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マイホームの三重苦。金利上昇、価格上昇、家賃上昇。買っても借りても苦しい生活

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
画像はイメージです。(提供:イメージマート)

2022年7月からメガバンクの住宅ローン金利が上昇しました。金利が上昇すると値下がりするはずの住宅価格は、2022年初から比べて上昇しています。住宅価格の上昇と金利の上昇が続けば、一般的な世帯では家を買うことが難しくなります。住宅ローン金利の変化が家計に与える影響を考えます。

◆不動産価格指数にみる不動産価格の動向

不動産価格を相対的に示す指標として国土交通省の公表している不動産価格指数を確認します。(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001488481.pdf)

住宅総合(全国): 2016年1月106.3に対し、直近の2022年3月は128.6と21%上昇しています。

戸建住宅(全国):2016年1月100.2に対し、2022年3月は112.0と12%上昇しています。

マンション(全国):2016年1月126.0に対し、2022年3月は178.1と41%上昇しています。

住宅全体、戸建て、マンション、いずれも値上がりしていると言えます。特にマンションの値上がりが顕著です。

◆メガバンクによる住宅ローン金利上げの影響

2022年7月からメガバンクの住宅ローンでは、10年固定金利が0.05%~0.15%上昇しています。住宅ローン金利が変化すると、住宅ローンの毎月返済額、総返済額も変化します。

借入期間を35年に限定して計算してみます。金利が0.05%上昇すると、毎月の返済額と総返済額が約1%上昇します。金利が0.1%上昇すると総返済額が約2%上昇、金利が1%上昇すると総返済額が20%上昇すると考えればいいでしょう。金利上昇のパーセントに対して、20倍の返済額増となると覚えておくとよいでしょう。

つまり、0.05%の金利上昇で毎月返済額と総返済額は約1%上昇し、0.15%上昇すると毎月返済額と総返済額は約3%上昇します。3000万円の住宅ローンであれば、金利0.01%の上昇は総返済額が35年間で54,000円増える計算です。0.01%くらいなら大したこと無いように見えますが、今後さらなる金利上昇圧力がかかると考えると、影響は大きくなります。

◆物件価格が10%、金利が0.5%上昇すると?

物件上昇に伴い、住宅ローンの借入額が3,300万円になり、金利が0.5%と上昇するとどうなるでしょう。毎月の返済額、ローンの総返済額ともに約20%上昇するのです。

物件価格の上昇と金利上昇のダブルパンチで、住宅費用が増えていきます。では、賃貸にすればよいのでしょうか。

◆家賃相場も上昇している

家賃相場も上昇傾向にあります。全国賃貸管理ビジネス協会の資料によると、2016年1月の総平均賃料(全国)は54,569円から2022年5月の総平均賃料は55,288円へと1.3%の上昇。

東京カンテイの資料では、2016年1月度の首都圏地域の分譲マンションの平均賃料は2,646円/平米から、2022年5月度は3,333円/平米と26%上昇しています。

LIFULL HOME’Sの住まいインデックスによると、東京都の標準的賃貸マンションは3年間で3.74%上昇とあります。

どの資料も、基準や地域は異なりますが、家賃もおおむね上昇していると言えます。

不動産価格、金利、家賃それぞれが上昇する三重苦といってもいいような状況です。

◆家計と老後資金への影響

買っても借りても住居費が上昇しますから、家計が苦しくなることは確実です。家計のしわ寄せは、子供の人数、子供の教育費、老後資金など日常生活以外にも波及します。

家賃が上昇すると考えれば、老後資金は2000万円どころでは足りないでしょう。

◆国ができることは?

今の状況で日本政府としてできることはあるのでしょうか?全方位的な対策を期待する場合、万能な対策は無いと言っていいでしょう。金利を上げれば不動産価格は下落するかもしれませんが、住宅ローンの返済額が不動産価格の下落以上に増える可能性があります。今金利を上げれば、中小企業の借入金負担が重くなり、経営を圧迫することは確実です。誰かを助けるために、他の誰かにマイナスの影響が及ぶ。このような考え方が受容されない限り、家計を楽にする政策は期待できそうにありません。

今後、さらなる自衛が求められるでしょう。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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