新型コロナの出口戦略「命も経済も守る出口戦略」や「V字回復プロジェクト」を提言

(写真:長田洋平/アフロ)

新型コロナウイルスの感染からの出口が見えない状況が続いている。

ワクチン開発には早くても1年以上はかかるとの指摘もあり、表面化していない感染者からの感染が復活し、北海道のように感染第2波、第3波を引き起こす可能性もある。

こうして考えると、現在の日本の対策では、結果として経済活動の回復は長期間にわたり期待できない可能性もある。

一方で、長期間にわたる外出制限や飲食店などの営業活動の自粛は、日本経済に対し想像を超えた損失をもたらす可能性がある。

「出口戦略」の必要性が問われはじめている昨今ではあるが、こうした中で、法政大学教授の小黒一正氏や京都大学准教授の関山健氏などにより、『新型コロナウイルス感染拡大からの「命も経済も守る出口戦略」』と題した緊急提言が出されたので紹介したい。

緊急提言

新型コロナウイルス感染拡大からの「命も経済も守る出口戦略」

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出典: 新型コロナウイルス感染拡大からの「命も経済も守る出口戦略」(論文筆者がhttps//ourworldindata.org/の2020年5月4日時点データから作成)

提言では冒頭に経済的な影響についての大枠を捉えるために、企業活動の国勢調査とも言われる経済産業省の「経済センサス・活動調査」からの試算を紹介している。

2015年における全産業の売上高は約1,625兆円と、GDPの約3倍にもあたり、全産業における1日当たりの売上高は平均で約4.5兆円にも上る。

旅館・ホテル等の宿泊業・飲食サービス業だけでみても約25兆円、映画館や劇場等の生活関連サービス業・娯楽業は約46兆円、デパート等の卸売業・小売業は約501兆円となっており、これら産業だけでも1日当たりの売上高は平均で約1.6兆円にもなる。

こうしたものから試算すると、長期間にわたる外出制限や飲食店などの営業活動の自粛による売上蒸発は、旅館・ホテル等の宿泊業・飲食サービス業、映画館や劇場等の生活関連サービス業・娯楽業、デパート等の卸売業・小売業産業だけで、1日平均約0.24兆円であり、1カ月で7.2兆円になる可能性があるという。

自粛が長期化し、3カ月継続すると21.6兆円、6カ月継続ならば名目GDPの約8%に当たる43.2兆円にもなる。

これだけの売上蒸発が数か月にわたって継続すると、企業の資金繰りに甚大な影響を与えるのは間違いなく、既に資金繰りの悪化やコロナ関連倒産も出始めており、時間との勝負になってくる。

外出制限や営業自粛により、宿泊業・飲食サービス業、サービス業・娯楽業、卸売業・小売業を中心に大規模な連鎖倒産の発生が予想される。

これを回避するタイムリミットは、政府による資金繰り支援の効果を含めて考えても、残り半年程度だろうと指摘している。

新型コロナウイルスは、2つのルートで人命を脅威にさらす。

1つは言うまでもなく重症化による死だが、今後、もう一つの脅威である外出制限や営業自粛の長期化による経済的死についても考えていかなければならない。

仮に緊急事態宣言が解除されても、感染が再び拡大し、医療崩壊を防ぐために自粛が再開される可能性もあり、今回の緊急提言では、新型コロナウイルス対策の「出口」とは、「命」か「経済」かの二項対立ではなく、徹底した検査により、人々が安心して消費、教育、運動、レジャーなどの社会生活を送れるようになる「命も経済も守る出口戦略」であると提案されている。

大規模な連鎖倒産を回避するには、残り半年程度がタイムリミットであり、それまでに、全国民が1~2週間に1度PCR検査(承認申請中の抗原検査を含む)を受けられる体制(1日1,000万件から2,000万件の検査)を整備し、継続的に陰性の者は安心して外出や仕事を再開できるようにすることを目標とする必要があり、PCR検査に限らず、高精度で有用性が高い検査は積極的に取り入れることを求めていると共に、同時に、検査拡充に必要な人員には、医師等以外でも一定の条件下で検査を行える時限措置を講じた上で、外出制限や営業自粛によって職や収入を失った方々の優先的な雇用を求めている。

また、体制整備のため、官邸を中心に関係省庁、都道府県および協力団体などが一体となって資材調達、実施、検査結果の集約・分析などを行いうるよう「新型コロナウイルス検査緊急対策ネットワーク」の構築を提案している。

この提言を行った両名を発起人に賛同人を集め、5月8日、新たなプロジェクトが始まった。

鹿島平和研究所国力研究会/安全保障外交政策研究会+有志による緊急提言『新型コロナ・V字回復プロジェクト「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に』だ。

緊急提言

新型コロナ・V字回復プロジェクト「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に

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出典:新型コロナ・V字回復プロジェクト「全国民に検査」を次なるフェーズの一丁目一番地に

提言では、社会全体にとっても、一人ひとりにとっても、新型コロナウイルスの感染の状況を定期的に知ることができることが、私たちがお互いに安心して社会・経済活動を営むことができるという、次のステップに進むために必要なこととして、希望即検査へ方針転換を実現するために、1日1万件、合計1,000万件の検査を行うこと、陽性は隔離・治療へ、擬陽性は再度検査、継続的な陰性は社会活動・経済活動へ外出自粛の解除を提案している。

発起人と賛同者(2020.5.8現在)については以下の通りであり、筆者も賛同者として参画した。

今後の新型コロナウイルス対策への提言として、是非これらの提言を参考にしてもらいたいと思う。

また、このプロジェクトについては、Change.orgにて、賛同者は以下から署名できる。

Cange.org

新型コロナ「全国民に検査」の早期実現を

発起人

小黒一正(法政大学教授、鹿島平和研究所理事)

関山健(京都大学准教授)

賛同者 (2020.5.8現在 五十音順)

秋山昌廣(秋山アソシエイツ代表、元防衛事務次官)

青木玲子(一橋大学名誉教授、元九州大学副学長)

朝比奈一郎(青山社中株式会社代表CEO)

稲垣誠一(元厚生労働省)

小笠原泰(明治大学教授)

小原凡司(笹川平和財団上席研究員)

神谷万丈(防衛大学校教授)

亀井善太郎(PHP総研主席研究員、立教大学大学院特任教授)

小林慶一郎(慶應義塾大学客員教授、東京財団政策研究所研究主幹)

渋谷健司(キングス・カレッジ・ロンドン教授、元東京大学教授)

島澤諭(公益財団法人中部圏社会経済研究所研究部長)

瀬尾傑(スマートニュースメディア研究所所長、スローニュース代表取締役)

高橋亮平(NPO法人Rights代表理事、一般社団法人 日本政治教育センター代表理事、一般社団法人 生徒会活動支援協会理事長)

徳田安春(群星沖縄臨床研修センター長)

田中秀明(明治大学公共政策大学院教授)

徳地秀士(政策研究大学院大学客員教授)

中里透(上智大学准教授)

浜田敏彰(関西大学客員教授、岩手保健医療大学理事)

原岡直幸(一般財団法人国際経済交流財団専務理事)

松井孝治(慶應義塾大学教授、一財・創発プラットフォーム理事)

森信茂樹(東京財団政策研究所研究主幹、ジャパン・タックス・インスティチュート理事長・所長)

山本秀男(中央大学戦略経営研究科教授)

渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)

新型コロナウイルス対策の「出口」とは、「命」か「経済」かの二項対立ではなく、徹底した検査と隔離により、人々が安心して消費、教育、運動、レジャーなどの社会生活を送れるようになる「命も経済も守る出口戦略」であるべきだ。