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地震に備えて加入した保険の社名や証券番号おぼえてる? 今すぐできる情報管理術

高橋成壽お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA
画像はイメージです(提供:Hisa_Nishiya/イメージマート)

※記事タイトルと画像を変更しました(2021年2月19日11時)

2021年2月13日に福島と宮城を中心とした最大震度6強の地震が発生しました。改めて自然災害への備えを考えている方もおられるでしょう。日本では北海道から沖縄まで、何らかの自然災害に見舞われる可能性と隣合わせの生活です。突然発生する地震、津波、噴火、竜巻、土砂災害。事前に発生を予見できる可能性が高いものとして台風、洪水、内水氾濫、自然災害に起因する火災などがあります。

被災したとき頼りになるのは、火災保険や自動車保険などの損害保険です。いざという時迅速に保険金・共済金を受け取れるよう、給付申請に必要な加入情報の保管方法について考えます。

地震以外の自然災害をカバーするのは火災保険

災害が起きて避難するときは着の身着のままであることもあるでしょう。お財布と携帯電話以外何も持たずに自宅を離れざるをえない場合もあります。(筆者は20年以上前に台湾の大地震に遭遇しました。その際は、余震に怯えながら、停電し真っ暗なホテルの部屋を脱出し、余震のなか手探りで階段を伝い、命からがらロビーに移動しました。走馬灯体験し一時的にパニックになりましたが、財布と携帯電話とパスポートのセットは持ち出せていました。)

避難当初は、情報の塊である携帯電話(スマートフォンを想定)だけあればいいかもしれません。しかし、災害が落ち着き気持ちも整ってくると気になるのは生活再建のお金です。

大規模災害が発生すると、公助として罹災状況に応じてお金の給付を受けたり、住まいの提供を受けることができます。支援金は最大300万円(被災者生活再建支援制度)となり、家屋の修復や解体、仮住まいへの引っ越しなど、色々お金が必要です。家が壊れたら住宅ローンや家賃の支払いはどうなるのか、疑問や不安が出てくるでしょう。

被災後の生活復旧で必要なのは物資とお金です。お金の自助努力としては、民間の保険や共済から支払われる保険金・共済金があります。普段は無駄に思える保険の掛け金は、いざというときに十分な資金を受け取ることに繋がります。火事のときの住宅再建用の保険と思われているフシのある火災保険は、火事に限らず多くの自然災害による家屋の損害を補償します。昔の契約ですと火事の補償に限定されていることもありえますが、最近は風、雹(ひょう)、雪、水害など、補償の有無を選ぶことができます。地震保険は地震だけでなく、津波や噴火も補償します。

契約の際は、ケチらずに可能性のある自然災害は網羅的にカバーするプランが無難です。また、被災時の自己負担である免責金額はゼロに近いほうが、保険料は少し高くなりますが、いざというとき満額の保険金が支払われると思えば安心です。

保険金請求に必要な保険会社名と証券番号

保険の内容を覚えていない人でも、保険証券がどこにあるかは覚えている人が多いのではないでしょうか。しかし、いざというときにかさばる保険証券をまとめて持ち出す余裕はありません。一般的な保険金請求で必要な情報はいくつかありますが、緊急時に最低限必要な情報は、「どこの保険会社に加入しているか」です。

保険会社が判明すれば、保険会社が設置する災害時のコールセンターに電話することで、本人確認の実施から保険内容の照会ができます。加入者本人だと確認できれば、そのまま保険金請求の手続きを開始することができます。

したがって、緊急時に保険証券を避難所に持ち運ぶ必要はありません。ただし、保険の加入状況がまったく手元に情報がないと、いざという時にどこの保険会社に連絡すべきかさえも、わからなくなります。

例えば、損害保険会社は合併を繰り返しており、都度会社名が変わります。昔契約した保険会社の今の名前がわからない場合もあります。日本興亜損害保険(現在:損保ジャパン)、日動火災海上保険(現在:東京海上日動火災保険)などが今どのような名前か分かる人は多くないでしょう。

そもそも家を買う時、車を買うときにはすすめられた保険に加入するだけで保険会社名で選ぶことは稀でした。いずれにせよ、当時の保険会社名と証券番号さえ控えておけば、保険金請求は行えます。ですから、保険証券の持ち出しは難しくても、メモを身近なところに残しておくことは大切です。

万が一、まったく保険会社名がわからない場合は、本人および親族が日本損害保険協会の「自然災害等損保契約照会制度」を通じて確認することができます。ただし、皆が損害保険協会を利用していては手間と時間がかかるだけです。この制度の利用を前提に何も準備しないことを決めてしまうのはおすすめしません。

保険情報管理のおすすめは保険アプリかクラウド

せめて保険会社名と証券番号はいつでも確認できるようにしておきましょう。そこで便利なのは保険証券のデジタル保存です。スマホのカメラで写真を撮ってある人もいるかも知れませんが、次の2つがおすすめです。

1つは保険会社や保険代理店、保険サービス会社の提供する保険アプリです。保険証券の写真を保険アプリに保管すると、画像解析ソフトが保険の内容を把握し補償内容を明示することもできます。筆者は損害保険会社の提供する保険アプリに火災保険の情報を保管しています。

ただし、保険アプリの仕組みを見ると、保険販売につなげるような導線設計になっていることが多いものです。そのため不足している保険の情報など、営業的なお知らせをしてくる可能性もあります。そういった情報が煩わしいと感じる人には不向きです。保険アプリはいくつかありますので、アプリ提供者とサービスを比較することをおすすめします。

保険アプリが不安な人は、GoogleDriveやOneDriveなどのクラウド上に保険会社と証券番号を残す方法もあります。個人的には、Googleスプレッドシートに保険会社名と証券番号をまとめておくか、Gメールなどセキュリティに不安のない状態で自分宛てに保険会社と証券番号を送付しておくと良いのではないかと思います。GoogleKeepであれば保険証券の写真を保管した後、画像内の文字をテキストに起こしてくれる機能がありますので、後で検索することを前提に考えると、利用価値は高いと言えます。※画像から上手く文字起こしができない場合もあります。

個人を特定されるような情報を保管しなければ、証券番号を知られただけで勝手に解約されるなどの事態は起こりません。保険会社と証券番号の保存はあくまで自己責任ですが、クラウドに保管しておけばいつでも照会可能ですし、検索すればすぐに見つかるためいざというとき便利です。

ただし、特定の保険会社や自社系列の保険会社しか契約しないという主義の人は、保険会社を確認する必要すらないので、保険アプリの活用や、クラウド保存という手間を掛ける必要ないでしょう。

自動車保険については、車両保険に加入していると自然災害を補償してくれる場合がありますので、火災保険だけでなく、車両保険も保険会社と証券番号は控えておくとよいでしょう。これからの時代は、情報をデジタルでも保管しておくことで、いざというときの迅速なサービス享受に繋がります。火災保険や自動車保険については、家族が代わりにデータを管理するのも有効です。契約者が高齢である場合は、周りの方に委ねてもいいでしょう。改めて、保険加入で最も大切なことは、支払った保険料の対価である保険金を受け取ることです。保険金請求には時効もあるため、被災された場合は忙しい最中ではありますが請求することをおすすめします。

お金の先生/C FP/証券アナリスト/IFA

日本人が苦手なお金を裏も表も解説します。お金の情報は「誰がどんな立場から発信したのか見極める」ことが大切。寿FPコンサルティング、ライフデザインセンター代表。無料のFP相談・IFA相談マッチングサービスとして「ライフプランの窓口」「住もうよ!マイホーム」「保険チョイス」「アセマネさん」を運営。1978年生神奈川県藤沢市出身。慶応大学総合政策学部卒業後、金融関係のキャリアを経て有料FP相談を開始。東海大学では非常勤講師として実務家教員の立場から金融リテラシー向上の授業を担当。連載:会社四季報オンライン。著書:ダンナの遺産を子どもに相続させないで。メディア出演、メディア掲載多数。

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