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本当の「政策通議員」は誰か? 議員立法発議数ランキング

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

「立法府」なのに、「議員立法」提案者はごくわずか?

先週、国会議員の国会での本会議・委員会での質問、文書質問である質問主意書、そして議員立法といった国会活動についてデータから分析し、こうした活動をまったく行っていない議員に注目したコラム『国会質問も議員立法も質問主意書もない「オールゼロ議員」、64人全氏名を公開!』が、各種媒体で計5,000を超える「いいね!」や「RT」をいただくなど多くの反響があった。

今回は、こうした国会議員の活動の中でも、とくに大きな役割である「議員立法」に焦点を当てて、紹介していきたいと思う。

国会の役割として「立法府」と習ったのは懐かしいが、この「立法府」として国会内で法律案を自ら作り提案している議員は、実は少ないということを知っているだろうか。

衆議院の議員定数480人、参議院の定数242人の中で、2014年の通常国会である186国会において、議員立法を提案した議員は、衆議院106人、参議院に50人しかいない。

議員立法発議者として名前を連ねている議員でも、国会全体722人の中で156人と21.6%でしかないのだ。この全ての議員が必ずしも議員立法の実務に関わっているわけではないことを考えると、「立法府」と言われながらも、実際に議員立法に携わっている議員は、わずかだという事が分かるのではないだろうか。

ただ、そうは言っても、議員立法発議者として名を連ねている議員である。

今回は、こうして議員立法発議者に名前を連ねる議員たちを仮に「政策通議員」と位置づけながら、2014年の通常国会である186国会で議員立法を提案した議員を見ていく事にしよう。

衆参とも議員立法数減少。法案成立は、たった4件

今回対象となった186国会において、衆議院で提案された議員立法は46本。昨年の通常国会である183国会時の49本から3本減った。参議院においてはもっと少なく186国会で29本。衆議院同様、183国会時に32本だったものが3本減った。

衆議院提出の新規46法案の審議結果についても紹介しておくと、その内、衆議院で10件が否決、11件が継続、1件が未了、参議院で3件が継続、3件は撤回となっており、成立したのはわずか18件だった。

参議院も紹介しておくと、新規提出法案29件のうち、参議院で6件が継続、20件が未了、衆議院に行ったものは全て成立したが、成立はわずか3件だった。

提出自体は閣法の81件と比べても、議員立法が75件というのは多い印象だが、閣法はその内79件が成立している事と比較すると、実際に法律になる議員立法は21件と、まだまだ少ない事が分かる。

さらに踏み込んで見ていくと、そのほとんどは委員長提案による議員立法である事が分かる。実際に議員が代表者として提案された法案は、「9 国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案<衛藤征士郎 議員>」、「14 日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案<船田元 議員>」、「27 国会法等の一部を改正する法律案<町村信孝 議員>」、「33 学校図書館法の一部を改正する法律案<笠浩史 議員>」の4件の衆法しかなく、参法は1件もなかった。

今回対象となった186国会において、衆議院で議員立法提案者として名前を連ねた議員数は延べで192人になるが、1年前の2013年通常国会である183国会では283人が名を連ねていた。ただでさえ少ない議員立法発議者だが、さらにこの1年で91人も減ってしまっている。こうした状況は、参議院も同様であり、183国会で161人だったものが、186国会では109人と52人減少している。衆議院参議院ともに議員立法提案者は、約3分の2にまで減っている。

議員立法最多は、衆議院が畑議員(生活)、参議院が大塚議員(民主)

最後に、こうした数少ない議員立法に携わっている議員について紹介することにしよう。

今回の186国会、衆議院で最も多く議員立法を提案したのは、11回で畑浩治 議員(生活・比東北)だった。2位は9回で吉川元 議員(社民・比九州)、3位は6回で柿沢未途 議員(結い・東京15)となっている。

同様に参議院においては、8回で大塚耕平 議員(民主・愛知)が最多。2位は7回で主濱了 議員(生活・岩手)、3位は6回で荒井広幸 議員(改革・比例)となっている。

以降、NPO法人 万年野党で☆をつけた3件以上の議員立法発議を行っている議員の一覧は、以下の通りとなる。

<衆議院>

1位 畑 浩治 議員(生活・比東北)11件

2位 吉川 元 議員(社民・比九州)9件

3位 柿沢未途 議員(結い・東京15)6件

4位 畠中光成 議員(結い・比近畿)5件

5位 大串博志 議員(民主・比九州)4件

大口善徳 議員(公明・比東海)4件

玉木雄一郎 議員(民主・香川2)4件

中島克仁 議員(みんな・比南関東)4件

原口一博 議員(民主・比九州)4件

10位 井坂信彦 議員(結い・比近畿)3件

大熊利昭 議員(みんな・比東京)3件

小沢鋭仁 議員(維新・比南関東)3件

後藤 斎 議員(民主・山梨3)3件

小宮山泰子 議員(生活・比北関東)3件

階 猛 議員(民主・岩手1)3件

篠原 孝 議員(民主・長野1)3件

高木美智代 議員(公明・比東京)3件

中田 宏 議員(維新・比北信越)3件

古屋範子 議員(公明・比南関東)3件

山内康一 議員(みんな・比北関東)3件

鷲尾英一郎 議員(民主・比北信越)3件

<参議院>

1位 大塚耕平 議員(民主・愛知)8回

2位 主濱 了 議員(生活・岩手)7回

3位 荒井広幸 議員(改革・比例)6回

中西健治 議員(みんな・神奈川)6回

5位 尾立源幸 議員(民主・大阪)5回

小野次郎 議員(結い・比例)5回

福島みずほ 議員(社民・比例)5回

8位 前川清成 議員(民主・奈良)4回

9位 糸数慶子 議員(無所属・沖縄)3回

小川敏夫 議員(民主・東京)3回

谷 亮子 議員(生活・比例)3回

又市征治 議員(社民・比例)3回

松沢成文 議員(みんな・神奈川)3回

山田太郎 議員(みんな・比例)3回

ただ、重要なのは、決してこうした上位のランキングだけではない。ここではさらに、議員立法提案数を増やした「成長議員」にも注目して、紹介して行きたい。

大臣辞任報道だけでなく、国会質問の「質」にも注目を!

衆議院で議員立法提案数を増やした「成長議員」は64人。うち特に成長した議員を紹介すると、+6件と最も議員立法提案数を増やしたのは、議員立法提案数でも最多となった畑浩治(生活)だった。次いで、+4件の畠中光成(結い)、+3件で山内康一(みんな)だった。

参議院で議員立法提案数を増やした「成長議員」は40人。参議院は、衆議院以上に急成長した議員が多かった。+7件と最も議員立法提案数を増やしたのは、大塚耕平 議員(民主)、次いで+4件で、主濱了 議員(生活)と福島みずほ(社民)、さらに+3件で、糸数慶子 議員(無所属)、尾立源幸 議員(民主)、中西健治 議員(みんな)、松沢成文 議員(みんな)、山田太郎 議員(みんな)、の5人が並んでいる。

ランキングにすると、どうしてもその上位の議員に目が集中する。しかし、議会の活性化という側面から考えれば、是非、こうした、国会内での活動を活性化させた「急成長議員」にも目を向けてもらいたいと思う。

『政策通議員』という言葉をよく目や耳にするが、実際にどういう議員が法律案の作成から携わっているのか、どの議員が作った法案が、実際に成立し、法律として機能したのかなど、是非、今後は、さらにこの『議員立法』に注目して見てもらいたい。

※今回の議員の所属政党については、186国会(2014年通常国会)時点のもの

NPO法人 万年野党では、今回紹介した様な「政策通議員」と、政策談義を行う場として、「政策カフェ」を実施している。今月は、10月29日に実施し、すでに井坂信彦 議員(維新)、後藤祐一 議員(民主)、玉木雄一郎 議員(民主)の参加が決まっている。

是非、こうした場で、若手政策通議員の実力に触れて頂くとともに、幅広い皆さんが、政策について議論する場にしてもらえればと思う。

また、NPO法人 万年野党では、この間紹介している活動データによる評価だけでなく、国会での質問の「質」の評価についても実施している。

「質」の評価は、有権者のみなさん、さらには未成年のみなさんにも参加いただける様にしている。

大臣辞任などばかりに報道が偏る現状だが、今国会にはどの様な政策課題があるのか、また、どういった政策議論が行われ、どの議員が、国民のために「質」の高い質問をしているのかと、みなさんに評価してもらいたいと思う。

是非、こうした取り組みにも参加してもらいたい。

*政策カフェ

「政策カフェ」は、政策通の政治家、政策に関わる専門家(研究者・ジャーナリスト・官僚等)、政策に関心を有する経営者・ビジネスマン等が、党派や立場を超えて、ドリンクを片手に、料理をつつきながら、政策談義・意見交換をできるような場を作ろうとの企画です。月1回(時間帯は18~20時半予定)、丸の内、虎ノ門近辺にて、出入り自由で政治家、専門家等が気軽に立ち寄ることのできる場を設けたいと考えています。

◇日時: 10月29日(水)18時~20時半

◇場所: MARUNOUCHI CAFE 倶楽部21号館(丸の内)

◇来場予定者:

井坂信彦(衆議院議員・維新)

後藤祐一(衆議院議員・民主)

玉木雄一郎(衆議院議員・民主)

※ほか政策通国会議員調整中

原英史(株式会社政策工房社長)

磯山友幸(経済ジャーナリスト)ほか

◇募集人数: 30人限定

◇料金

一般参加者: 8千円

NPO法人「万年野党」会員および国会議員(ゲスト以外): 3千円

万年野党の会員(現在会費3千円)への入会は<http://yatoojp.com/join/>から

※ 料金にはドリンク(ビール・ワイン・ソフトドリンク等)・食事を含みます。

◇主催: NPO法人万年野党

◇参加申込み:  詳しくは、NPO法人 万年野党ホームページhttp://yatoojp.com/2014/09/26/1416/>をご覧ください。

*187国会版『国会議員「質問力」評価』

国会議員の政策活動に関する情報は十分ではなく、メディアの報道は政局に終始しがちです。

選挙において国民がより適切に一票を投ずるためにも、国会議員の政策活動について、より的確な情報分析・提供が重要と考えます。

このため、全国会議員を対象に『187国会版 国会議員「質問力」評価』を行うこととしました。

今回実施する「国会議員質問力評価」では、同僚の「国会議員」や「官僚・元官僚」、「政策専門家」に加えて、会員(有権者等)のみなさんにも評価いただきます。みなさんが、動画やテレビ中継、傍聴などでご覧になった、国会議員の質問を評価し、1件からで結構です。評価は、1~5点で評価し、評価ポイントをコメントしていただく形で行っています。

NPO法人 万年野党ホームページhttp://yatoojp.com/2014/09/26/1414/>をご覧いただき、評価シートをFaxでお送りください。

評価結果は、各国会議員につき、上記1)~4)の評価結果(平均点数など)を整理し、整理したものから随時公表していく事を予定しています。

なお、評価については、それぞれの被評価者ごとに、評価者数と平均評価点のみを公表し、誰が何点をつけたかは非公開とします。

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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