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過剰な客室確保?何度も予約取り直し!? いまホテルはこんな客に困っている(GoTo編)

瀧澤信秋ホテル評論家
(写真:アフロ)

前編に続き、宿の現場から続々と寄せられた困惑の声を紹介する。

多くの宿泊施設から寄せられた苦情対応の声

発端は前編にあるとおり、ホテル業界等の人材を育成するためのビジネススクールとして、多くの人材を輩出してきた宿屋大学の近藤氏からの相談であったが、宿泊施設から多く寄せられた声には、目下GoToトラベル真っ只中というご時世にあってGoToにまつわるトラブルも多く発生していることを改めて実感した。

近藤氏は「サービスとは有償であり、サービスパーソンとお客さまが共創していくものでもあるという認識が大切」と常々語るが、筆者は今回の記事に先行し、実質0円等で知られるような裏技的ホテル予約術が目下巷間を賑わしている中で「サービスとは本来適正な料金をゲスト自ら支払うことにより成立する」という原則について、喚起・再確認という意味合い込め執筆、掲載した。

 

実質タダ?【GoToホテル】非常識な裏技への違和感

出典:Yahoo!ニュース(個人)

 

今回宿泊施設から寄せられたGoTo絡みの声にも、こうしたサービスに認識にまつわるものがかなり多くを占めた。中でもハイクラスな宿、普段から予約で満室になるような人気宿からの悩みも多いのが特徴的だった。また、予約術・クーポンに関するものまで広く寄せられている。順次紹介していこう。

高級施設の常識?通用せず!?

『客単価4万ほどの7室のみの宿ですが「クーラーボックスで飲み物を持ち込む方」や「とにかく安く泊まれるプランは?」などの問い合わせがあり困っています』

『GoToで高いお金払っているのだからサービスしてもらって当然だ!という方が増えた。例えば夜遅くに別注料理を部屋まで運ばせようとしたが、対応できないと伝えると激昂しクチコミにかいてやる!と捨てセリフはかれた』

『高級旅館なら女将が挨拶するべきだ!仲居の対応が気に食わない!責任者出せ』

『GoTo利用の旅慣れていない若年層ですが、滞在中に質問してくれればいいものを(仲居さんに食事下げられた・チェックアウト時の清算方法等々)「察してほしかった」と帰り際やクチコミで言われることが時々あります。SNS馴れしている若年層への対応に怯えています

『(GoToありきの話とは言い切れませんが)盗難などない質の高いお客様に愛されている宿と自負していますが・・・GoToがスタートして部屋の備品がなくなってしまったこともありました』

出てくる出てくる予約術・クーポンにまつわるトラブル

『GoToと行政クーポンを併用する合わせ技で、ほぼ無料同然の金額で高級旅館やホテルに宿泊可能になったケースもあり、客層がいつもと異なり対応に困っているという同業者は多いです。ネガティブなクチコミを書かれることが激増しました』

『困ってしまうのがGoToや行政クーポンを利用した過剰な予約の取り直しです。GoToの予約取り直しは仕方がないとしても、よりお得な行政クーポンをとるために同じお客様から1日に5~10件ほど予約の取り直しが。同業者でも同様の声が複数上がっており問題視されています』

『6名様のグループでお部屋は多くても3部屋で足りるであろう人数であるにも関わらず、繁忙期に5部屋抑えられていたりと実害が出ております』

『直接お客様へ確認の連絡を入れると「利用規約に則っていますが何か?」と言われる。宿としてもそういうお客様にはお泊り頂きたくない。宿泊施設のための施策であるキャンペーンだが早く終わってほしいのも本音』

『旅館利用のレジャーのお客様ですが、GoToと行政の補助金プラン、クーポンなどの併用条件をご自身で理解していないにも関わらず「なぜ併用できないのか」「施設が勝手に言っているだけなのではないか」と少しごたつき…』

馴染みの常連さんが愛おしく感じる瞬間

『go to対応により客層の変化が一番大きく感じます。通常より安く泊まれる為、普段来られないお客様も多くマナーが良いとも言えず・・・馴染みのお客様が愛おしく感じます』

『普段旅行慣れしてない方や、お得感ありきで本来なら当館を選ばない方の宿泊が多いと感じます。それは口コミにも反映されており、一定の口コミ評価だったのが低評価や高評価が入り乱れています。いま同業の旅館・ホテル間ではGoTo後の悩みとして共有されています』

『これまで来なかったようなゲストがキャンペーンをきっかけに来ることは、宿にとって新規顧客開拓のきっかけにもなりますが、結局、リピーターとはならないし、宿としての負担も大きいので、正直このようなお客様には来て頂きたくないとも思っています』

『スタッフもゲストの雰囲気が異なっていることや、リピーターになってほしいと思えないお客様もいることから、本来やりたい接客ができず疲弊気味です』

『GoTo利用で家族旅行にいらした(お子様、親御さん、祖父母さん)方が、「宿の用意するお子様御膳は子どもが全部食べきれないだろうから、4000円分のお子様御膳を2000円分で作ってほしい」という要望。結果2000円の請求を行ったのですが、内容は料理長の思いや料理内容的に4000円のものと引けを取らないくらいで、量を若干減らしたような形での提供となりました。しかし、祖母の方がフロントまでいらっしゃり、「孫の食事が残念だった、せっかくの旅行なのに不憫だ」と泣きながら「子どもの食事代を無料にして」とごねられました。過去にこんな経験はないですが・・・GoToならではですかねぇ』

GoToきっかけに前向きな声も

『予約センターへGoToや割引キャンペーンに関する問い合わせが増え、客層的な変化を多少感じることができる』

『客層が変化して、個人客で普段よりアルコール類を注文する方が増えた。というプラス面がありました』

                

ホテルスタッフも人間、いつもと違う客に戸惑うのもGoToならではか。

 

 

筆者の質問にフランクに対応いただいた近藤和寛氏
筆者の質問にフランクに対応いただいた近藤和寛氏

 

 

今回寄せられた様々な現場の声にはいかにもホテルマンらしい!?声もあった。最後に一部紹介しよう。

・どんなにひどい目に合っても、すぐに忘れちゃう

・ホテル業界人は、やっぱり優しい!?

・多くの場合、ホテルサイドの努力で解決できる

・本当に困ったお客様は1000人に1人くらいでこちらに問題があることがほとんど

・お客様サイドが変わる必要はない

サービス業の最たるものと言わせるホテル、来訪するゲストも様々。厳しい意見も。

・ホテルは我儘が通じる場所ではない

・お客さまは神様です、カネを払っている方が偉いというのは大きな勘違い

という声と共に

いいお客さんには、いいサービスをしてあげたいというのがホテル・旅館の方々の本音

という話もあった。

こうした事例を見るにサービスを受ける“ゲストのちょっとした想像力も大切゛と感じる。前出の近藤氏は今回の声を見て「サービスとは有償であり共創していくものでもあるという認識が大切」と改めて語る。

ホテル評論家

1971年生まれ。一般社団法人日本旅行作家協会正会員、財団法人宿泊施設活性化機構理事、一般社団法人宿泊施設関連協会アドバイザリーボード。ホテル評論の第一人者としてゲスト目線やコストパフォーマンスを重視する取材を徹底。人気バラエティ番組から報道番組のコメンテーター、新聞、雑誌など利用者目線のわかりやすい解説とメディアからの信頼も厚い。評論対象はラグジュアリー、ビジネス、カプセル、レジャー等の各ホテルから旅館、民泊など宿泊施設全般、多業態に渡る。著書に「ホテルに騙されるな」(光文社新書)「最強のホテル100」(イーストプレス)「辛口評論家 星野リゾートに泊まってみた」(光文社新書)など。

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忌憚なきホテル批評で知られる筆者が、日々のホテル取材で出合ったリアルな現場から発信する辛口コラム。時にとっておきのホテル情報も織り交ぜながらホテルを斬っていく。

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