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ただの「お付き合い」から「結婚前提のお付き合い」に変わると何が変わるのか

竹内豊行政書士
単なる「お付き合い」から「結婚前提のお付き合い」になると何が変わるのでしょうか。(写真:アフロ)

男女の間のお付き合いが「結婚を前提とした交際」に発展して、いわゆる婚約関係になると、今までの関係よりも重い関係に変わってきます。そこで、今回は婚約について考えてみたいと思います。

婚約は「結婚の予約」

婚約は、男女間に「結婚しましょう」「そうしましょう」といった具合に、「将来結婚しよう」という合意さえあれば成立します。このように、婚約は、「結婚の予約」(婚姻予約)ととらえることができます。

結納や婚約指輪の交換などの儀式は、当事者間の結婚の意思を具体的に示すものとして、婚約の成立を証明する一つの事実になります。

「婚姻予約」は民法に規定されていない

民法の規定では、「婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」としています(民法739条)。このように、民法は婚姻(結婚)のみを正当な男女関係としているため、婚姻外の関係を正面から認めることは建前上許していません。

婚約破棄をされた場合の保護

このように、民法は婚姻(結婚)のみを正当な男女関係としている関係上、婚約を不当に破棄された者は保護の対象から外れてしまうことになってしまいます。

しかし、婚約は正当な婚姻に至る過程であり、正当な婚姻の予約違反という形であれば、この建前に反しないと考えられます。また、婚姻予約は民法が規定していないことであり、法の欠けている所を補充することは裁判所の権限内のことであり、立法を直接侵害する行為にはならないと認識されます。

そこで、判例は、婚姻外の関係のうち、婚約やその準備行為、挙式、同居までの関係を婚姻予約ととらえ、その関係を不当に破棄した者に対して、「正当な理由もなく婚姻予約を履行しなかった者」として債務不履行の損害賠償を認めるようになりました。

以上ご覧いただいたように、「お付き合い」から「結婚を前提としたお付き合い」に発展すると、婚姻の予約ととらえられ、万一不当に婚約を破棄すると損害賠償の対象となる場合もあります。

結婚を前提としたお付き合いに発展させるときは、結婚に至らないことが起きることを想像する方はふつういませんが、人生何が起きるかわかりません、ましてや男女の間のことです。「決婚の予約」を入れる場合は、万一のトラブル防止の観点からも、婚約は単なるプライベートな合意ではなく、「正当な理由」のない不履行については、法的な賠償責任が生じる、法律的な行為ということを頭の隅に入れておくとよいかもしれません。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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