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新NISAで積立てるべきはS&P500か全世界株式(オルカン)なの?

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
株式市場のブルとベアのイメージです(提供:イメージマート)

2024年1月から新NISAがスタートしますが、既に1月からの積立をどうするか決めている人がチラホラ出ているようです。ネット検索すると、アメリカの株式指数の1つであるS&P500に連動する外国株式インデックスファンドや、MSCIオールカントリーワールドインデックスという株式指数に連動する外国株式インデックスのいずれかを推す意見が多いようです。これから新NISAを始める人は、何に注意して投資すればいいのでしょう。

■分散投資をしていても大幅な価格下落局面はある

投資の王道は分散投資と言われます。王道とは何かということを議論はしませんが、分散投資の反対側には●●株を一点買いするような一点突破型の投資があるかもしれません。分散投資のメリットは一点買いに比べると、大幅な価格下落が抑制される点にあります。

とは言え、リーマンショックやコロナショックのような経済的な危機が直撃すると、30~50%の下落を被る場合もあります。世の中的には下落は一時的であり、長期保有すればいずれ価格は戻るという意見が大勢です。筆者もそう思います。

■資金使途は利用時期を確認して投資すべし

ただし、資金を使う時期が明確に決まっている人で、株式市場にお金を投じる場合は注意が必要です。子供の教育資金を投資信託で積立てています!住宅購入の頭金をインデックス投資信託で運用しています!色々なアイデアで投資をするのはいいことです。ただし資金の必要時期の1~2年内に株式市場が暴落した場合、他の資金の手当てをすることも考えておく必要があります。

老後資金のように、しばらく年金で慎ましく暮らして、市況が回復するまで待つという戦略が、教育・進学や住宅購入というライフイベントには合いません。教育資金が回復するまで自宅浪人してもらう、住宅購入を延期するという選択は可能性としてはあっても現実的ではありません。

■知識という保険をかけておこう

幸い、教育資金は奨学金や教育ローンという手当があります。住宅購入は頭金ゼロで諸費用も含めて全額住宅ローンを借りるという人もそれなりにいます。ただ、「積立投資はリスクが低い(と世間で言われている)から、マイナスになることはない(らしい)」のは本当でしょうか?

本当なら、国が公的年金でいくらでも運用してくれそうですね。実際には、資本主義経済は長期的に右肩上がりに成長するというのは、理論的にはという注釈が付きます。そして筆者を含む世界中の投資家は長期的な経済成長を期待して投資しています。ただし、何事にも例外があります。

■世界はあなたのために存在しているわけではない

例えば、最近のリスク要因としては、戦争や核兵器の使用があります。あなたの人生設計とは無関係に世界中で何らかの事象が起こり得ます。

しつこいようですが、預貯金の元本が額面上は減ることが無い一方で、株式投資を含む投資信託での資産運用は価格変動の可能性が一緒についてきます。

■その情報は誰が得するの?

ネットで投資銘柄を検索する場合は、情報発信者が何のために情報を発信しているのかを見極める必要があります。例えば、ステマ法が施行されましたがアフィリエイターが証券会社の口座開設を促すために情報を流しているのかもしれません。情報商材を販売するために情報を発信しているのかもしれません。

■迷ったらファンドを分けよう

話を戻しますと、S&P500に投資するか、全世界株式に投資するかを論じるのは、あまり意味がありません。1つに絞る必要はないのです。迷ったら両方に投資すればいいのです。

過去の価格推移を見る場合には、どの期間を切り取ったかで見え方が変わります。販売側の見せ方も変わります。

過去の期待リターンは全世界株式よりも、S&P500の方が高かったのかもしれません。ただ、過去の傾向が未来永劫続くのかはわかりません。どこかで逆転するかもしれませんし、他にもっと優秀なインデックスファンドが出てくるかもしれません。

■S&P500や全世界株式よりも優秀なファンドを探そう!

インデックスファンドにも弱点はあります。それは成長著しい企業への投資ができる反面、「著しい」と言えるほどの成長はしていない企業にも資金が投じられます。

実際に、最近出てきているファンドには、株式指数の上位銘柄に絞って投資できる、アクティブ型のインデックスファンドが出てきています。筆者が調べたところそのようなファンドが複数あります。証券会社などの情報を調べていくと、辿り着く人もいるかもしれません。

アクティブ型のインデックスファンドの注意点は価格変動リスクが、インデックスファンドよりも大きな点です。すなわち、大幅な下落リスクも内包しているということです。

自分なりにファンドを絞りこんだら、ファンドの期待リターンを価格変動リスクで除したシャープレシオを比較してみるのもファンド選定の判断の1つです。この数値が大きな方が、将来的に運用成果が大きくなる可能性が高いと考えられます。シャープレシオを比較する場合はなるべく長期で考えることが大切です。

1年や3年のパフォーマンスがよいファンドはいくらもあります。10年、20年スパンで比較して初めてファンドの実力がわかりますが証券会社のデータは1年、3年、5年くらいしか出ていません。ファンドの発売から日が浅いと過去のデータがとれませんが、株式指数の過去の価格データはネットで検索すれば無料で取得することも可能です。

色々書きましたが、投資には失敗がつきものですし、失敗を経験に置き換えて成長する姿勢も重要です。S&P500、全世界株式の二者択一にせずに、俯瞰してファンドを探す一助にしていただければ幸いです。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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