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中学硬式野球日本一決定戦のジャイアンツカップで「投球数制限」が実施決定。現場の声を聞く

高木遊スポーツライター
ジャイアンツカップ優勝を決めて喜ぶ2018年大会の大淀ボーイズ(筆者撮影)

 中学硬式野球5連盟(リトルシニア、ボーイズ、ポニー、ヤング、フレッシュ)の垣根を超えて日本一を争うジャイアンツカップ(全日本中学野球選手権大会)。その第14回となる2020年大会で投球数制限を実施すると、公益財団法人日本野球連盟と読売新聞社が1月20日に発表した。

イニング制限から球数制限へ

 昨今、育成期・成長期の障害予防は野球のみならず各競技の課題とされており、公益財団法人日本高校野球連盟でも昨年11月の理事会で投手1人の投球数を1週間で 500 球以内とする投球数制限を行い、今春の選抜大会から実施することを決めた。

 そうした流れに加え、日本中学硬式野球協議会の加盟団体(前述5連盟)の中でも、投球数制限の実施を決定している団体があるほか、一部の公式試合で導入する動きも広がっているため、実施に踏み切った。

 既に同協議会では中学生の障害予防のため、2015 年度より「1 日 7 イニング以内、連続する 2 日間で 10 イニング以内」とする「中学生投手の投球制限に関する統一ガイドライン」と普段の練習時から選手の肩・肘の痛みや投球フォームに注意を払うことなどを求めた「中学生選手の障害予防のための指導者の義務」を策定。ジャイアンツカップでもこの“投球回数”制限は実施されていた。

 ただ、近年の大会での投球結果を振り返ると、その規定イニング以内であっても1 日で 130 球以上投げるケースもあり、障害につながる危険を完全にはぬぐい切れないのが実態であったため、各団体の関係者とも協議をし、より故障防止に踏み込んだ“投球数”制限へと舵を切ったという。

ルールの変更点

【前回大会までのルール】

1日7イニング以内とし、連続する2日間で10イニング以内とする。また、1日に複数試合に登板した投手、連続する2日間で合計5イニングを超えた投手(5イニングは可)及び3日間連続で登板した投手は、翌日に投手または捕手として試合に出場することはできないものとする。ただし、イニングの端数(1/3または2/3)は1イニングとみなす。

【今夏の大会で実施するルール】

1、1日最大80球以内とし、連続する2日間で120球以内とする。連続する2日間で80球を超えた場合、3日目は投球を禁止する。

2、3連投(連続する3日間で3試合)する場合は、1日の投球数を40球以内とする。4連投(連続する4日間で4試合)は禁止する。

3、1日80球投球後、翌日投球を休めば、3日目は80球の投球を可とする。

4、上記1〜3を基本原則とするが、打席の途中で制限数が来た場合は当該打者の打席終了までは投球を認める。制限数を超過した球数は翌日以降の投球数にはカウントしない。

5、連続する2日間で80球を超える投球をした投手並びに3連投した投手は、登板最終日並びに翌日は捕手としても出場できない。

6、ボークは投球数としない。

7、雨などでノーゲームになった試合は投球数にカウントする。

現場の声

 当然、現場からは様々な声がある。いくつかの声を紹介したい。

「信頼できない指導者がいるのであれば(投球数によるルール策定は)仕方ない。ただ、ウチのチームではそんなことは絶対しませんが、そうした人たちは待球作戦などをし、投手の酷使以上に勝利にこだわりやくなる懸念はある」

「私ら田舎は既に野球が特殊なスポーツになっていて、ウチも1学年10人前後。部員の多い少ないで野球が変わるのは、なかなか難しいところはある」

「ルール策定は良いこと。年ごとに柔軟に変わっていってもいい。例えば40球から80球は幅が広い。60球なら中1日、80球なら中2日登板禁止でもいいのではないか。また学年によって制限があってもいい。例えば1年生大会で7回完投をさせるチームが結構あるくらいなので」

「1人の投手に頼れなくなり、何枚もの投手を作らなければいけなくなる。そうやって練習試合から多くの選手が登板するきっかけになればいいことだと思う」

 もちろん大会のみの制限で投手が故障から守られるわけではない。上記の声でいくつか挙がったように、指導者を含めた大人たちの意識が高まること、知識が深まること、またそれが業界全体で共有されていくのが最重要であることは間違いない。

【第 14 回全日本中学野球選手権大会 ジャイアンツカップ大会概要】

8 月 17 日(月)~21 日(金)の 5 日間

※22 日(土)を予備日とする

※16 日(日)に開会式を予定

《会場》福島県と茨城県の 2 県 6 球場で開催

〔福島県〕:いわきグリーンスタジアム/南部スタジアム/平野球場

〔茨城県〕:日立市民運動公園野球場/日立製作所野球場/高萩市営球場

《主催》(公財)日本野球連盟、読売新聞社、読売巨人軍、日本テレビ放送網、報知新聞社

《主管》日本中学硬式野球協議会(リトルシニア、ボーイズ、ポニー、ヤング、フレッシュ)

《出場》全国を 25 地区に分け行われる地区予選から勝ち上がってきた 32 チーム

《試合》32 チームによるトーナメント方式

例年は東京ドームをメイン会場に行うが2020年の第14回大会は東京五輪の影響で、U-15W杯の会場となった、いわきグリーンスタジアムがメイン会場となる(写真は2018年の第12回大会/筆者撮影)
例年は東京ドームをメイン会場に行うが2020年の第14回大会は東京五輪の影響で、U-15W杯の会場となった、いわきグリーンスタジアムがメイン会場となる(写真は2018年の第12回大会/筆者撮影)
スポーツライター

1988年10月19日生まれ、東京都出身。幼い頃から様々なスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、ライター活動を開始。大学野球を中心に、中学野球、高校野球などのアマチュア野球を主に取材。スポーツナビ、BASEBALL GATE、webスポルティーバ、『野球太郎』『中学野球太郎』『ホームラン』、文春野球コラム、侍ジャパンオフィシャルサイトなどに寄稿している。書籍『ライバル 高校野球 切磋琢磨する名将の戦術と指導論』では茨城編(常総学院×霞ヶ浦×明秀日立…佐々木力×高橋祐二×金沢成奉)を担当。趣味は取材先近くの美味しいものを食べること(特にラーメン)。

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