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FXの世界はふたりに1人が爆死する世界。それでもあなたは修羅の国で戦うのか

山崎俊輔フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP
(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

手軽な投資の選択肢としてみなされているFXだが

FP間で話をしていて、しばしば話題になるのが「初めての投資と考えてFXに手を出す人が多い」ということです。

そしてみんなが「それな……」という感じでため息をつきます。

FX、外国為替証拠金取引は、個人が手軽に為替の売買ができる仕組みです。ネットの広告、テレビのCM、雑誌の特集記事などが「手軽にできる、おこづかい稼ぎの方法」とか「億り人になるチャンスはここに!」という感じであなたを手招きしています。

日本の個人のFX取引量は世界的にもトップクラスです。国内最大手とされるGMOクリック証券の、FX取引高は2020年の世界第1位とプレスリリースされているほどです。

PR TIMES 2021/1/29

GMOクリック証券:FX取引高 世界1位を達成~2020年(1月~12月)FX取引高調査~

しかしこれは「投資」というにはあまりにもリスクの高い選択肢、むしろ「投機」的であり、2人に1人は爆死している、ということをご存知でしょうか。

FXの世界は2人に1人が損をし、退場するという恐ろしいデータ

株式会社RUNWAYSが行った「FXをやめた理由や取引期間についての意識調査」という、ユニークなアンケート調査があり、これをみると驚きのデータが紹介されています。

まず、FXの生涯収支について48.9%が負けていると回答し、トントンであるという20.0%を除くと、資産を増やせているのはわずか31.1%しかいない、というのです。

そして、現在もFXを続けているかという回答に53.0%が、もうやめてしまったと回答します。しかもやめた人のFX期間は「半年から1年」が44.34%、「半年以内」24.72%となり、約7割は1年もたたずに爆死、終了という結果です。

これはなかなか恐ろしい数字です。どれくらい損をしたか、という設問がもしあったとすれば「全損」、つまり入金した資産をすべてなくしたという人も相当あるのではないかと思われます。金額ベースでは数百万円の損も珍しくないのではないでしょうか。

PR Times  FX投資家の約7割が1年以内に退場していた!FXをやめた理由第1位とは?

マイナビニュース FX投資家7割が1年以内に退場、やめた理由は?

FXは「投資」というにはあまりにも「投機」的である

FXは楽しいか、というと楽しい仕組みです。リアルタイムであなたの投資資金が上下動してうまくいけばどんどんお金が増えていきます。目が離せないスリルと興奮があります。

しかし、裏目に出るとこれほど苦しい仕組みはありません。レバレッジをかけている場合、どこで損失確定させるか考え続ける必要があります。そうしないと、元本のすべてをなくしてしまうからです。

25倍のレバレッジをかけるということは、4%の上昇で手持ち資金が2倍になるチャンスと、4%の下落で手持ち資金をすべてなくすリスクを同時に持つことです。

そして、0.5~1.0%の値下がりで何度か損失確定をするうちに、次の投資で儲けられる額は減り、恐怖で判断は鈍ります。多くの場合、ズルズルと額を減らすことになるのです。

為替の悩みは投機的であることです。究極的にはどちらかの為替の保有者が儲かり、どちらかの為替の保有者が損をします。そしてトレードは一対になっています。先ほどの勝率5割というのはまさに投機的であることを象徴しています。

実態としては少額を入金する人ほど負けやすく、勝ち残っている人の多くは経済的余裕がある人であるかもしれません(100万円入金した場合、50万円の損失でほとんどアウトだが、1000万円入金できる人は50万円の損失程度なら様子を見ることもできるし新たなポジションでトレードをすることもできる。この差は大きい)。

「初めての投資をFX」ではなく、他の方法で、そして勝率がもっと高くなるやり方でスタートする選択肢はないものでしょうか。

まっとうな投資を積み立てする世界では99%がプラスになる

株式投資とFXにはたいしてリスクの違いなんてない、と多くの人が考えていると思いますが、実は普通に株式投資をする場合、勝率を限りなく100%に近づける方法があります。

長期積立分散投資を心がけることが第一の方法で、国内外の株式と債券、つまり4資産に分散投資を行い、20年の積立を行うだけで、勝率は100%に近づき、運用利回りもおおむね年5%くらいになります。これは過去データのシミュレーション結果としても金融庁のWEBに開示されています。

投資信託を用いた積立においても同様の傾向がみられます。例えば、コモンズ投信に直接口座を開設し、5年以上積立をした顧客の損益分岐について、同社のWEBに情報開示がなされているのですが、勝率(運用がプラスになっている)はなんと99.9%です(2021年3月末)。

コモンズ投信:取組の見える化(共通KPI・独自指標)

昨年3月末、いわゆるコロナショックで市場が急落した時点でも92.1%という高い割合となっていました。ただ定期的な入金を繰り返すだけでも、十分にリターンを得るチャンスが「まっとうな投資」の世界にはあるわけです。

あなたがもし、お金を増やしたいのなら、ごく普通の投資手段である「株式」に対して「投資信託」を使った運用を行うほうがいいと思います。

あなたが歩むは修羅の国かそれとも?

マンガ「北斗の拳」には修羅の国という世界があります。兄弟が殺し合い、どちらかしか生き残れないというような厳しい世界です。

なんとなく、FXは修羅の国で戦っているような感じです。生き残る人がひとりあれば、誰かがひとりそこで死を迎えているような世界観です。

投資はみんなが生き残ることもできます。投資家はもちろんですが、企業も成長しますし、社会も発展します。スマートフォンという発明が、AppleやGoogleを大きくしただけでなく、私たちの日常も便利にしました。もちろん投資家の財産は大きく増えていますが、それはイノベーションが世界に行きわたったことの恩恵なのです。

同じ「北斗の拳」でいえば、麦の種を植えて未来の成長と発展を目指す村人のほうが建設的だと思います(マンガでは哀れにも殺されてしまいますが)。

この夏のボーナスの使い道として、「これから、初めて投資をする」という人がもしいたら、FXによる投機ではなく投資をしてみてはいかがでしょうか。

フィナンシャル・ウィズダム代表/お金と幸せについて考えるFP

フィナンシャル・ウィズダム代表。お金と幸せについてまじめに考えるファイナンシャル・プランナー。「お金の知恵」を持つことが個人を守る力になると考え、投資教育家/年金教育家として執筆・講演を行っている。日経新聞電子版にて「人生を変えるマネーハック」を好評連載中のほかPRESIDENTオンライン、東洋経済オンラインなどWEB連載は14本。近著に「『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」「共働き夫婦お金の教科書」がある。Youtube「シャープなこんにゃくチャンネル」 https://www.youtube.com/@FPyam

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