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コロナでわかった医療保険が必要な人、不要な人

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
医療保険のイメージです。(写真:イメージマート)

2022年9月26日から新型コロナウイルス感染症になった場合に保険会社から支払われる入院給付金の支払い要件が変更になりました。具体的には、みなし入院と呼ばれる、ホテルや自宅での療養に対する支払いがなくなり、実際に入院した人、65歳以上の高齢者、重症化リスクのある人、妊娠中の人、に限定されました。

■顕著に増えた入院給付金の請求

筆者の保険関連の顧客の中には、医療保険に加入している人がいます。2021年と2022年は顕著に入院給付金の請求がありました。給付の理由は保険会社から共有されることはありませんが、顧客に直接話を聞くと総じてコロナに感染し自宅療養となったと言います。

保険の実務として、医療保険の給付金請求の場合は、病気とケガの可能性がありますから、本人に確認しなければ請求理由はわかりません。がん保険であれば、がん診断やがん治療となりますので、請求理由はがん一択。など、どの保険に対する請求なのか確認することで、ある程度給付理由は推測できます。

また、本人と話すことが出来なくても、給付金の支払いが10日分であれば、コロナのみなし入院であろうと推測できます。通常の入院ですと、7日、14日という入院日数が多いため、10日分の支払いをもって、コロナによる給付金請求の可能性が高いのです。

■コロナ保険で焼け太りした人は医療保険は不要ではないか?

従来の支給要件では、現役世代や子どもたちの場合コロナに感染することと、みなし入院がほぼイコールです。一人感染すると、家族にも感染が広がるケースが多いため、一家全員分の入院給付金を受け取ったという話も聞きました。

入院日額5000円のプランであれば、5000円×10日で一人5万円。5人家族で25万円の受け取りです。入院日額1万円のプランであれば倍の受け取りとなります。

長期継続して医療保険に加入している人にとっては、初めての給付金請求となり、保険の有効性を感じた人が多かったと思います。一方で、加入して1~2年程度の人の入院給付金は通常は少ないため、加入歴の浅い加入者の給付金請求が多かったことに対して、モラルリスクを感じたことは否定できません。

モラルリスクとは、感染の可能性が高い状態での保険加入、給付金狙いであえて感染する、などの行為です。加入1~2か月での給付金請求はありませんでしたが、コロナに対する保険会社の支払い状況を踏まえて医療保険を見直した人もいるでしょうから、意図したとおりにお金を受け取れた人もいるでしょう。

コロナの支払い要件厳格化の後に医療保険を解約する人がいたら、保険加入の目的としてはよろしくない事態と言えます。

■コロナに備えた医療保険加入は必要だったの?

筆者の保険関連の顧客の多くは、働き方として正社員、公務員の人がほとんどです。その場合、コロナでみなし入院となり出勤停止になったとしても、給料が減ることはありません。自宅療養ですから、入院費用もかかりません。

このような状況ですから、入院にありがちな、給料減額リスク、治療費高額化リスク、など手元の預貯金残高を減らす可能性がありませんでした。

万が一給料が減額となる可能性があっても、有給休暇、傷病手当金など収入を維持、補填するような制度がありますから、保険に頼る必要性がありません。

コロナ以前から医療保険に加入していた人は、想定外の給付となり保険からお金を受取れる体験通じて、保険のありがたみを感じていただいた方が多かったようです。

一方で、コロナに備えて医療保険に加入したいと考えた人の場合には、毎月の保険料を支払ってまで医療保険に加入する必要があったとまでは言えません。

■いつ発生するかわからない特定感染症に備えて医療保険の検討が必要な人とは

結局、正規雇用されている人は、収入が安定しているため、医療保険のニーズが薄いはずです。一方で、自営業、フリーランス、個人事業主、パート・アルバイトなど、働いた分だけ収入を得るような働き方の場合は、コロナで身動きが取れなくなると収入源に直結します。

上記の働き方では、健康保険は国民健康保険のため、傷病手当金はありません。パート・アルバイトの場合、社会保険の扶養の範囲であれば、同様に傷病手当金はありません。

となると、収入の上下が大きい働き方や非正規雇用の立場の場合に、今回のような特定感染症に備える医療保険の加入ニーズがありそうです。

今回、コロナの感染拡大を通じて、未知の病原体が発生した時の対応がどのようになるかがわかりました。世界では定期的に新たなウイルスや危険な病状の疾病が拡散・収束しています。次に備えるという意味では、一時的な隔離を含めた保険のプランニングと一時的な就労不能に備える所得補填対策を検討する必要があるでしょう。

ただ、正規雇用の人は、あえて医療保険に加入する必要性は薄く、個人で働く人と非正規雇用の人は、加入の必要性が高いと考えます。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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