2500万人に朗報!最高に有利な資産形成枠が誕生する~確定拠出年金法改正最速解説その2(個人編)

老後の豊かさは現役時代の資産形成によってしかもたらされない(写真:アフロ)

※5/26 12:30に 企業と企業型の確定拠出年金加入者550万人に影響する改正ポイントをまとめ追加記事としています。

マスコミも知らない法律改正「裏テーマ」550万人10兆円に大影響~確定拠出年金法改正最速解説(企業編

併せてご覧ください。

昨日(5月24日)、成立した確定拠出年金法の大改正について最速解説記事を寄稿したところ、たくさんのアクセスをいただきました。

本日午後1時、抜本的法改正成立!最速で確定拠出年金改正の重要ポイントを解説

今回はそこで予告していた補足解説をしたいと思います。補足は「個人編」と「企業編」で分けてまとめてみます。今回は個人編です。

個人にとって、ニュースに書かれているとおり、確定拠出年金の利用対象者が拡大することが最大のインパクトです。その規模は2500万人にもなります。

現役世代は誰でも確定拠出年金を利用できる時代に

確定拠出年金というと、トヨタ自動車や日立製作所のような大企業が採用するイメージがありましたが(企業型の確定拠出年金)、個人が誰でも加入でき、誰もが自分の老後のために備えを厚くするために利用できる仕組みになります(個人型確定拠出年金の規制緩和)。

現状ですと、

  • 企業型確定拠出年金のある会社員(約550万人)……会社が積立金を出し、3割くらいの会社では個人が追加拠出できる(マッチング拠出)
  • 企業型確定拠出年金や企業年金のない会社員(約2000万人)……月2.3万円までの範囲で任意で加入し積立ができる
  • 自営業者等(約1800万人)……国民年金のみに加入している人は月6.8万円まで任意で加入し積立ができる

と利用可能な人が限定されていましたが、今回の法律改正(2017年1月実施予定)で、下記のような人も利用できるようになります。

  • 企業年金があるけれど、企業型確定拠出年金がない会社員(約1100~1200万人)……月1.2万円(年14.4万円)の範囲で加入し積立ができるようになる
  • 公務員(約400万人)……月1.2万円(年14.4万円)の範囲でで加入し積立ができるようになる
  • 専業主婦等(約900万人)……月2.3万円(年27.6万円)の範囲で加入し積立ができるようになる

これにより、現役世代は全員、何らかの確定拠出年金を利用できるようになるわけです。

一部の報道では「企業型確定拠出年金の加入者が個人型確定拠出年金にも入れるようになる」と併用可能になるような書き方をしていますが、これは不正確です。その会社の企業型の確定拠出年金が、個人型にも同時加入することを認める制度改正をする必要があり、多くの会社は対応しないと考えられるからです。

(その場合、企業の積立可能枠(拠出限度額)を下げて、その分を個人の利用枠とするため、会社にとって企業年金制度の枠組みが縮小し使い勝手が下がってしまうため)

規制緩和されるには理由がある

ところで、今回の規制緩和はちゃんとした意味があります。まず、「60歳までどんな立場であっても積立が続けられる制度にする」というメッセージです。ひとつの会社にずっと定年までいるとは限らず、子育てや介護に専念する期間もあれば、転退職や再就職で働き方を変えることもあります。

退職金というのは今まで、退職時には少額の現金をもらい、そのたびにリセットするイメージでした。しかしこれでは転職者ほど老後の財産が細切れになってしまいます。ひとつの会社に定年まで勤める人が減っている時代にそぐわないしくみです。

今回の制度改正により、立場が変わろうと「老後のお金を増やす個人の口座」として活用が続けられるというわけです(なお、転退職時には全額を持ち運んで資産形成を続けることができる)。

規制緩和の意味について、それぞれの立場で補足すると以下のとおりです。

企業年金があるけれど、企業型確定拠出年金がない会社員(約1100~1200万人)……企業年金の水準も各社各様で、500万円程度のところもあれば2000万円超のところもあります。企業年金の有無に限らず、誰でも積立をできるようにすることがねらいです。

公務員(約400万人)……公務員は守られている有利な立場、というイメージが強いと思いますが、実は退職金の引き下げが行われています。約400万円という大きな水準切り下げが行われており、その穴埋めをどこかでしなければ老後の生活水準ダウンになってしまいます。確定拠出年金の利用によりこれがちょうど埋められる水準になっています。

専業主婦等(約900万人)……専業主婦といっても無収入の人ばかりではありません。「課税所得」がなくてもパート等で自分の稼ぎがある人もたくさんいます。こうした専業主婦が「自分の退職金」を確定拠出年金で作ることができます。自分の財産ですから離婚時にも持ち出せます。また、会社員から離職したとき、今後再就職したときにはその資産を引き継ぎ老後の資産を増やし続けることができます。

個人にとっての使いどころは「老後のための最強積立口座」

速報コラムでも指摘していますが、今回の法改正は、中途解約の条件を厳格化する内容が含まれており(未だにほとんどの報道には出ていない)、確定拠出年金は60歳まで持ち続けることが原則となります。これは強く認識すべきことです。

しかし、これは悪いことばかりではありません。「老後のための虎の子貯金枠」と考えて前向きに活用するべきと思います。老後の経済的不安は自分で解消するしかありませんが、その解消努力は現役時代にしか行えないものです。

そして、積立時・運用時・受取時のトリプルで税制優遇のある「もっとも有利な口座」、確定拠出年金がその助けとなるわけです。

個人型確定拠出年金は、利用すれば利用するほど税制的に得をします。仮に実効税率を15%とすれば1万円の稼ぎが手取りの時点で8500円となるところ、確定拠出年金口座に入れるだけで1万円まるまま将来に持ち越すことができます。この段階ですでに、運用で10%以上稼いだも同然です

(※NISA口座は普通に課税されたあとの現金から投資を行う)

運用で利益が出たとき原則20%の税金が引かれます。0.01%の定期預金でさえ引かれます。投資信託等で10%儲かったとすれば2%ももっていかれる計算です。これも確定拠出年金口座内なら完全に非課税です。

(※NISA口座は年120万円までの入金額について利益が非課税ですが、売却チャンスは一度きりです)

受取時には退職金みなし(年金受取の場合は公的年金に準じる)で課税されるので、現役時代の所得税や住民税の税率よりもぐんと下がります(一時金受取の場合、全額非課税の可能性が高い)。

60歳まで原則解約不能であることのメリットはしっかり老後に得られるはずです。確定拠出年金のお金が中途解約できないわけですから、毎月の家計で借金にはならないよう配慮しつつ、利用可能な上限を目指して積立していくといいでしょう。

個人は年末までまだ様子見でOK

確定拠出年金の口座はひとり1口座が大原則ですから、どこの金融機関にするかは慎重に考えなければなりません。国の制度といっても、金融機関ごとに商品ラインナップや手数料体系がまったく異なります。

この個人型確定拠出年金の規制緩和、2017年1月がスタート時期です。金融機関各社はここから年末にかけて、魅力的な個人型確定拠出年金のプランを提示してくるでしょう。

事務コスト、運用コストの引き下げ合戦はすでに始まっており、SBI証券は先行して勝負に出てきています。

今後新規参入する金融機関(ネット証券に期待)、現在のプランのてこ入れしてくる金融機関(銀行系の奮起に期待)などの取り組みをチェックしながら、口座開設の準備をしておくといいでしょう。

年末頃にはマネー雑誌の特集もあるでしょうから、比較の参考にしてみるといいでしょう。

――今回は、個人にとっての確定拠出年金法改正のポイントをまとめてみました。次回は「企業編」ということで、550万人の利用者がすでにある企業型確定拠出年金への影響をまとめてみます。