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「出生届」のルール

竹内豊行政書士
出生届はだれがいつまでにどこに出すのでしょうか。(写真:アフロ)

子どもが生まれたら出生届を届出ます。当たり前のことかもしれませんが、意外と知らないこともあります。今回は、出生届について見てみましょう。

だれが出す~届出義務者

次のように、場合に応じて届出義務者が異なります。

嫡出子の場合

嫡出子とは、婚姻関係の父・母の間に生まれた子のことをいいます。嫡出子の出生届は、父または母が届出なければなりません(戸籍法52条1項)。

子の出生前に父母が離婚をした場合

子が生まれる前に父母が離婚した場合は、母が届出なければなりません(戸籍法52条1項)。

嫡出でない子の場合

婚姻関係にない父・母の間に生まれた子の出生届は、母が届出なければなりません(戸籍法52条2項)。

父も母も届出ができない場合

以上の届出義務者が届けることができない場合は、次の順序にしたがって届出しなければなりません(戸籍法52条3項)。

第1順位 同居者

第2順位 出産に立ち会った医師、助産師又はその他の者

父も母もそして同居者も出産に立ち会った医師、助産師又はその他の者も届出ができない場合

その場合は、その者以外の法定代理人も、届出をすることができます(戸籍法52条4項)。

戸籍法52条

1.嫡出子出生の届出は、父又は母がこれをし、子の出生前に父母が離婚をした場合には、母がこれをしなければならない。

2. 嫡出でない子の出生の届出は、母がこれをしなければならない。

3.前二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、左の者は、その順序に従つて、届出をしなければならない。

第1 同居者

第2 出産に立ち会つた医師、助産師又はその他の者

4.第一項又は第二項の規定によつて届出をすべき者が届出をすることができない場合には、その者以外の法定代理人も、届出をすることができる。

いつまでに出す~提出時期

日本で生まれた場合と外国で生まれた場合で届出の時期が異なります。また、届出をしないと過料が課せられます。

日本国内で生まれた場合

出生の日から14日以内に届けなければなりません(戸籍法49条)。

国外で生まれた場合

国外で出生したときは3か月以内に届けなければなりません(戸籍法49条)。

戸籍法49条

出生の届出は、14日以内(国外で出生があつたときは、3箇月以内)にこれをしなければならない。

国外で出生したときは「国籍留保届」を届出る

外国で生まれた子で,出生によって日本国籍と同時に外国国籍も取得した子は,出生届とともに日本国籍を留保する旨を届け出(=国籍留保届)がなければ,その出生の時にさかのぼって日本国籍を失います。

国籍の留保をしなかった場合

しかし, 日本国籍を留保しなかったことによって日本国籍を喪失した子は,次の要件を満たしている場合には,法務大臣に届け出ることによって,日本国籍を再取得することができます(国籍法17条1項)。

1.届出の時に20歳未満であること。

2.日本に住所を有すること。

ここでいう「日本に住所を有すること」とは,届出の時に生活の本拠が日本にあることをいいます。したがいまして、たとえば観光や親族訪問で一時的に日本に滞在しているケースは日本に住所があるとは認められません。

届出が遅れてしまった場合

届出が遅れてしまった場合は、届出が遅れた期間・理由等を記載した「戸籍届出期間経過通知書」に遅れた理由等を記入します。そして、受理した市区町村が簡易裁判所へその届出書を送付します。それをもとに簡易裁判所で過料を科すかどうかを判断します

届出義務者が届出を怠ったとき

市区町村長は、父母などの出生届を届出るべき人(=届出義務者)が、出生届を届出ていないことを知ったときは、遅滞なく簡易裁判所に通知しなければなりません(戸籍法施行規則65条)

戸籍法施行規則65条

市町村長が、届出、申請又はその追完を怠つた者があることを知つたときは、遅滞なく、届出事件を具して、管轄簡易裁判所にその旨を通知しなければならない。

どこに出す

子の出生地・本籍地または届出人の所在地の市役所,区役所または町村役場に届け出ます(戸籍法25条1項・同51条1項)。

戸籍法25条1項

届出は、届出事件の本人の本籍地又は届出人の所在地でこれをしなければならない。

戸籍法51条1項

出生の届出は、出生地でこれをすることができる。

電車の中で生まれたら

電車の中で子どもが生まれた場合は、母が電車から下車した地で出生届を届け出ることができます。

戸籍法51条2項

汽車その他の交通機関(船舶を除く。以下同じ。)の中で出生があつたときは母がその交通機関から降りた地で、航海日誌を備えない船舶の中で出生があつたときはその船舶が最初に入港した地で、出生の届出をすることができる。

出生届が受理されなかったら

子の名前の文字が常用の文字ではないなどの理由で、市区町村長が出生届を受理しなかったという不受理処分がされたときは,家庭裁判所に不服申立てができます(戸籍法第121条)。

戸籍法121条

戸籍事件について、市町村長の処分を不当とする者は、家庭裁判所に不服の申立てをすることができる。

ちなみに、子の名前は、「常用平易な文字を用いなければならない。」とされています(戸籍法50条)。

戸籍法50条

1.子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。

2. 常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。

届出をしないと

正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、5万円以下の過料に処せられます(戸籍法135条)。

戸籍法135条

正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処する。

いかがでしょうか。出生届も意外と多くルールがあることがお分かりいただけたと思います。子どもにとって生まれて初めての役所への届出が出生届です。ルールに則ってすみやに人生のスタートを切ってあげたいですね。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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