市川猿之助さんの部屋で発見された文書が「遺言」から「遺書」に変わった理由
昨日18日、歌舞伎俳優・市川猿之助(47)さんが、ご両親と東京・目黒区の自宅で倒れているのが見つかり、母親の死亡が確認され、その後、意識不明の重体だった父親の死亡も確認されたというショッキングなニュースが飛び込んできました。
そのニュースの中で、猿之助さんの部屋から見つかった文書を、「遺言」または「遺書」と報道していました。
たとえば、18日午後1時の発信では、「遺言」と称して報道しています。
そして、この記事の発信から約9時間後では「遺言」から「遺書」に変わって報道されています。
そこで、猿之助さんの報道から「遺言」と「遺書」の違いについて考えてみたいと思います。
「遺言」とは
遺言は、人の最終の意思表示について、その者の死後に効力を生じさせる制度です。
遺言を残すには、遺言を残す人(遺言者)が、残した遺言の内容を理解できる判断能力(遺言能力)を有していることが前提条件になります。そして、遺言できる事項(遺言事項)は法律で定められています。また、死後の紛争を予防するために遺言の成立要件は厳格に決められています。すなわち、遺言には一定の方式が課せられ(遺言の方式)、それによって遺言者の最終意思を確認することが可能になるのです。なお、一度残した遺言を破棄したり、作成し直したりすることも自由に撤回できます(遺言の撤回)。
このように遺言は「自分の意思を未来(自分の死後)に託すための法定文書」といえます。
「遺書」とは
いろいろな定義ができると思いますが、報道で「遺書」が使用された数々の記事を見てみると、一般に、「自らの命を絶つことを前提に、自死を選択した理由または死後に特定または不特定の者に伝えておきたいことを書き記した文書」と定義できると思います。当然、法律で遺書についての規定は存在しませんし、民法のどこにも「遺書」という言葉は記されていません。
なぜ「遺言」から「遺書」に変えたのか
ご紹介したように、猿之助さんの衝撃的なニュースの初期では、状況がハッキリしなかったため、猿之助さんの部屋から見つかった文書を「遺言」としたが、徐々に状況が明らかになるにつれて「遺書」に変えたということではないでしょうか。
今回の件については、現時点で事実関係が明らかになっておらず、憶測で報道することは厳に慎まなければなりませんが、まずは猿之助さんのご回復を心よりお祈りいたします。