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第80回桜花賞(GI)のみどころとポイント

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
桜満開の栗東トレセンで調教を積むリアアメリア。左は川田将雅騎手(筆者撮影)

若い牝馬への無観客競馬の影響は?

 新型コロナウイルス感染防止対策のため、今年の桜花賞は無観客の厳戒態勢で行われる。出走する牝馬たちは人間で言えば女子高生くらいの年齢。心身ともに敏感なお年頃だけに、大歓声がない状況でのレースは例年よりは冷静さを保ちやすいと察する。

 とはいえ、競走馬は競馬場に来ただけで"これから自分はレースで走らなければならない"と理解し、自らテンションを上げていくものだ。逆に「どちらかというと、歓声があったほうが闘争心により火がつくタイプ」(ウーマンズハートを担当する西浦厩舎深川助手)というように観客の反応があったほうがよさそうな馬もいる。敏感なリアアメリア等は無観客でもひとりでヒートアップしていくことだろう。

 そのあたりの判断は、パドックや返し馬で十分に観察しておきたいところだ。

[2019年、第79回桜花賞。優勝馬はグランアレグリア]

前日オッズで一番人気は前走圧勝のデアリングタクト

 前日オッズで一番人気に推されているのはエルフィンSを圧勝したデアリングタクトだ。2戦2勝とキャリアが浅い点は気になるが、その瞬発力の高さには相当な素質の高さを感じさせられる。仕掛けられてからスピードが乗るまでがすごく速い。アッという間に先頭集団を射程圏内にとらえてしまうのだ。

 しかも、「折り合いがついて素直。非力ではないので馬場が渋っても大丈夫だと思います」(杉山厩舎池水助手)という陣営のコメントもある。4月11日、阪神競馬場は本降りの雨予報。時間の経過とともに雨脚が強くなると予想されているため、馬場悪化は避けられないようだ。それだけに瞬発力もありながらも道悪もこなせそう。実に心強い存在だ。

栗東トレセンで運動中のデアリングタクト(筆者撮影)

 

前哨戦を制したマルターズディオサは自在性が魅力

 キズナ産駒のマルターズディオサは1か月以上栗東トレセンに滞在して調整を進めている。

「チューリップ賞は休み明けでしたが状態も良かったです。道中の折り合いもついていい内容だったと思います。栗東の環境にも慣れて順調にきています。自在性があって展開に左右されないのが強みですね。」(手塚厩舎大村助手)

 桜花賞と同じコース(阪神競馬場、外まわりの芝1600m)の阪神ジュベナイルフィリーズで2着、チューリップ賞で1着という堅実さは軸としてかなり魅力を感じる。

前哨戦のチューリップ賞を制したマルターズディオサ(筆者撮影)
前哨戦のチューリップ賞を制したマルターズディオサ(筆者撮影)

直行組のリアアメリア、サンクテュエール

 リアアメリアは阪神ジュベナイルフィリーズから4か月の休み明け。桜花賞への直行している。最近は前哨戦を遣わずに本番へ直行して結果を出す馬が多くなった。ハプニングがつきものな競馬を使いながら調子をあげていくより、計画性を持って調教で調整しながら本番へ向かうほうが大一番で体調をピークへもっていく計算がしやすくなる。

 リアアメリア陣営もそのあたりは逆算済みだ。

「2歳のはやい時期にデビュー(6月)して勝ち上がり、続くアルテミスSで賞金を加算できたのでこの時点で賞金的にほぼ桜花賞への出走権を確保したようなもの。その分、桜花賞に向けてゲートの練習や、キックバック(前をいく馬が跳ね上げた芝や土砂が後続馬に直撃すること)に慣れるなどレース中に起こるであろうことへの対策を時間をかけてしっかりやれました。」(中内田厩舎片山助手)

 2歳時は素質だけで走っていたリアアメリアだったが、いよいよ万全の調整でGIの舞台に挑む。

 昨年桜花賞を制したグランアレグリアを管理する老舗・藤沢和雄厩舎からは今年はサンクテュエールが出陣。昨年のグランアレグリアは12月16日の朝日杯フューチュリティステークスから4か月の休み明けだったが、サンクテュエールらは1月のシンザン記念以来3カ月ぶりの実戦となる。これまでの3戦は新潟、東京、京都とそれぞれ違う競馬場で1、2、1着とコンスタントな成績を上げているし、これまでのレース間隔も比較的ゆったりとしている。いきなりでも力は出せそうだ。

2歳女王レシステンシアは武豊騎手を背に出陣

 2歳女王を決める阪神ジュベナイルフィリーズを制したレシステンシアはデビュー戦でコンビを組んだ武豊騎手を背に大一番へ挑む。

 レシステンシアの魅力はなんといってもハイペースで逃げながらも押し切れるスピードの持続力だ。この中間の調教でも、ごく自然に速い調教時計を刻んでいた。

 鞍上の武豊騎手は平成最初の桜花賞を勝った記録男。令和初の桜花賞であり、最年長桜花賞優勝騎手記録がかかった一戦となる。

阪神ジュベナイルフィリーズを制し2歳女王のレシステンシア(筆者撮影)
阪神ジュベナイルフィリーズを制し2歳女王のレシステンシア(筆者撮影)

 その他、牡馬相手に好戦のミヤマザクラ、福島でデビュー戦を勝ったあと3戦連続2着のマジックキャッスルなどの存在が面白い。

 世界中が閉塞感漂う昨今だが、躍動感あふれる競走馬たちの走りを見て少しでも楽しくなっていただけたらと思う。

[2019年阪神ジュベナイルフィリーズ(GI) 優勝馬レシステンシア]

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

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