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公式戦3試合連続出場の吉田麻也は誓う。「試合に絡んでいくことが大事」

田嶋コウスケ英国在住ライター・翻訳家
リーグ杯4回戦レスター戦でFWジェイミー・バーディーと競り合うDF吉田麻也。(写真:ロイター/アフロ)

0−0で迎えたPK戦。レスターのキッカーを務めるMFナンパリス・メンディが落ち着いてPKを成功させると、サウサンプトンのリーグ杯敗退が決まった。

キッカーのもとに、笑顔で駆け寄るレスターの選手たち。敗れたサウサンプトンの吉田麻也は落ち込む味方選手を先導し、アウェイゲームに駆けつけたサポーターのスタンドに向かい頭を下げた。その際、吉田は着ていたユニホームを脱ぎ去り、スタンドの最前列にいたファンに手渡した。

サウサンプトンは、国内リーグ戦で9試合連続の未勝利(5敗4分)と低空飛行が続いている。順位も降格圏の18位に低迷しているだけに、リーグ杯の勝利で浮上のきっかけを掴みたいところだったが、それは叶わなかった。

ただ、吉田としては、先発出場したレスター戦で無失点に抑えた意義は大きかった。この試合で、公式戦3試合連続となる先発フル出場。シーズン序盤はベンチが定位置だったが、ここにきてようやくマーク・ヒューズ監督の信頼を掴みつつある。そんな指揮官の期待に、クリーンシートで応えた格好だ。

レスター戦では3バックの中央CBとして最終ラインを統率した。対峙するFWに縦パスが入れば、前方に飛び出してブロック。DFラインの背後に抜けようとするレスターのFWジェイミー・バーディーにも、落ち着いたディフェンスで対処した。「バーディーもいるし、(レスターには)一発があるんで。そこをケアしながら、前の選手が点を取ってくれることを願っていた」という。

その上で、最終ラインの編成にも神経を尖らせた。この日のサウサンプトンの布陣は3−4−1−2。3枚のCBで最終ラインを構成したが、サイドに張るどちらかのウィングバックがDFラインに吸収される「変則的4バック」だったという。そのため、吉田は常に編成を意識しながら最終ラインをひとつに束ねていた。後半の立ち上がりには、デンマーク代表DFのヤニク・ヴェステルゴーにポジション取りの指示を出す吉田の姿があった。

「3バックでしたが、変則的な4バックを意識していた。僕の両サイドの選手(=CB)をサイドにスライドさせることを意識した。2人とも器用な選手なのでうまくできた。僕のポジションは真ん中なので、動くというよりも頭を使い、冷静に判断しなくてはいけない場面がたくさんあった。3バックの時はそこをいつも意識しています」

レスター戦では盤石の守備を見せた吉田だが、今回の試合の3日前に行われた国内リーグのフラム戦では苦戦を強いられた。

強化試合を行った日本代表の11月シリーズに参加し、イングランドに戻ってから3日後のリーグ戦で、吉田は4バックの右CBとして先発起用された。しかし、セルビア代表FWアレクサンダル・ミトロビッチとのマッチアップに手こずった。ミトロビッチに縦パスが入ると、吉田は素早く前方に飛び出して事前に潰そうと試みた。しかし、セルビア代表FWはシンプルに味方に落としてリターンパスを受けたり、吉田のチェックをかわして前を向いたりと、日本代表DFを大いに苦しめた。フラムの先制点の場面も、ミトロビッチに吉田のマークが剥がされたのが得点の起点になった。

最終的に、ミトロビッチは2ゴールをマーク。2−3で敗戦後、吉田は反省の言葉を口にした。

「ほとんどチャンスは作られてないと思うんですけど、チャンスになったのが、全部失点につながるという…信じられない。ミトロビッチに関しては、ボックス内での体の強さが一番の脅威だと思う。そこについては(事前にチーム内で)話してましたけど、2点も取られて、センターバックとしては『言い訳のしようがない』という感じですね。もちろん取られ方が悪かったり、個のところで剥がされたりっていうのは、ありますけど…」

それだけに、今回のリーグ杯レスター戦に懸ける思いは強かった。フラム戦に続いて先発の機会を与えられただけに、「とりあえず(自分に)チャンスが来ているので、生かさないといけないと思っていた」という。吉田は言葉を続ける。

「前回、代表帰りでパフォーマンスを出せなかったので、印象としては非常によくないと思っていた。ここでパフォーマンス上げて巻き返したかったので、0点に抑えられたのは良かったですけど。続けていきます。

12月は連戦が続く。良いパフォーマンスを続けて、試合に絡んでいくことが大事になる。代表でも試合に出ているので、イングランドに帰ってきて試合勘をキープしつつ、良い状態で連戦を迎えられるようにしたいです」

奇しくも、今回のレスター戦は岡崎慎司との日本人対決でもあった。61分から途中交代でピッチに入った岡崎は「吉田さん、よかったよ」と、日本代表DFのパフォーマンスを褒めていた。

ここからサウサンプトンは、マンチェスター・ユナイテッド戦(12月1日)、トットナム戦(同5日)と強豪クラブとの対戦が続く。しかし、最下位のフラムと勝ち点で並ばれており(得失点差でサウサンプトンが18位)、これ以上、勝ち点を落としてはいられない。

マンチェスターU戦に敗れた場合、ヒューズ監督が解任されるとの報道もある中、サウサンプトンは強豪との一戦で踏ん張れるか。定位置を掴みかけている吉田としても、ここが正念場になる。

英国在住ライター・翻訳家

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。中央大学卒。2001年より英国ロンドン在住。香川真司のマンチェスター・ユナイテッド移籍にあわせ、2012〜14年までは英国マンチェスター在住。ワールドサッカーダイジェスト(本誌)やスポーツナビ、Number、Goal.com、AERAdot. などでサッカーを中心に執筆と翻訳に精を出す。

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