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結婚について知っておきたい法知識37~念願のマイホームを「負の遺産」にしないためにすべきこと

竹内豊行政書士
せっかく購入したマイホームが「負の遺産」になることがあります。(写真:アフロ)

結婚してマイホームを手に入れるのは人生の一大イベント。失敗はぜひとも避けたいです。そのために、多くの方は次のようなことを行います。

・不動産の権利関係を調べる

・不動産の利便性 など

ただ、もう一歩踏み込んですべきことがあります。それは、自然災害の危険性の調査です。

不動産は相続財産になる

購入したマイホームは、死亡時に所有していれば相続財産になります。つまり、その場合、相続人である配偶者や子どもたちが将来引き継ぐことになります。

民法896条 (相続の一般的効力)

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

実は、このマイホームが「負の遺産」として相続人に重くのしかかることがあるのです。

自然災害の危険も相続する

購入した土地が、実は自然災害の発生の危険性が高い区域だったということもあります。このような土地を相続すると相続した者(たとえば、子どもたち)は当然、「自然災害の危険」も引き継ぐことになります。

しかし、購入しようとしている不動産の履歴事項全部証明書(登記簿謄本)には「この土地は自然災害が起きる危険が高いですよ」などということはどこにも記載されていません。では、どうしたら自然災害の危険を確認できるのでしょうか。

ハザードマップで確認する

土砂災害から国民の生命及び身体を保護するため、平成13年4月に「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(通称:土砂災害防止法)が施行されました。

この法律は、土砂災害の恐れがある区域を明らかにし、警戒避難体制の整備、一定の開発行為の制限などの対策を推進しようとするものです。

各都道府県は、法令に基づき、順次、基礎調査を実施し、土砂災害の恐れがある区域等を把握したうえで、「土砂災害警戒区域」及び「土砂災害特別警戒区域」の指定を行なっています。

指定された区域は、不動産が存在している市区町村役場の「ハザードマップ」で確認できます。通常、市区町村役場のホームページでも確認できます。購入前にぜひ確認してみてください。

歴史をたどる

その土地の歴史をたどるのも一つの手段です。過去の災害が伝承されていることもあります。購入しようとしている土地の市区町村の図書館で郷土史や古地図で調べてみるのも一つの手段でしょう。

不動産購入の際は、利便性や権利関係だけではなく、災害の危険性も調べることが肝要です。そのためには、「自らの足で調べる」ことが欠かせません。

不動産は次世代が引き継ぐ可能性が高い財産です。不動産の権利関係や利便性に加えて、災害の危険度も調べて、「長期所有に適しているか否か」を総合的に判断することが「相続」の観点からも大切です。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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