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【女子野球】東北地方の大学で初!来春、仙台大に女子硬式野球部誕生

高橋昌江フリーライター
来年4月、仙台大で東北地方初の大学女子硬式野球部がスタートする(筆者撮影)

 東北地方の大学で初めて、女子硬式野球部が誕生する。仙台大は1日、記者会見を開き、女子硬式野球部を来年4月に創設すると発表した。監督には硬式野球部(男子)の入澤裕樹コーチ(准教授)が就任する。部長は硬式野球部(男子)の江尻雅彦部長(教授)が兼任し、重巣吉美教授が副部長として部員の心身のサポート役を担う。

■入澤監督「1つの文化として根付くような部に」

 人口減少、少子化などの影響で、小学生、中学生の野球チームでは男子選手と女子選手がともにプレーすることが珍しくなくなってきた。高校では各地域で女子硬式野球部の創部が相次いでいる。東北地方では2018年にクラーク記念国際高校仙台キャンパス(以下、クラーク仙台)で「東北初」の高校女子硬式野球部が誕生。その後、花巻東高校(岩手)、盛岡誠桜高校(岩手)、日本ウェルネス宮城高校と続き、今年は弘前学院聖愛高校(青森)、惺山高校(山形)、学法石川高校(福島)で女子硬式野球部が始動した。

 しかし、女子選手が大学でも硬式野球を継続できる環境は全国的にも少なく、東北地方で女子硬式野球部を有する大学はなかった。そうした背景を踏まえ、北海道・東北地方で唯一の体育大学である仙台大は競技継続を望む選手の活躍の場を作ることを決めた。

 また、仙台大の硬式野球部(男子)ではかつて女子選手が所属していたことがある。2005年3月に卒業した履正社高校女子硬式野球部の橘田恵監督で、仙台六大学リーグ初の女性選手として1年秋の新人戦に出場。安打も放った。2017、18年には侍ジャパン女子日本代表の監督も務めており、髙橋仁学長は「偉大な野球部の先輩がおられたということもあり、設置については違和感なく、準備を進めることができました」と話した。

 仙台大は宮城県南部の柴田町にあり、練習は同町の野球場のほか、角田市、白石市といった近隣の野球場も使用して行う予定だという。髙橋学長は「女子硬式野球部の創設がスポーツによる仙南地域の活性化にもお役に立てるよう、新しい部活動のスタイルを模索していきたいと考えています」と話し、各自治体の協力に感謝。来春から指揮を執る入澤監督は「大学の競技活動ですので、大学日本一を目指しながらも、地域を活性化できるような活動をしていきたいと思っています。地域の方が『練習しているから、観に行こう』と気軽に足を運んでいただけるような活動をし、1つの文化として根付くような部にしていければ。元気と明るさで活気のあるチームにしていきたいと思っています」とビジョンを描く。

■大学1年生で3名の入部希望者。ポジションは・・・?

 チームは来年4月にスタートするが、すでに在学生の入部希望者が3名いる。

 千葉真希さん(1年)は中学、高校とソフトボール部に所属し、現在はクリケット部でプレーする。「関東や関西に行かないとできないと思っていた女子硬式野球が、自分が入った大学でできると聞いて、やりたいと思いました」と選手として入部予定。子ども運動教育学科で保育士資格と幼稚園教諭の免許取得に向けて勉強しながら、クリケット部との兼部で両立を目指すという。「たくさんの困難にぶつかると思いますが、野球という新たなスポーツを楽しんでいきたいと思っています」と笑顔を見せた。

 作新学院高校女子硬式野球部で外野手だった廣田美憂さん(体育学科1年)は「選手としてはやり尽くした」という思いからマネージャーを志望。「野球を離れて寂しいなと思っていたので、部活ができてすごく嬉しいです」と声を弾ませた。クラーク仙台女子硬式野球部から入学した木明桜子さん(1年)は「スポーツの分析に関わる職に就きたい」と、スポーツ情報マスメディア学科で学んでおり、アナリストとしての入部を希望している。「こうしたサポートの形でスポーツに関わっていけるということを示したいです」と話した。

 学科が違うため、女子硬式野球部創部の話を聞いてたまたま出会ったという3人。それも選手、マネージャー、アナリストと異なる“ポジション”を志願しており、入澤監督は「それぞれが役割を担っていけば、これから入学してくる学生にとっても心強い3人」とうなずく。ソフトボールや軟式野球といった選択肢もある中、「高校で3年間続けた硬式野球でプレーヤー、あるいは支える側として極めたいという思いは、部員たちが卒業した後にも生かされるのではないかと考えています」という。大学卒業後を見据え、さまざまなスポーツとの関わり方も経験できそうだ。

 東北地方の大学で初めての女子硬式野球部誕生は高校側にとってもプラスだ。クラーク仙台の渡辺崇部長によると、高校の女子硬式野球部から大学で競技を継続する選手は約4割。「地域から出たくないという子もいますので、受け皿として有り難いこと。保育士や幼稚園教諭を目指せる子ども運動教育学科などもあり、目指したい子にとっては4年間、学びながら野球ができるいい機会を作っていただくことができました」と歓迎する。

 この春には渡辺部長が会長兼事務局長を務める「東北女子硬式野球連盟」が立ち上がり、東北地方の高校女子硬式野球部を中心にリーグ戦が開催されている。来年には仙台大も加盟予定だ。

フリーライター

1987年3月7日生まれ。宮城県栗原市(旧若柳町)出身。大学卒業後、仙台市在住のフリーライターとなり、東北地方のベースボール型競技(野球・ソフトボール)を中心にスポーツを取材。専門誌やWebサイト、地域スポーツ誌などに寄稿している。中学、高校、大学とソフトボール部に所属。大学では2度のインカレ優勝を経験し、ベンチ外で日本一を目指す過程を体験したことが原点。大学3年から新聞部と兼部し、学生記者として取材経験も積んだ。ポジションは捕手。右投右打。

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