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アーモンドアイが天皇賞(秋)優勝でJRA初のGI8勝達成!明暗を分けたスタートとゴール前の攻防

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
アーモンドアイとクリストフ・ルメール騎手(写真は2019年天皇賞・秋)(写真:中原義史/アフロ)

明暗を分けたスタート。アーモンドアイはすんなり好位をキープ

 第162回天皇賞(秋)はアーモンドアイが優勝し、JRA史上最多のGI8勝を達成。鞍上のC・ルメール騎手が感涙にむせんだこのレースは、スタート地点でのポジション争いが勝負の明暗を分けた一戦であった。

 東京芝2000mはスタート位置がポケット地点にあり、かつ、2コーナーまでの距離が130mと短い。そのため、真ん中から外側の馬たちがいっせいに2コーナーを目指すので自然とこのあたりの枠の馬たちによるポジション争いが厳しくなる。

 6枠7番クロノジェネシスはゲート内でがたついていた。互角のスタートを切ったものの、ポジション取りにいった際に、フィエールマンらとかなりごちゃついてしまった。そのため、フィエールマンは馬群後方からのレースとなった。クロノジェネシスも道中で他馬に前に入られるシーンが見受けられた。

 一方で、7枠9番のアーモンドアイはすんなりスタートを切り、無理なく好位のポジションをとれた。道中は馬群の外側、先頭から4番手あたりでレースの流れとなった。ふりかえってみれば、この時のポジション取りが勝負の明暗を分けた。

■第162回天皇賞(秋) 優勝馬アーモンドアイ(JRA Official)

ラスト、何度も手前を変えてスピードを上げるアーモンドアイが2頭の猛追を凌ぐ

 ラスト400m、鞍上のルメール騎手がアーモンドアイをうながすと、いつもどおり軽快に前をとらえにかかった。

 さらにラスト200m、ルメール騎手が右ムチを入れると左手前に変えてさらにギアを上げ抜け出しをはかった。

 そこへ後方から猛追してきたのは後方からレースを進めざるをえなかったフィエールマンとクロノジェネシスだった。特にフィエールマンはもともと長くいい脚が使えるタイプということもあって、グイグイと勢いある脚色でやってきた。

 しかし、アーモンドアイは2頭が着差を詰めてきたタイミングでさらにもう一度、手前を右手前に変えた。そして、しっかり踏ん張りきったアーモンドアイは2着のフィエールマンに半馬身差をつけてゴールを駆け抜けたのだった。

■2020年 天皇賞(秋) 優勝馬アーモンドアイ(はみだし競馬BEAT【公式】)

「信じられないパフォーマンス」とクリストフ・ルメール騎手は感涙

 この勝利に「信じられないパフォーマンス」と主戦のクリストフ・ルメール騎手は感極まって涙をみせた。

「毎回、乗るときのプレッシャーが重たい」とし、特に今回は8冠がかかっているということでプレッシャーはさらにきつかったと話した。

「今日は最後はひとりで伸びてくれました。坂を上ってから最後はキツイになりました。外の馬(フィエールマン、クロノジェネシス)もきましたから。でも、アーモンドアイはむちゃくちゃ強い。結構心配しましたけど、よく頑張ってくれました。」

 クリストフ・ルメール騎手はこの春、ドバイワールドカップでアーモンドアイに騎乗するためだけに数週間の騎乗チャンスを捨てた。結果的にドバイ国際競走は中止となったが、そこまでしてまで彼女を選んだのだ。そのくらい、ルメール騎手にとってアーモンドアイは特別な存在なのだろう。

 アーモンドアイはクラブの規定で来年2021年3月までに引退する。残すレースはあと1走か2走と言われている。その数少ない残されたレースに、記録も記憶も、深く刻み込む姿を期待しよう。

■2020年 天皇賞(秋) アーモンドアイに騎乗したクリストフ・ルメール騎手のインタビュー(はみだし競馬BEAT【公式】)

■過去記事

女子高生が年上男たちをなぎ倒す!三冠牝馬アーモンドアイが驚異的レコードでジャパンカップを制覇

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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