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「平成2018年」と書いた遺言は有効?無効?

竹内豊行政書士
「平成2018年」がトレンド入りしました。(提供:アフロ)

有村架純さんが演じる女性教師と男子中学生の“禁断の恋”を描いたヒューマンラブストーリー『中学聖日記』で、主人公の女性教師が書かされた誓約書に「平成2018年」と記されたことが話題になっています。放送終了後には、「平成2018年」がトレンド入りするなど大きな反響をよんでいます。

では、遺言における日付はどのような意味を持つのでしょうか。遺言における日付についてご説明します。

遺言には日付が必要

日付は遺言者の遺言能力(注)の有無を判定したり、内容が抵触する複数の遺言書の先後を確定する際の基準として、重要な役割を果たします。そのため、年月日まで正確に記載しなければなりません。

(注)遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足りる意思能力のこと。民法は、15歳以上になれば遺言能力があるものと定め(民法961条)、遺言能力は遺言作成時に備わっていなければならないとしている。

民法も、自筆証書遺言(自分で書いて残す遺言)の成立要件として、「日付」を自書することを挙げています(民法968条1項)。

968条(自筆証書遺言)

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

特定できれば有効

日付を書く目的は、遺言書を作成した年月日を特定することです。したがって、年月日が特定できればよいので、次のように記載しても有効です。

・65歳の誕生日

・2018年の天皇誕生日

吉日遺言は無効

では、「平成30年12月吉日」はどうでしょうか。平成30年12月の吉日(=大安)は、3日、7日、13日、19日、31日の計5日あります。したがって特定できません。判例でもこのような「吉日遺言」は無効としています。

「平成2018年」は有効か無効か

では、トレンド入りした「平成2018年」はどうでしょうか。

判例は、「遺言に記載された日付が真実の作成日付と相違していても、その誤記であることおよび真実の作成の日付が、遺言書の記載その他から容易に判明する場合は、日付の誤りは遺言を無効としない」としました(「昭和48年」と書くべきところを「昭和28年」と書いた事例)。

その他、次のような誤記を有効とした判例があります。

・「昭和」と書くべきところを「正和」と書いた

・「平成12年1月10日」を「平成2000年1月10日」と書いた

 ※平成12年=西暦2000年

以上の判例によれば、「平成30年12月19日」を「平成2018年12月19日」と記載しても有効と考えられます。

日付はきちんと書く

実務家の立場から申し上げると、たとえ「特定できるから」といっても、先に挙げた「65歳の誕生日」「2018年の天皇誕生日」といった書き方はお勧めできません。やはり、「平成30年12月19日」「2018年12月19日」といったように、だれが見ても特定できる日付を書くようにしてください。

以上は遺言の日付に関してですが、ドラマで話題になった「誓約書」といった契約書では、遺言と比べてその有効性が厳しく判断されると考えます。

遺言書しても契約書にしても、「日付」は法的に有効・無効の判断にに関わる重要な記載事項です。記載をしたら声に出すなどして誤りがないように確認しましょう。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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