【政策会議日記16】パナマ文書、伊勢志摩サミット、タックスヘイブンの今後(税制調査会)

5月26日午前に、私も一委員として出席した政府税制調査会国際課税ディスカッショングループ(DG)第7回会合が開催されました。今会合では、国際的な課税逃れ・租税回避への対応が議題となりました。ちょうど伊勢志摩サミットの初日とも重なり、国際的な租税回避にどう対応するか、各国首脳の間で議論されました。

折しも、今年4月に「パナマ文書」が公表された直後でもあり、国際的な租税回避がこれまで以上に関心を集めています。幸い、先進国・OECDでは、国際的な租税回避を防ぐための取組みをこれから始めようと合意したばかりだったので、その取組みに勢いを与えることになりそうです。

OECDは、2015年10月にBEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と利益移転:ベップス)プロジェクトが最終報告書を取りまとめていました。その最終報告書の平易な邦文解説は、同政府税制調査会国際課税ディスカッショングループ第6回会合配付資料にあります。「パナマ文書」の公表がもう1年早かったら、この最終報告書はなかったので、先進各国は租税回避を見逃しているのかと、強い非難を浴びたかもしれません。

BEPSプロジェクトは、「価値が創造されたところで税金を払うべき」との原則を掲げ、それから逸脱する場合は租税回避とみなすことにしました。伊勢志摩サミットでも、G7伊勢志摩首脳宣言でBEPSプロジェクトの幅広い実施が明記されました。まさに、国際的な租税回避を防ぐ取組みが促された形です。

では、今後、国際的な租税回避を防ぐために何が行われるでしょうか。1つには、国際的な税に関する情報の透明性向上と情報交換の促進です。国際的な租税回避を見破る最大の障害は、情報隠しです。いつどこで誰がどんな目的でいくらの資金を動かしたか。その情報が十分に把握できていないのが現状です。その資金移動が合法的か否かを判断するにも、情報が欠かせません。そこで、先進国の間だけでなく、いわゆるタックスヘイブン(租税回避地)にも参加してもらい、各国税務当局の間で、税に関する情報を必要なときに把握できるようにする取組みが、これからより一層進むでしょう。

ただ、それだけで国際的な租税回避は防げません。残された問題は、低い税率で課したり全く課税しなかったりする国・地域(軽課税国)です。いくら情報を透明化しても、軽課税国では、支払う税金を合法的に軽くできてしまいます。

それを防ぐ制度として、日本を含む先進国にはタックスヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)があります。これは、軽課税国にある実体のない子会社(ペーパーカンパニー)で得た所得・利益は、本国にある親会社が稼いだ所得・利益と見なして、本国の税率で課税する、という制度です。外国子会社合算税制があれば、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを作って課税逃れをしようとも逃れられないことになります。

しかし、わが国には、外国子会社合算税制に「漏れ」があったのです。5月26日に開催された国際課税ディスカッショングループ(DG)第7回会合では、その点が議論されたのです。

わが国の外国子会社合算税制では、どんな取引であれ事務所があるなどの「実体」があればペーパーカンパニーとはみなされません。しかし、現行税制で実体がある子会社でも、「実体」のない取引を行って所得・利益を得る場合があります。例えば、別の会社からこの子会社を通して資金を単に右から左に流すだけで手数料等の収入を得るというように、実際に所得が生じた場所でなくとも所得を得られたであろう取引が、実体のない取引です。実体のない取引によって得た所得を受動的所得といいます。日本の今の税制では、軽課税国にある「実体」のある子会社が得た受動的所得には、日本の税率では課税されません。

OECDのBEPSプロジェクトでは、子会社に実体があるか否かではなく、取引に実体があるか否かで判断して、租税回避か否かを判断する基準が議論されました。もしその基準に従うなら、わが国の税制を改めなければなりません。

税制を改めるには法改正が必要で、何をもって「実体」のない取引とみなすかなど議論をさらに深めていくことが必要です。