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夫が「遺言書」を残さないと大変な目にあう妻たち

竹内豊行政書士
夫が亡くなった後に、相続で苦労してしまう妻をご紹介します。(写真:イメージマート)

三が日の最終日を迎えました。2023年のスタートをいかがお過ごしでしょうか。

三が日に「遺言書かよ!縁起悪いな」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、年の初めだからこそ、夫に遺言を残してもらわないと大変な目にあう可能性が高い妻をご紹介したいと思います。

ケース1.夫との間に子どもがいない妻

夫婦の間に子どもがいないと、意外な人が相続人になることがあります。例えば夫が死亡して、夫の親が生存していると、妻と「夫の親」が相続人になります。つまり、妻は姑(しゅうとめ)・舅(しゅうと)と夫の遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」といいます)をしなければなりません。

また、既に夫の両親が他界している場合は、「夫の兄弟姉妹」が相続人に入ってくるので、妻は夫の兄弟姉妹と遺産分割協議を行わなければなりません。

さらに、夫の両親が他界していて、夫の兄弟姉妹の内、死亡している者がいると、その死亡している兄弟姉妹の子ども(つまり、亡夫の甥・姪)と妻は遺産分割協議を行わなければなりません。

ここまでご説明すると、頭がこんがらがってきてしまいます。そうです、相当ややこしい話になるということです。そうなると、なかなか話がまとまらなかったり、まとまったとしても手続上面倒なことになりかねません。

ケース2.子どもを先に亡くした妻

子どもが先に亡くなっていて、その子に子ども(つまり孫)がいる場合、孫が相続人になります。このような状況で夫が死亡すると、妻は孫と夫の遺産分けの話し合いをしなければなりません。孫と亡夫の遺産分けをするというのも相当複雑な心境だとご推察します。

ケース3.前婚のときに子どもをもうけている夫と結婚した妻

離婚歴があり、しかも前婚のときに子どもをもうけている夫と再婚した妻は、夫が死亡すると「夫が前妻との間にもうけた子ども」と遺産分割協議をしなければなりません。このようなケースでは、お互いに会ったこともない者同士で遺産分割協議をしなければならなかったり、夫が離婚したときの状況によっては感情的になってしまい、話が紛糾してしまうおそれがあります。

遺言があれば、相続人同士で遺産分割協議をしないで遺産を引き継ぐことができます。夫が今回ご紹介した3つのケースのいずれかに該当する場合は、思い切って年の初めに「自分のことを思ってくれているなら今年中に遺言書を残してね」とリクエストするのもありだと思います。そうずれば、夫自身もいつか訪れるこの世とのお別れ際にも思い残すことなく逝けると思いますし、残された妻も遺産分けで苦労することもなく夫が亡くなった後も夫に感謝の念を抱くことができるでしょう。遺言は「愛の証し」にもなるということですね。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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