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【女子野球】クラーク仙台とウェルネス宮城が仙台六大学の新人戦決勝前に試合

高橋昌江フリーライター
大学野球の新人戦決勝前に試合を行ったクラークとウェルネスの選手たち

 宮城県の高校女子野球部が6日、仙台六大学野球連盟の秋季新人戦決勝前に試合を行った。クラーク記念国際高校仙台キャンパス(以下、クラーク仙台)と日本ウェルネス宮城高校(以下、ウェルネス宮城)が東北福祉大学野球場で対戦。午後は東北福祉大対仙台大の新人戦決勝をスタンドから観戦した。

■仙台六大学野球連盟が高校女子硬式野球部を招待

 宮城県で女子硬式野球部がある高校は2校。クラーク仙台は2018年4月、東北地方初の高校女子硬式野球部として誕生した。ウェルネス宮城の女子硬式野球部は昨年、部員1人で創部され、2期生が入部した今年、本格的に活動をスタートさせた。今年5月には「東北女子硬式野球連盟」が発足。来春には仙台大に東北地方で初めてとなる大学の女子硬式野球部ができるなど、東北地方でも女子選手のプレー環境が広がってきている。仙台六大学野球連盟の菅本昭夫事務局長は「女子野球の認知度を高め、裾野を広げたい」と、男子学生がプレーする大学野球の試合前に女子高校野球の試合を行う「招待試合」を初めて企画した。

 ウォーミングアップやキャッチボールを終えたウェルネス宮城の選手たちはロングティーで打撃練習を行った。打球の先にいたのは東北福祉大の3年生部員たちで、球拾いでお手伝い。両校のシートノックでも複数の部員が補助に入ったり、グラウンド整備をしたりと試合運営をサポートした。

東北福祉大の部員はウェルネス宮城のスタッフに中学時代の指導者がいたため、ロングティーの球拾いを手伝い
東北福祉大の部員はウェルネス宮城のスタッフに中学時代の指導者がいたため、ロングティーの球拾いを手伝い

大学生がシートノックの補助やグラウンド整備をし、クラーク仙台・橘主将は「ベストな形で試合ができるようにやってくれて感謝です」と話した
大学生がシートノックの補助やグラウンド整備をし、クラーク仙台・橘主将は「ベストな形で試合ができるようにやってくれて感謝です」と話した

 午前10時に始まった試合はクラーク仙台の先発・柴田栞奈が2回1死から5者連続三振を奪うなど、4回まで無安打に抑える好投を見せた。ウェルネス宮城の先発・佐藤優奈は走者を出しながらも併殺に打ち取るなどして切り抜け、4回を終えて0-0と譲らぬ展開になった。

クラーク仙台の先発・柴田
クラーク仙台の先発・柴田

ウェルネス宮城の先発・佐藤
ウェルネス宮城の先発・佐藤

 試合が動いたのは5回。クラーク仙台の6番・小金真愛が左越え二塁打で出塁。犠打で三塁に進むと、暴投で先制のホームを踏んだ。6回には1死二、三塁で内野ゴロの間に加点したクラーク仙台が2-0で勝利した。試合をさばいた仙台六大学野球連盟の審判員は帽子と左胸にある連盟のロゴマークを女子野球仕様のピンク色にしてジャッジした。

審判員はロゴマークをピンク色にしてジャッジ
審判員はロゴマークをピンク色にしてジャッジ

 御年79歳の菅本事務局長は「初めて女子野球の試合を見たが、みんな上手でいいプレーをしていた」と拍手。男子学生に混じってプレーした女子選手や、試合などを報じるニュース映像で女子野球を見たことはあったというが、プレーボールからゲームセットまで試合を見たのは初めてだという。「ピッチャーはストライクゾーンに投げ、バッターは積極的に振っていた。うちの学生より、ゲームが締まっている」と笑った。続く、東北福祉大対仙台大の試合で選手が見逃し三振をすると「女子野球の選手を見習え!(笑)」と一喝する場面もあった。

■大学野球の試合観戦で学び

 試合会場の東北福祉大学野球場は過去3度の全国優勝、10度の準優勝を誇る同大が普段の練習で使っている。今年のドラフト会議では甲斐生海外野手がソフトバンクから、杉澤龍外野手と入山海斗投手(育成)がオリックスから指名され、まもなく、輩出したプロ野球選手は60人になる。春秋の週末は仙台六大学のリーグ戦会場となり、数々の名勝負を繰り広げてきた。かつては楽天・岸孝之投手が東北学院大時代にプロへの階段を駆け上がり、オリックスの26年ぶりの日本一に貢献した宇田川優希投手も仙台大時代に戦ってきた場だ。2019年に全面人工芝に生まれ変わった球場で、大学野球と女子高校野球の交流という新たな歴史を刻んだ。

名勝負が繰り広げられてきた東北福祉大学野球場で女子野球の試合
名勝負が繰り広げられてきた東北福祉大学野球場で女子野球の試合

 ウェルネス宮城の大槻真愛主将は「立派なグラウンドで、いつもとは違う緊張感がある中、プレーできてよかったです」とにっこり。クラーク仙台の橘侑良主将も「慣れない球場でできるのはプラスになります。春の全国大会決勝は人工芝の球場。体験させてもらって、大会のイメージがつきました」と感謝した。

 昼食をとった後、クラーク仙台とウェルネス宮城の選手たちはスタンドで東北福祉大対仙台大の新人戦決勝を観戦した。

スマートフォンにメモを取りながら新人戦決勝を見るクラーク仙台の選手たち。多くの学びを得たようだ
スマートフォンにメモを取りながら新人戦決勝を見るクラーク仙台の選手たち。多くの学びを得たようだ

 1回裏、仙台大は1番・平野裕亮が左安で出塁すると、2番・平川蓮の左中間を破る当たりで一気にホームイン。クラーク仙台の選手たちは「あの打球でかえってくるの!?」と平野のスピードにざわついていた。チームは走塁に力を入れており、「テレビでは映らないベースのまわり方が学びになりました」と橘主将。ウェルネス宮城の大槻主将も「みんな、足が速くて次の塁を狙っていたのですごいなと思いました」と話した。両校の主将をはじめ、選手の多くが大学野球の観戦は初めて。投手のボールのスピードやキレ、打者のスイングや走るスピード、プレーの精度などに見入り、目に焼き付けていた。

ウェルネス宮城の選手たちも真剣なまなざしで大学野球を観戦
ウェルネス宮城の選手たちも真剣なまなざしで大学野球を観戦

 来年、創部6年目を迎えるクラーク仙台の橘主将は「関西や関東の強豪を相手にロースコアで勝ち切ることが目標です」ときっぱり。今年が活動1年目だったウェルネス宮城の大槻主将は「みんなで話し合いながら積み重ね、一つひとつのプレーができるようになり、成長を感じています。来年はヒット数も得点も増やし、元気よく、盛り上がれるチームにしたいと思います」と誓った。

 両校の指導スタッフたちからは「是非、来年もやってほしい」との声があり、菅本事務局長は「やる方向。来年は仙台大にも女子硬式野球部ができるので、仙台大対女子高校選抜というのもいいかもしれない」と青写真を描く。「昔は他のスポーツがなかったからみんな、野球をやっていたが、今はそうじゃない。そして、野球も男女関係ない時代になっている。野球人口が減っている中、ソフトボールや女子野球も発展していかないといけない」と、男女やカテゴリーの垣根を越えた交流を図っていきたい考えだ。

 なお、東北福祉大対仙台大の新人戦決勝は4回に島袋皓平の逆転3ランが飛び出した東北福祉大が8-1で勝利した。

新人戦決勝は東北福祉大が仙台大に勝利して優勝
新人戦決勝は東北福祉大が仙台大に勝利して優勝

(写真はすべて筆者撮影)

フリーライター

1987年3月7日生まれ。宮城県栗原市(旧若柳町)出身。大学卒業後、仙台市在住のフリーライターとなり、東北地方のベースボール型競技(野球・ソフトボール)を中心にスポーツを取材。専門誌やWebサイト、地域スポーツ誌などに寄稿している。中学、高校、大学とソフトボール部に所属。大学では2度のインカレ優勝を経験し、ベンチ外で日本一を目指す過程を体験したことが原点。大学3年から新聞部と兼部し、学生記者として取材経験も積んだ。ポジションは捕手。右投右打。

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