※タイトルを変更しました(2021/6/22 9:50)

企業型確定拠出年金やiDeCo、つみたてNISAなどで投資信託を選んだことのある人は、どうやって投資の割合を決めたらいいのか悩んだ経験のある人もいるでしょう。日本人は学校教育の影響か「正解」にこだわります。正解があると信じ、教えてほしいと考える人がいます。しかし、投資に限りませんが、試験問題と異なり社会には唯一の正解はありません。今回は、どのようにして銘柄を絞り込んでいくのか、あるいは絞らずに分散して投資するのか、といった考え方について相談事例を参考にお伝えします。「バランス投信でいいでしょうか?」と質問されたAさんの事例です。

確定拠出年金のラインナップは金融機関次第

企業型確定拠出年金やiDeCoは運営管理機関という位置付けの金融機関によって、投資可能な商品ラインナップが異なります。今回の相談でも、金融機関系列の商品がずらり。企業型確定拠出年金とiDeCoは運用期間中の非課税やスイッチング機能があり、類似制度のつみたてNISAとは異なる強みがあります。

ただし、金融機関ごとに商品ラインナップが異なるため、「金融機関の収益貢献のための商品提供」に見えてしまうことが多いのが残念なところ。何のためにこの商品が選ばれたのかという質問への答えが、「いい商品だから」ではなく「系列商品」だからというのでは投資マインドが高まらないのではないでしょうか。

確定拠出年金の投資可能銘柄が10~20程度だとすると、系列外の商品が入り込む余地がありません。ここは政府主導で同種ファンドは複数選択肢を用意するような制度設計に変更したほうが、投資コストの削減と、より投資効果の高い商品の選択が可能となり投資家にメリットがあるでしょう。

確定拠出年金はバランス重視、つみたてNISAは株式投資重視

iDeCoや企業型確定拠出年金は、商品数こそ少ないですが、投資可能な分類がつみたてNISAより豊富です。預貯金、保険といった元本確保型商品、債券投資信託、株式投資信託、不動産投資信託、コモディティ投資信託、資産複合型投資信託など、バランス良くラインナップされています。

一方で、つみたてNISAは株式投資信託がほとんどですから、安全な運用を希望する場合には、つみたてNISAを選ばないほうがいいでしょう。

資産配分の参考となる公的年金と海外の大学基金

資産配分を教えてほしいという要望は多いのですが、実際には正解はありません。最もわかりやすい、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式に25%ずつ分配すると非常にわかりやすいですが、便宜的すぎるという指摘もあるかもしれません。

しかし、公的年金を運用するGPIFでは従来、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%の配分で投資していましたが、現在は、国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%の割合に変更しています。

このような運用割合の変更を適宜行う必要はありますが、公的年金は2001年度から2019年度までの19年間に年率平均2.27%(名目運用利回り)を実現しています。同様の資産配分にするという選択は効果的ではないでしょうか。

他にも、米国のハーバード大学やイエール大学などは大学基金の運用に優れており、毎年10%程度の運用利回りとなっているところもあるようです。積極的な運用を目指したい人は、これら運用に力を入れている大学基金のポートフォリオを調べてもいいでしょう。ただし、参考にならないほど積極的に投資されているので、プロの本気を見てみる程度と考えたほうが良さそうです。

ファンドの情報をまとめる

さて、筆者が相談者から確定拠出年金関係の相談を受けるときには、全投資銘柄を数値化するところから作業をスタートさせます。

数値をまとめることで、ようやく運用成果の比較が可能となります。数値まとめの際はファンドのレポートではなく、日本経済新聞社の提供する情報など運用する側ではない機関の情報を用います。

例えば、ファンドごとに1年、3年、5年、10年、設定来のリターン、リスク、シャープレシオを並べてみれば、ファンドの良し悪しは一目瞭然です。

例えば、過去のリターンがプラスで、シャープレシオが1を上回っていれば、そのファンドに投資した場合に運用成果がマイナスになる可能性は、リスク=1標準偏差と考えれば、15%程度であったと考えることができます。

アクティブファンド間の比較であっても、アクティブファンドとインデックスファンドの比較であっても、シャープレシオを比較することで、どちらがパフォーマンスに優れているかを定量的に把握することが可能です。

短期比較と長期比較

数値をまとめたデータは、短期と長期で比較することでも傾向が把握できます。コロナショック以降に組成されたファンドや日銀や各国銀行の量的緩和以降の短期間であれば運用が好調なのは当たり前です。大切なことは、長期でも投資成果が出ているかどうか。息の長いファンドはそれなりに実績が出ているものです。2000年以前に投資が始まっているファンドは投資商品として生存できている点をプラスに評価することもできるでしょう。

運用期間が短すぎるファンドは数値化が困難なため、選定対象に含めない措置か、マイナス評価とする。長期運用を実現しているファンドは加点評価にするなど、長期投資に沿ったファンドであることを評価するという考えもあります。

一本足打法とタコ足打法

SNSを見ていると、S&P500インデックスやMSCI関係のインデックスに全集中で投資している人もいるようです。いろいろな考えがあって、一本足打法にするのもいいのですが、勉強も含めて考えるなら、ファンドも分散が必要でしょう。

例えば、日本株式であれば、日経225とJPX日経400は今後どちらが伸びるかわかりませんから、両方のインデックスファンドに投資することで、数年かけて違いを観察することが可能です。

また、MSCIインデックスであっても、ワールド、オールカントリー、エマージングなどそれぞれ投資してみることで、世界経済の成長や新興国の成長を比較することも可能です。また、日本株式と外国株式は為替変動の影響も出てきますが、市場の成長を比較するという意味では、数値をまとめることで違いがわかります。

今回の相談の場合は、10種類のファンドに積み立てることになりました。一本足打法に対してタコ足打法です。選ばなかったファンドは期待リターンの低い国内債券投資信託、先進国債券、リターンに対して価格変動リスクが大きな新興国債券投資信託、インデックスファンドより成果の出ていない日本株のアクティブファンドです。

選んだ銘柄は、海外債券のアクティブファンド、日本株のインデックスファンド(TOPIX、日経225、JPX400)、インデックスと同等の成果を出している日本株のアクティブファンド、外国株式インデックスファンド、外国株式アクティブファンドです。

今回は様子見のため、投資対象に含めていますが、1~2年後のパフォーマンスで運用成果が期待ほど出ていなければ、積立投資の対象から外し、かつ資産自体の売却も視野に入れることになります。

ハイイールド債券、海外のREIT、コモディティなどもあるとラインナップとして良かったのですが、こちらの都合でファンドが増えるわけでありませんので、選べるファンドのみで比較しました。

不定期の見直し

確定拠出年金のいいところは、投資対象の良し悪しによっては積み立て対象を柔軟に変更させたり、過去に買い付けた資産を売却し運用成果に優れた商品や、暴落した直後の商品を買い付けるなど、選択肢が多い点にあると考えます。

この点は、つみたてNISAに無い特長であり、つみたてNISAの運用は失敗した場合の見直しが難しいと感じるところです。

皆さんの運用先はどうなっていますか?まずは、ファンドの数値まとめから始めてはいかがでしょう。