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<ガンバ大阪U-23>J3リーグ開幕戦はドロー発進。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

今シーズンから就任した森下仁志監督のもとで迎えるJ3リーグ開幕戦。前半から試合のペースを掴みゴール前ににじり寄るシーンを見せたガンバU-23だったがゴールを奪うには至らず、前半をスコアレスで折り返す。後半も立ち上がりからリズムよく試合を進める中、54分にはゴール前での崩しからFW高木彰人が先制。これでより加速するかと思われたが、63分にミスから失点するとチーム全体が慌て始めて69分には再び失点をくらい逆転されてしまう。それでも最後まで戦う姿勢を崩さずゴールへの意欲を示す中で、90分に市丸瑞輝がペナルティエリア外から放ったシュート性のボールが相手のハンドを誘いPK。それをFW食野亮太郎がきっちりとゴールにおさめて同点に追いつき、引き分けで試合を終えた。試合後のガンバU-23監督、選手のコメントをお届けする。

●森下仁志U-23監督

天候が悪い中でたくさんのファン・サポーターの方に来ていただいたことに感謝しています。今日は平均年齢が19歳くらいでしたが若い選手たちをこれからも後押ししていただけたら、と思います。ゲームに関しては、トータル的には悪くはないなと思います。悪くはないというのは…まだまだ若さが出たのかな、と。前半の攻撃の形をみていてもそうですが、自分たちの関係性はできているとは言え、ちゃんと相手を見てどこにスペースがあいているのか、などといった判断力をあげていければもっともっとゴールも取れたと思いますし、そこまでの形は数多く作れていたからこそ、より精度をあげていきたいと思います。1−0になった時点で全体的には自分たちがゲームをコントロールしていたので、そこでもっとしっかりと自分たちでゲームをコントロールする、プラス2〜3点とれるようにそういう判断力をつけさせたいと思います。

ー今の言葉にも付随しますが、ミスから失った最初の失点から2失点目を失うまでの10分間あたり、ラインも下がって完全にバランスを崩した印象がありました。そういったメンタル的なコントロールということも含めて、あの時間帯を監督はどう評価されますか。

そこが若さで、サッカーはミスは起こりうるスポーツなので、ああいうことも起こりうるとは思っていますが、あのあと、野田(裕喜)や陸(松田)も、GKには瑞輝(林)もいて、彼らが間に合っている状況なのに「ヤバい!」という感じからバタバタして、瑞輝の判断が最後、難しくなってしまったと。これは選手全員にも話しましたが、そのへんのコントロールというか、誰しもミスをするとテンションが上がりすぎるので、陸なんかはそれを引きずったまま2点目も被ったような形になってしまっていたので。陸は、前半からちょっと心配していたんですけどね。ファウルがすごく多くて、ボールへのアプローチの仕方も悪く…もちろん僕もこれまでいろんなセンターバックを見てきましたが、彼のように「いける」っていうのは素晴らしい能力だと思うんです。でも、だからこそ、それをいい風に出してもらいたい。と言っても、これはとてもありがたいことで、公式戦じゃないと味わえなかったことだと思うんです。練習試合では、あそこまでのダメージは陸に残らないはずで、それをプラスにしていってもらいたい。僕らも1試合1試合学んで、成長していかないとここでやらせてもらっている意味がないので、それをプラスに捉えてやっていきたいです。

ー今日の相手は少しラフなプレーが多かったですが、そこに逃げずに戦う姿勢を出せて、最後追いつく形にも持って行けた。そこは評価できるのかなと思いますが。

うちの選手には最高の相手でしたね。こういう相手を僕は求めていたし、例えばトップチームと紅白戦をしたとしても、自分たちでやってもなかなか空中のボールというのは出てこないので。こういう相手にどれくらいやれるのか、と思っていたんですが…相手にはキャリアのある選手もいたし、もう一花咲かせてやろうというモチベーションもあったはずだし、3−4−3でくると思ったら2トップにしてきて、おまけにこの天候で…それらも想定済みだったんですけど、でも、思ったより戦えました。去年、僕がビデオで見た感じよりは戦う姿勢も出てきたな、と。と同時に、このリーグでやっていくには、対人の練習もやっていかなきゃいけないなっていうのは再認識しました。

ーミスがらみで2失点でしたが、あの時間帯に追いつけたという意味で、意味のある勝ち点1だったと思いますか。

まあ、そうですね。よく追いついたのもありますけど、先ほども言ったように、前半からもっと点を取れる、自分たちが判断力をあげて、お互いの関係性を作れば、相手の状況をちゃんと見ることができれば崩せるシーンはたくさんあったし、あとはクロスの入り方ですね。まだ本当のストライカーというか、生粋のストライカーという選手がまだいないので、どうしても後ろについちゃうというか、飛び込んで…中山雅史さんとか岡崎慎司(レスター・シティFC)のような何としてでも点を取ってやるっていうところまではいっていないので、そのへんのメンタリティもあげていきたいと思います。

●FW食野亮太郎

(緊張感のあるPKのシーンでした)本当はPKは苦手なんですよね(苦笑)。でも点を取りたかったしマルくん(市丸瑞輝)が蹴っていいよ、って言ってくれたので蹴らせてもらいました。ボールを持った瞬間にどっちに蹴るかは決めていたので、あとはいかに右に蹴るフリをするかだけを考えていました。単純ですけど。(1点目も食野選手の仕掛けでした。前半から周りを使う時と、自分で行く時を判断しながらプレーしていましたね)少しリラックスして入った分、そういうところはできたかもしれないですけど、後半の最後、少しオープンな展開になった時に仕掛けて結局取られた、というシーンもあったので。そういうところは自分の課題だと思うし、J1をみていても後半の最後はそういうシーンが多くなっているので、そういうところでの質は意識してあげていきたいと思います。(相手引いて固められた前半は、崩すアイデアがもう少し出れば得点にも繋がったのかなと思って見ていましたが)まあでも開幕戦だし、ああいう展開になるのは予測もしていたんですけど、やっぱりもう少し自分たちが考えてボールを動かすとか、裏に抜けたり、仕掛けることができたらよかったなとは思います。ただ最初は硬さもあったはずなので…でもハーフタイム挟んでみんなでしっかりコミュニケーションもとれていたし、仁志さん(森下仁志監督)からのアドバイスもあったし、そういうところでうまくボールを握れる時間帯もあったのかなとは思います。(球際とか、1:1の局面もしっかり前半から気持ち入れてやれていた)そうですね。そこは試合前のミーティングでも仁志さんがしつこくというか、繰り返して強調して言っていたことだったので、そこで負けたら試合にならないっていうところで、そこは全員がしっかり戦えたのかなと思います。(開幕戦でゴールが取れた。今年は結果、ということを繰り返し言っていた中で、いいスタートになりましたか)PKといえども1点は1点なので、肩の荷は少し軽くなったので、また来週に向けていい準備ができるかなっていう風には思います。

●DF野田裕喜

(1失点目について)陸(松田陸)から少しボールがずれて、いけると思ったところで足を滑らせてしまい対応が遅れた。あのあとも少しバタついてしまって、そこは若さが出たというか、もう少しチームとして何をすべきか整理してやる必要があったと思うんですけど、最後まであきらめずにゴールを目指して追いつけたことは次につなげたい。

(監督に求められるセンターバックの役割について)自分と陸のセンターバックの距離感があまり遠くなりすぎずにポゼッションをしようと言われていて、自分もそれを新鮮に受け止めながら成長できているなっていうのは感じています。(トップもビルドアップとか後ろからの組み立てが課題ですが、そこはU-23でも意識していますか)そうですね。僕自身も今日、縦パスを何本もミスしてしまったんですけど、そこは判断を変えれば局面も変えられると思うので、そこは修正できるようにやりたいです。(結構狙っているなっていう意図は見えました)そうですね。もうひとつ判断がそこに伴えばよかったなって思います。ただ、それは自分の持ち味でもあるし、ビビって横パスをしちゃうよりも、どんどんチャレンジして、そのミスを次に、っていう性格なので、そこは恐れずにチャレンジしたいし、ただミスが続いてしまったことは反省して課題として修正していきたいです。(ああいう縦パスは監督からも狙えと言われているところですか)そうですね。いつでも裏にも出せる持ち方で、そこから判断しろということは言われているので、あとは判断の部分だと思います。

●MF市丸瑞輝

(前半から自分たちのペースでしたが、相手に引かれていたこともあり崩しきれなかった、というか、崩しのアイデアが少し物足りないかなと感じました)もちろん相手は5バックだったのでブロックが強固なのはわかっていたし、その中でもっと個人がアイデアを出してプレーできればよかったんですけど、ドリブルで突っ込むシーンが多かったかな、と感じました。それも大事だけど、もっと個人個人がアイデアを持って、視野を広く持ってプレーできれば、とは思いました。(失点してから2失点目食らうまでかなり急激にチームが慌てた。メンタル的なものも影響したのかもしれませんが、どういうコントロールが必要だったと思いますか)あの時に一気に後ろ向きになったというか、1失点目したあと、相手も勢いよく来たというのもありますけど、みんながファーストタッチから後ろ向きになってしまった中で2失点目も食らったし、あそこでもしかしたら逆に単調に背後に蹴るっていうことをしてもよかったかもしれないし、押し込まれている時間だからこそもっとシンプルにやるっていうことをチームとして合わせていかなきゃいけないとは思いました。(同点に追いつくPKのチャンスを作り出した。自分で蹴るという判断はなかったですか?)PKをとった瞬間に亮太郎(食野亮太郎)と目があって、「蹴って」って伝えました。あいつも点を決めたそうだったし、チームとしてもFWが点を決めると乗っていけるので。みんなが点を取れればもちろんそれもいいけど、FWが点を取るチームがやっぱり一番強いと思っているので、そういう意味でも今日はFWの二人に点が生まれたのはよかったです。2失点してガタガタ崩れずに、なんとか踏みとどまって追いつけたことをプラスに考えて…これまでならそのまま3〜4失点してしまった展開だったと思うんですけど、そうじゃなくて追いつけたので。こういうことを少しずつ積み上げていきたいです。

●DF松田陸

(1失点目のミスについて)ピッチも悪くて、1つのミスでこうなってしまったので修正しなくちゃいけない。そこから自分の気持ちとしても、チームとしてもバタバタしてしまって…あの時間帯以外は結構よかったと思うだけに、1つのミスの重さを知ったので、これからそこは意識してやっていきたいです。(それ以外のシーンでは持ち味の空中戦の強さは出てた)そこは自分の武器だと思っているので負けたくないし、全てのシーンでしっかり競り勝てるように、タイミングとか、追求してやっていきたいです。(サイドバックで昨年は戦うことが多かったのに対して今年はセンターバックでプレーすることが増えそうです。その中で改めて意識していることは?)もともとやっていたとはいえ、急に変わると、対応するのはやっぱり難しいんですけど、自分はそういう対応力は早いほうだと思うので、あまり考えすぎずにやっていければいいかなと思っています。(1−2で終わらず、最後引き分けに持ち込めたことはプラスに考えられるところですか)そうですね。このチームは得点は取れると思うので、あとは自分のところの後ろのミスさえなくてDFラインがゼロにおさえられば勝てると思うので、1つ1つのプレーの質を上げていきたいです。

●FW高木彰人

(前半はなかなか引かれた相手に崩しのアイデアがなくて、そこに苦しんだように見えました)その通りですね。相手は昇格してきたばかりのチームだし、開幕戦というのもあって、前半は失点しないっていうことが前提だったというか、昨日のトップの試合も早い時間帯に失点してしまって自分たちで苦しい試合にしてしまったのを見ていたので、立ち上がりは何が起きるかわからないという中で、前半、攻撃ができていただけに得点ができなかったのは悔しいですけど、0−0で終われたのはよかったのかなとは思いました。(後半は失点してから2失点目までかなりチームがばたついてしまった)そうですね。失点するくらい前から自分たちのミスから危ないシーンが増えてしまっていて、そこを修正できずに最初の失点も自分たちのミスからで…まだDVDを見ていないのでなんとも言えないですけど、2失点ともGKも含めて落ち着いて対応していたら守れたのかなとも思うし、そこを慌てて取りに行ったことによって失点もしたし、失点後も流れはよくなかったので。相手の押せ押せムードに飲まれた感じがあったので、そこでもう一度自分たちがゲームをコントロールできれば2失点目もなかったはずで、そこはチームとしてしっかり改善していかないといけないと思います。(ゴールシーンは、中村敬斗選手が少し触ってこぼれてきたボールでした)そうですね。意図して僕のところにきたわけじゃないと思うんですけど、あそこにポジショニングをとれていたことが…何が起きてもしっかり対応できるポジションをとれていましたし、しっかりそこで決め切れたのはよかったんじゃないかなと思います。ただ、ゴールは決めましたけど、次は自分のゴールでチームを勝たせられるようにしたいので、次の試合も結果を求めてプレーします。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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