することもあり、ポジティブ/ネガティブなテーマにかかわらず、ホテル名については基本的に実名、あるいは実名には及ばずともおおよその推測ができる記載を基本としている。

一方、営業に直接的な影響があるような場合や安全性担保という観点からどうしてもホテル名を出せないテーマもあり、今回はまさにそれである。ゆえに本記事では写真についても参考写真にとどまり、ホテル施設そのものの掲載が叶わないことを事前に付言する。

ホテルに限らず街中には防犯カメラが溢れている(※)。時々テレビで放送される“警察24時”的な番組は筆者も好きでよく観るが、防犯カメラの映像がきっかけとなり検挙に至るというシーンがよくある。膨大な映像データから現場シーンを抽出する警察官の努力には頭が下がる思いだが、同時に防犯カメラの威力は驚くばかりだ。

一昔前では考えられないほど映像は鮮明になり、格段にカメラの性能がアップしてることはカメラの専門家でない筆者にもわかる。捜査には及ばずとも犯罪抑止という点からも注目される一方、プライバシーへの憂慮も指摘されているが、いずれにせよ防犯カメラは現代社会の必須アイテムであることは間違いない。

※「防犯カメラ」「監視カメラ」といった表現を見かけるが本稿では防犯カメラで統一する

侵入者とホテル

それはホテルでも同様。不特定多数の人々が出入りする施設にして、個別に施錠出来る空間を提供する場所だけになおさらであるが、ホテルにとって好まざる訪問者もおり、特に宿泊者(客室利用者)と認められる者以外の“侵入”についてはホテルも神経を尖らすところだ。ホテルの防犯カメラについては、専門の業者による初期費用0円といったレンタルサービスも充実しており、高画質映像をハードディスクレコーダーへ録画・保存するシステムの導入も格段に進んでいる。

そのようなホテルと防犯カメラであるが、一般的な利用者からすると防犯カメラは心強い一方、よからぬ利用を企図する者にとっては気になる存在かもしれない。いずれにしても、ホテルスタッフが防犯カメラを逐次チェック、不審者を把握しているのかはホテル利用者でなくとも気になるところだろうか。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

チェックされている

まず、結論めいたところで恐縮であるが、話を聞くことができたホテルスタッフの話を総合すると、ホテルの防犯カメラ映像はスタッフにチェックされていると考えて間違いない。防犯カメラには記録を残すという役割があることはもちろんだが、不審者の侵入を未然に防ぐことはホテルにとって重要課題であり、施設によってまちまちという部分はあるだろうにせよリアルタイムでのチェックは当然といえば当然だろう。ゆえに現場では様々なトラブルがあることも想像に難くない。

宿泊者以外の入室というケースでいうと、特に客室への侵入は(許可された)宿泊客の同意のもとで為されることを前提として、一人で予約したのにもかかわらず、本人以外の者を入室させ実質的に複数で利用、想定される料金の差額を免れようとするケースは往々にしてみられるという(当然2名分の料金を請求することもある)。ホテルはヒューマンウェアが大切といわれるが、ホテルスタッフはゲストをよく見ている。その観察力たるや驚かされることも多い。仮に注意されなかったとしても企ては見られていると捉えるべきだろう。

(筆者撮影)
(筆者撮影)

ホテルと派遣型風俗の格闘?

さらに、一般のホテルが頭を悩ますことのひとつに派遣型風俗の利用がある。宿泊客の求めに応じて風俗店からホテルの客室へ女性が派遣されるというものだが、宿泊客以外の入室というルール違反に加え、風紀が乱れることをホテルはことさら憂慮する。店舗型風俗店減少の一方で派遣型の風俗はネット情報で多く検索されるようになった。

ホテルという日常とは異なるシーンにして個室提供という業態であり、そうした利用についてホテルは頭を悩ましている。駐車場から客室フロアへ直行できる施設、エレベーターのカードキーセキュリティが無いケースといったホテルの構造上の問題が憂慮されることもあるが、そうしたホテルではより神経を尖らせているという。一方、かような派遣型風俗店のサイトには派遣先ホテルのリストが掲載されていると頭を悩ませる関係者も。

また、前述のようなフロントの前を通らず客室フロアへ到達できるホテル、カードキーのセキュリティ有無といった情報を掲載するサイトまであると憤るホテルスタッフもいる。ホテルと派遣型風俗店の静かなる格闘とも言えそうな現場が見えてくるが、ゆえに深夜帯の女性訪問者にホテルはより注視する。そこはホテルスタッフの観察眼、外見や動作でそのような女性か否かほぼわかると話す関係者は多い。

他方、宅配業者を装って台車で大きな段ボールを搬入しようとしていたところを不審に思ったスタッフが確認したところ、中から女性が出てきたという話には思わず失笑してしまった。そもそも深夜の時間帯にホテル近隣へ女性スタッフを送迎する車が路上駐車しているケースもあるといい、その辺りをチェックすることもあるという。

*   *   *

いやはやホテルスタッフの気遣いには頭が下がる思いであるが、様々な人生模様があるのもまたホテル。宿泊者以外の立ち入りはご遠慮下さい-どんなホテルにもそこに“様々なヒト”がいることは確かだ。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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