自治体のあり方を変える「社会的基盤維持管理費」の将来推計ランキング

統一地方選挙で議論すべき公共事業・施設の大きな負担

いよいよ今週、統一地方選挙の前半戦がはじまる。

多くの皆さんにとっては、選挙という実感が全くない中での選挙戦スタートとなってしまうのではないかと危惧する。

国政選挙の様にメディア等にもクローズアップされない地方選挙だが、4年前の統一地方選挙では全国に37,302人いる地方政治家の内15,841人が選ばれた。

こうした議員一人ひとりへの報酬、政務活動費のほか、その他にも議会に関わる様々な費用等が税金から支払われている事を考えると、決して安い負担ではないはずだ。

しかし、それ以上に大きな問題は、多くの方々が「地方政治なんて誰がやっても同じだし・・・」と関心も持たないでいる間に、地方自治現場は、様々な所で、いわゆる「お上に任せておけば大丈夫」と言われてきた様な状況ではなくなってきている現実がある。

先週、自治体の大きな課題として人口問題の中でもとくに社会増減について現状を共有した。詳しくは、『「転出超過自治体」ランキング、ワースト3が判明。人口減自治体はどう転入を呼び込むか』<http://bylines.news.yahoo.co.jp/takahashiryohei/20150320-00044023/>を参照されたい。

こうした人口の問題もそうだが、自治体における現状の課題は、ほっておけば何とかなるというものではなく、どの自治体が先に対応して改善するかが問われていく事になる。逆に言えば、こうした課題への対応が遅れた自治体は相対的にどんどん沈んでいってしまう事になる。

今回は、こうした課題の中でも、今後自治体にとって大きな足かせとなっていく要素、公共施設や公共事業等といった社会基盤の維持管理費と更新費の負担について紹介していく。

2012年に中央自動車道で、笹子トンネル天井板落下事故が起こった。日本の高速道路上での事故史上、死亡者数が最多となった事故だった。この事故にはもちろん様々な要因があったのだろうが、その1つに、トンネル自体の老朽化があったと言われる。

全国に造られたトンネル、橋梁はじめ、様々な社会基盤には、同時期、場合によってはそれ以前に造られたものが数多ある。こうした事故は、決して単なる偶然の産物というものではなく、同じ様に第2、第3の笹子トンネルが出かねない状況にある事を認識しなければならない。

図表1) 維持管理・更新費の将来見通し(単位:兆円)

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(出典)国土審議会政策部会長期展望委員会「国土の長期展望」中間取りまとめ 概要

図表1は、耐朽年数を迎えた社会基盤の構造物を現状と同一機能で更新すると仮定した場合、現在ある社会基盤ストックの維持管理費と更新費がどうなって行くかを示したものだ。

2010年までは実績、2011年以降は推計値になっているが、グラフ最初の1960年代から「維持管理費と更新費(以下、維持管理更新費)」は常に上がり続け、2030年頃には2010年時からの比較でも約2倍にまで膨らむと予想されている。

単純化して説明をすれば、これまでは新規で社会基盤を整備し続けてきたが、今後は「維持管理更新費」にそのほとんどを費やさなければならなくなるため、新規での基盤整備や建設の余地はほとんどない時代に入っていくという事だ。

社会的基盤の更新維持費の負担は、地方に行けば行くほど多くなる

こうした「維持管理更新費」の将来負担は、都市よりも地方ほどその負担割合が大きい事も分かっている。

都道府県別の人口1人当たりの「維持管理更新費」は、人口の多い県より、人口の少ない県における負担の方が大きく、例えば、人口が1,291万人と最も多い東京都の場合、1人当たりの維持更新費は64,000円、1人当たりのストック額は430万円に過ぎないが、人口が最も少なく60万人の鳥取県では、1人当たりの維持更新費は92,000円、1人当たりのストック額は1,000万円にも及ぶ。

ちなみに、最も負担が大きいのは、島根県で、1人当たりの維持更新費は107,000円、1人当たりのストック額は1,230万円にもなる。

図表2) 都道府県別人口と1人当たりのストック額と維持更新費(2010年)

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(出典)国土審議会政策部会長期展望委員会「国土の長期展望」中間取りまとめ 概要

図表3) 都道府県別人口と1人当たりのストック額と維持更新費(2030年)

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(出典)国土審議会政策部会長期展望委員会「国土の長期展望」中間取りまとめ 概要

図表4) 都道府県別人口と1人当たりのストック額と維持更新費(2050年)

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(出典)国土審議会政策部会長期展望委員会「国土の長期展望」中間取りまとめ 概要

しかし、こうした地方を取り巻く問題で、さらに深刻なのは、こうした地方における「維持管理更新費」の負担は、年々増えて行くのはもちろん、都市部に輪をかけて、地方に行けば行くほど顕著に増加するとされている事だ。これは、図2~4によって、2010年から2030年、さらに2050年と比較して見るとよく分かる。

最も影響の少ない東京都から見ていこう。1人当たり維持更新費の増加が一番小さな東京でさえも、64,000円だったものが、100,000円、102,000円と1.6倍程度も増加している。

これが人口の少ない自治体では、比べ物にならない程大きく膨らむ。

最も影響が大きいのは、島根県で、2010年に107,000円だった1人当たりの維持更新費は、2030年に284,000円、2050年には374,000円と3.5倍にまで増加する。

2050年の1人当たりの維持更新費が高い都道府県から紹介していくと、この島根県に続いて高いのは秋田県で、2010年に88,000円だったものが、226,000円、347,000円と3.9倍となる。

以下、高知県は、84,000円が、219,000円、324,000円と3.9倍。

北海道は、92,000円が、210,000円、281,000円と3.1倍。

徳島県は、84,000円が、184,000円、280,000円と3.3倍。

鳥取県は、92,000円が、208,000円、268,000円と2.9倍。

新潟県は、82,000円が、185,000円、259,000円と3.1倍。

岩手県は、76,000円が、200,000円、253,000円と3.3倍。

福井県は、78,000円が、200,000円、246,000円と3.1倍。

長崎県は、68,000円が、156,000円、243,000円と3.6倍と並ぶ。

こうした自治体における負担は、当然、維持管理更新費だけでなく、実際にはストック額についても考えていかなければならない。グラフの単位を見てもらえば分かるが、維持更新費の単位が千円であるのに対し、ストック額の単位は十万円になっている事から考えれば、このストック額の影響の方がむしろ大きなインパクトを与える事が分かる。

この人口1人当たりのストック額についても2050年の数字でランキングでワースト10を見ると、最も影響が大きいのは、島根県で、2010年に12,300,000円だった1人当たりのストック額は、2030年に15,200,000円、2050年には20,200,000円と1.6倍にまで膨らむ事が想定されている。

以下、秋田県 9,600,000円が、12,600,000円、18,100,000円と1.9倍。

高知県10,600,000円が、13,000,000円、17,400,000円と1.6倍。

北海道10,300,000円が、12,200,000円、16,400,000円と1.6倍。

新潟県 9,400,000円が、11,300,000円、15,000,000円と1.6倍。

鳥取県10,000,000円が、11,600,000円、14,600,000円と1.5倍。

岩手県 8,800,000円が、10,700,000円、14,300,000円と1.6倍。

徳島県 8,800,000円が、10,600,000円、14,100,000円と1.6倍。

青森県 8,000,000円が、10,000,000円、13,800,000円と1.7倍。

山形県 8,600,000円が、10,400,000円、13,700,000円と1.6倍と並ぶ。

基礎自治体でも公共施設の統廃合が大きな課題になる

これは決して都道府県レベルの話という訳ではなく、当然、市区町村でも同様な問題が起きている。それぞれの基礎自治体においても、同様にこうしたデータを準備しながら、自治体における社会的基盤、公共施設などについて、データに基づく戦略的な計画が求められるようになる。その具体化においては、費用の確保、効率的な維持管理・更新の方策など、さらなる検討が必要になる。

冒頭で笹子の例を出したが、社会基盤ストックの維持管理や更新が適切に実施できない場合は、こうした構造物の機能や安全性は低下するため、自治体なども計画的な維持補修や長寿命化等によりどうやって維持管理費や更新費の平準化を図るかが重要になる。

また、その際には、将来の都市または地域の持続可能な成長や魅力の向上等をはかる必要があり、単純に更新を行うだけではない社会基盤の維持管理と更新のあり方に関しても積極的なスクラップアンドビルドや統合といった戦略が必要になる。

その際には、必ずしも官だけで対応するのではなく、むしろPPP(Public Private Partnership)など民間活力の活用、連携といった手法など、これまでの常識にとらわれない発想やイノベーションが求められる。

私自身も、自治体コンサルタントとして、全国の自治体とPFI(Private Finance Initiative)はじめPPPの仕組みの提案などの仕事をするが、今後は、自治体現場にこそこうした事例も含め、積極的に知恵を出していく必要がある。

外部のコンサルなどを使う方法もあるが、本来的には、役所と議会が現実にさらされている課題を正確に認識し、また将来を見据えた上で、課題解決の策を真剣に考えていく必要がある。

4年に1度、自らの街に、優秀な人材を議会に送り込むチャンスである。是非、有権者の皆さんには、真剣に考え、取り組んでもらいたいと思う。