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「お墓」は相続財産ではない!?~知っておきたいお墓の引き継ぎルール

竹内豊行政書士
「お墓の引き継ぎルール」について考えてみたいと思います。(写真:イメージマート)

お盆は、ご先祖様の霊を自宅にお迎えしてご供養する仏教行事です。2023(令和5)年のお盆は8月13日(日)~16日(水)の4日間ですが、地域によっては7月や9月に行う場合もあります。

お盆にお墓参りをされる方も多いと思います。そこで、今回は民法が規定するお墓の引き継ぎについてお話したいと思います。

お墓は相続財産ではない

被相続人(死亡した人)の財産は、死亡したそのその瞬間から、相続人に法定相続分の割合で引き継がれます(民法896条)。しかし、お墓を代表とする祭祀財産(過去帳などの家系図、位牌・仏壇仏具・神棚・十字架などの祭具)は、相続財産とはみなさず、相続とは別のルートで引き継がれることになります。

お墓を引き継ぐ優先順位

では、お墓はどのように引き継がれていくのでしょうか。お墓は不動産や預貯金などの遺産と比べて特殊なものといえます。そこで民法は、祭祀財産は祖先の祭祀を主宰する者(「祭祀主宰者」といいます)が引き継ぐとし、祭祀主宰者は次の順序によって決まると規定しました(民法897条)

第1順位:被相続人(亡くなった方)の「指定」があればそれによる

第2順位:被相続人の指定がない場合には「慣習」による

第3順位:慣習もないときは家庭裁判所が決める

このように、民法は➀被相続人の指定②指定がない場合は慣習➂慣習が明らかでない場合には家庭裁判所の審判(判決)によって決まるとしています。

まず、被相続人の指定ですが、指定方法については具体的に規定されてていません。したがって、祭祀財産の所有者が生前に口頭や文書で指定してもいいし、遺言書に記載する方法もあります。

次に、慣習ですが、地域社会で、異なることも当然ありますから祭祀の引き継ぎでもめてしまった場合は慣習を基に祭祀主宰者を決めるのは困難を伴うようです。

そこで、当事者同士で祭祀主宰者を決めることができない場合は、最終的に家庭裁判所に判断を仰ぐ、つまり判決を下してもらうことになります。

家庭裁判所の判断基準

一般には、家庭裁判所は、次のような内容を総合的に判断して祭祀承継者を決めるとされています。

・被相続人との身分関係

・被相続人との生活環境、感情の緊密性

・承継者となるべき者の承継の意思・能力

・利害関係人の意見  等

お墓の引き継ぎでもめてしまうと、その特殊性から相続人の間で根深い遺恨を残してしまうこともあります。お墓の引き継ぎで不安な方は、お盆で家族が集まった席で、話題にしてみるのもよいかもしれませんね。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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