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ディープインパクトのラストクロップ・オーギュストロダンの英伝統レースの敗因は? 来日の可能性あるのか

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
イギリスダービー優勝時のオーギュストロダン(写真:ロイター/アフロ)

 29日、ディープインパクト産駒のオーギュストロダンがイギリスのアスコット競馬場で行われたキングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(G1)で大敗した。3走前にイギリス・ニューマーケット競馬場で行われた英2000ギニー(G1)12着以来、二度目の惨敗だった。

 レース前に雨はあがり、馬場状態は日本でいう「やや重から良」のコンディション。オーギュストロダンにとっては悪くはない馬場状態だったはずだ。しかし、結果は10頭中の10着。鞍上のムーア騎手はレース途中、ラストスパートの時点で明らかに追うのをやめている。どうみても、途中で諦めている。

 レース中の故障発生が心配されたが、そういった続報はないのは不幸中の幸いだ。

■2023年 キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス オーギュストロダン10着

オーギュストロダンの敗因はラストの上り坂か

 オーギュストロダンは何故負けたのか。

 あくまでも、筆者一個人の見立てだが、ラストスパートのハードな上り坂が苦手なのが一因では、と推察する。

 欧州の競馬場の多くはコースの高低差が大きく、エプソム競馬場は最高40m、アスコット競馬場は22mある。日本では中山の5.3mが最高なので、欧州では坂をこなすパワーとスタミナが要求されるかわかる。

 ただし、その高低差のある位置は大きく異なる。

 前々走、オーギュストロダンが快勝した英ダービーのコースはエプソム競馬場のスタート地点から上り坂を走るが、その後は平坦と下り坂が続き、最後に少し上り坂がある。しかし、今回の敗れたアスコット競馬場はスタートからは下り坂だが、中盤とラストに向けてはひたすら上り坂を走る。

■2023年 英ダービー(エプソム競馬場) オーギュストロダン1着

 単に高低差だけならエプソム競馬場のほうが大きいが、エプソムの「前半上り→平坦→後半下り→ラスト100m上り」とアスコットの「前半下り→中盤・後半は上り」では馬の疲労具合も異なるし、得意不得意も分かれるところだ。

 ほかのオーギュストロダンが走ったレースを見ても、勝った前走のアイルランドダービーが行われたカラ競馬場は道中はほぼ平坦でラスト400mは緩やかな上り坂なのに対し、負けた英2000ギニーが行われたニューマーケット競馬場(ローリーマイル)はスタート地点からゴールまでずっと上り坂が続く直線コースとなっている。

■2023年 アイルランドダービー(カラ競馬場) オーギュストロダン1着

■2023年 英2000ギニー(ニューマーケット競馬場/ローリーマイル) オーギュストロダン12着

父ディープインパクトが得意とした下り坂スパート

 父のディープインパクトは下り坂で勢いよくスピードをつけてポジションを上げ、差し切る戦法が得意だった。とくに天皇賞(春)は圧巻で、「3コーナーの坂は馬なりでゆっくり下る」という常識を覆すようにスピードを上げて一気にまくって優勝している。その血を継ぐ息子のオーギュストロダンが日本の競馬場にはない、アスコット競馬場特有の「下り→上り」をこなせなくても不思議ではない、と推察する。

■2006年 天皇賞(春)(京都競馬場) ディープインパクト1着

 なお、オーギュストロダン陣営は日本への遠征も前向きにとらえているという報道があった。日本の馬場は全般的に軽いし、直線に上り坂があるといってもその高低差は惨敗したアスコットの比ではない。

 そして、何より"ディープインパクトのラストクロップ"という多くの日本の競馬ファンを魅了する遺伝子を持っている。キングジョージ惨敗は残念ではあるが、この経験を糧として、父も制したジャパンカップにぜひチャレンジして欲しいものである。

■2006年 ジャパンカップ ディープインパクト1着

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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