中国国営通信社の新華社は2018年2月25日、中国共産党中央委員会による憲法一部改定案を発表した。

中国法の専門家である高橋孝治氏のご教示によると、中華人民共和国は1954年の制定後、3回にわたる全面改定、4回の小改定が行われている。最後の小改定は2004年、指導思想として江沢民が提唱した「三つの代表論」を盛り込むものだった。それから14年間、憲法改定は行われていないが、それは江沢民の後継者である胡錦濤の力不足ゆえに彼が提唱した「科学的発展観」を憲法に入れる改定ができなかったためだ。

ちなみに今回の改定案では「習近平新時代中国特色社会主義思想」と並んで、「科学的発展観」も憲法に盛り込むことが提案されている。胡錦濤前総書記にも配慮がなされた格好だ。

ともあれ、施行から71年間にわたり一度も改定していない日本とは異なり、中国の改憲そのものは決して驚くべき話ではない。それでも今回の改定案が注目を集めているのは、合計21項目もの改定意見の中に次の一節があるためだ。

それは「中華人民共和国主席、副主席の各期任期は全国人民代表大会の各期任期と均しい。任期は連続2期を超えてはならない」という中華人民共和国憲法第79条第3項から「任期は連続2期を超えてはならない」を削除するというもの。

中国の最高指導者には総書記、国家主席、軍事委員会主席の3つの肩書きがあるが、そのうち任期の規定があるのは国家主席のみ。国家主席の任期制限が解かれれば最高指導者が身を引く区切りはなくなる。トウ小平の遺訓とされ、江沢民、胡錦濤の二代が従ってきた「10年ごとのトップ交代」というシステムは大きく変化することになる。つまり習近平は党、軍、国家のトップを終身で勤め続けることがルール上可能になるわけだ。

拙著『なぜ、習近平は激怒したのか 人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社新書、2015年9月)は日本では最も早く習近平が2期10年以上の任期を目指す可能性を指摘していたが、最近では同様の意見が増えつつある。それでもこのタイミングでの憲法改定は驚きだ。

しかも今日(2月26日)からは、三中全会(中国共産党中央委員会第3回全体会議)が開催される。慣例では秋に開催されるところが半年もの前倒しとなった。本来ならば経済方針が主要議題となる会議だが、今回ばかりは過去の事例からは一切予測が不可能だ。昨秋の党大会で第2期習近平体制における党人事が決まったが、国家主席や首相などの政府人事は3月の両会(全国人民代表大会、全国政治協商会議)で決定する。その両会前の改憲、三中全会開催だけに、異例の政府人事につながっても不思議ではない。

2012年の就任以来、強大な権力を掌握してきた習近平総書記だが、第2期目初年度の今こそが最も自由かつ大胆な改革を行うチャンスとなる。中国をどのように変えるのか。天安門事件以後、中国は江沢民、胡錦濤という2人のトップを迎え、政治的な安定の下で繁栄を享受してきた。今回の改憲によって習近平はこの流れから外へ踏み出す姿勢を明確にした。そう、中国政治は今、天安門事件以後最大の転機を迎えつつあるのだ。