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秋篠宮さま 眞子さまと小室圭さんの結婚に「婚約と結婚は違う」~「婚約」と「結婚」はどう違うのか

竹内豊行政書士
秋篠宮さまは「二人の気持を尊重する」が「婚約と結婚は違う」と述べられました。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

秋篠宮さまは、11月30日、55歳の誕生日を迎えられました。それに先立ち東京・元赤坂の赤坂東邸で記者会見に臨まれ、長女眞子さま(29)と婚約内定者の小室圭さん(29)の結婚について、「憲法にも結婚は両性の合意のみに基づいてとある。本人たちが本当にそういう気持ちであれば、親としては尊重するべきものだと考えています」と二人の意思を尊重して認める考えを示しました。

また、この会見で記者からの関連質問に次のようにお答えになっています。

(記者)

眞子さまの結婚のことで先ほど、一連のトラブルについては目に見える形での対応が必要だとおっしゃいましたけれども、やはりこれから若い二人が御夫婦で家庭を築いて将来を歩まれていく上で、やはりきちんとした形で結婚のスケジュールが延期されたことについて、その原因になったことについて御本人たちが御説明されることというのは必要じゃないかなというふうに思うんですけども、その辺については殿下はどのようにお考えでしょうか。

(秋篠宮さま)

実際に結婚するという段階になったら、もちろん、今までの経緯とかそういうことも含めてきちんと話すということは、私は大事なことだと思っています。

(記者)

やはり、お父様のお立場としてはお嬢様、あとお相手のお気持ちを今は尊重したいというかそういうお考えで認めるということでしょうか。

(秋篠宮さま)

そうですね。どの段階というのがいろいろあるかもしれませんけれども、私は、特に結婚と婚約は違いますから、結婚については本当にしっかりした確固たる意志があれば、それを尊重するべきだと私は思います。

これはやはり両性の合意のみに基づくということがある以上、そうでないというふうには私はやはりできないです。

よろしいでしょうか。

以上引用「秋篠宮さま 55歳誕生日前の記者会見 【全文掲載】」

このように秋篠宮さまはお二人の結婚を認めるとしたものの、「結婚と婚約は違います」とし、結婚については「確固たる意志」があれば、それを尊重するべきとし、「結婚」と「婚約」を明確に分けるお考えを示されました。

そこで、今回は「結婚」と「婚約」について民法の観点から考えてみたいと思います。

結婚の成立と効力

まず、結婚の成立と効力についてみることにしましょう。

結婚の成立

民法の規定では、「婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」としています(民法739条1項)。したがって、婚姻届が届出られないと結婚は成立しません。

結婚の効力

婚姻届が届けられると、法律上、次のような権利と義務が生じます。

  • 夫婦同氏(民法750条)

夫婦は、結婚の際に夫または妻の氏(法律では「姓」や「苗字」を「氏」と呼びます。)のどちらかを夫婦の氏として選択しなければなりません。

  • 同居協力扶助義務(民法752条)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなくてはいけません。 同居義務違反は離婚原因となり(民法770条1項2号・悪意の遺棄)、離婚慰謝料の原因の理由にもなります。協力義務の内容は各当事者の事情によって当然異なりますが、日常生活の維持、病者の看護、子の養育などあらゆるものが含まれます。扶助義務は相互的な経済的援助を意味します。

  • 貞操義務

条文に規定されていませんが、重婚が禁止され、同居協力扶助義務が規定され、不貞行為(配偶者以外の者と性的関係を持つこと)が離婚原因になることから(民法770条1項1号)、また、一夫一婦制という結婚の本質から、夫婦は貞操義務を負うとされています。したがって、不倫は民法上でも認められません。

  • 夫婦間の契約取消権(民法754条)

夫婦は結婚期間中に締結した夫婦間の契約を、結婚期間中はいつでも、何の理由もなしに一方的に取消すことができます(ただし、第三者の権利を害することはできません)。 これには驚く方もいると思いますが、立法趣旨として、夫婦間の契約は、一時のきまぐれや威圧などによってなされることが多く、真意の確保が困難であること、その履行は当事者の愛情や道義によるべきであって、法律上強制することは、かえって家庭の平和を害するということにありました。しかし、この権利を相手側に主張したら、二人の関係は険悪になると思います。使用には十分注意してください。

その他にも、

  • 姻族関係の発生(民法725・728条)
  • 子が嫡出子(婚姻関係にある夫婦から生まれた子、つまり夫の子)となる(民法772・789条)
  • 配偶者の相続権が認められる(民法890条)などがあります。

婚約の成立と法的な意義

次に、婚約の成立と法的な意義についてみてみましょう。

婚約の成立

婚約は、男女間に「結婚しましょう」「そうしましょう」といった具合に、「将来結婚しよう」という合意さえあれば成立します。結婚のように役所への届出は当然ですが必要ありません。

結納や婚約指輪の交換などの儀式は、当事者間の結婚の意思を具体的に示すものとして、婚約の成立を証明する一つの事実になります。婚約は将来結婚しようという約束であり、結婚とは別ものです。

婚約の法的な意義

婚約により当事者は結婚の成立を当然期待します。そして、結婚に向けて準備を進めます。

それにもかかわらず、一方的に婚約を解消されると、他方は精神的に大きく傷つきます。また、準備にかかった費用や婚約を機会に勤務先を退職したなど財産的な損害が発生することもあります。

このような場合、結婚の本質からみて、相手に婚姻の届出を強制することはできません。しかし、生じた損害について、婚約不履行の責任として賠償を認めることがあります。

その意味では、婚約は単なるプライベートな合意ではなく、「正当な理由」のない不履行については、法的な賠償責任が生じる、法律的な行為だといえます

結婚と婚約の違い

以上ご覧いただいとように、婚約はお互いが将来結婚する約束であり、結婚は法的手続きよって成立する法的権利義務が発生する関係ととらえることができます。感覚でとらえると結婚は婚約と比べればはるかに「重い」ものといえるでしょう。そのことは、秋篠宮さまの冒頭の「結婚と婚約は違う」、「結婚については確固たる意志が必要」といった内容のお言葉に表れていると思います。

実際に既婚者である一人として、このお言葉は身に染み入ります。さて、あなたはいかがでしょうか。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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