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元サッカー女子日本代表 丸山桂里奈さんと本並健治氏がゴールイン~自宅で「寝ている間」に結婚成立!?

竹内豊行政書士
丸山桂里奈さんが婚姻届を提出したときに、本並健治氏は自宅で寝ていたそうです。(写真:アフロ)

元サッカー女子日本代表FWで国民栄誉賞にも輝いたタレント、丸山桂里奈さんが今月5日に、元サッカー日本代表GKで解説者、本並健治氏と結婚したことが報じられました。

関係者によると、前日の4日夜に丸山がマネジャーと東京都内の区役所へ婚姻届を提出した。本並氏は丸山に任せて自宅で寝ていたという。丸山が心酔する琉球風水志シウマさん(41)に占ってもらったところ、4日を勧められ、丸山自身も「九死に一生を得たということわざがあり、縁起がいい」と決めた。

出典:元なでしこジャパン、丸山桂里奈が結婚! 相手は元日本代表GK本並健治氏

なんと、本並氏は、丸山さんがマネージャーと都内の区役所に婚姻届を提出したときに、自宅で寝ていたというのです。婚姻届は当事者が立ち会って届出なくてもよいのでしょか。今回は、婚姻届について深掘りしてみたいと思います。

届出なければ婚姻なし

婚姻(結婚)を成立させるためには、当事者双方および成年の証人2人以上が、口頭又は署名した書面で、市区町村役場の戸籍担当者に届け出なければなりません(民法739条)

民法739条(婚姻の届出)

1 婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。

2 前項の届出は、当事者双方及び成年の証人二人以上が署名した書面で、又はこれらの者から口頭で、しなければならない。

このように、婚姻するには、戸籍法で定める婚姻届を役所に届け出しなければなりません(民法739条1項)。このことは、「届出なければ結婚なし」ということを意味します。

「受理」されなければ成立しない

実は、婚姻届により婚姻が成立するといわれていますが、厳密にいえば、婚姻届が役所に受理されることが必要です(民法740条)

民法740条(婚姻の届出の受理)

婚姻の届出は、その婚姻が第731条から第737条まで及び前条第2項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。

そして、婚姻届が受理されるためには、戸籍担当者が、婚姻届に次の法令の規定の違反の有無を確認し、全てにおいて違反が認められないことが確認されることが求められます。

・当事者双方および成年の証人2人以上の署名(民法739条2項)

・婚姻適齢(男は18歳に、女は、16歳以上であるか)(同法731条)

・重婚の禁止(同法732条)

・女性の再婚禁止期間(同法733条)

・近親者間の婚姻の禁止(同法734条)

・直系姻族間の婚姻の禁止(同法735条)

・養親子等の間の婚姻の禁止(同法736条)

・未成年者の婚姻についての父母の同意(同法737条)

・その他の法令の規定の違反の有無

このように、婚姻(結婚)は市区町村役場の戸籍担当者に届出を提出したというだけでは成立せず、戸籍担当者に受理されることによってはじめて成立します。

届出方法には制限がない

その婚姻届の提出については、その方法はなんら制限されていないので、必ずしも婚姻当事者が自ら出向いて婚姻届を提出することを要しません。届出書を郵送して提出することもできるし、他人に委託して提出させることも差し支えないとされています。そのため、次のような届出も可能です。

「郵送」による届出

婚姻届は郵送または信書便によっても可能です。そして、発送された場合には、特例として、本人の死亡後であっても受理しなければならないと定められています(戸籍法47条1項)。その場合、死亡時に受理があったものとみなされます(戸籍法47条2項)。これは、戦時中の出征軍人のための特別法に由来するものです。

「口頭」による届出

口頭による届出も可能です。この場合、届出人本人が市役所・町村役場の窓口に出頭し、届出書に記載すべき事項を陳述しなければなりません(戸籍法37条1項)。

ただし、口頭による届出の場合、代理人による口頭での届出はできません(戸籍法37条3項)。また、当事者および証人の1人が書面で、他の者は口頭で届け出ることは認められません。

「代署」による届出

戸籍法施行規則62条によると、届出の場合、署名を代署に代えることができるとされています。さらに、代署が明らかであるが、代署事由が付記されていない届出についても受理を拒否できない扱いにしています。

このように、婚姻届は必ずしも当事者が自ら役所に出頭しなくても、婚姻届に違法性が認められなければ受理されます。そして、受理されれば婚姻は成立します。しかし、婚姻届は婚姻の成立そのものなのだから、それに当事者が出頭しないで成立するのは根本的におかしいという意見もあります。

いずれにしても、婚姻届が受理されれば、婚姻は成立します。そして、婚姻の成立と同時に、夫婦は「同居」「協力」「扶助」(民法752条)そして「貞操」(配偶者以外の者と性的関係を結んではいけない)その他の義務が発生します。

民法752条(同居、協力及び扶助の義務)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

婚姻届は結婚生活という長い道のりのスタートです。決してゴールではありません。ふつう、結婚生活では楽しいことばかりではありませんが、そんなときに婚姻届を提出したそのときの気持を思い出すと乗り切る力の一つになるかもしれませんね。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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