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今この時期だからこそインバウンド観光について再確認しよう!

鈴木崇弘一般社団経済安全保障経営センター研究主幹
今こそ、インバウンド観光について再確認すべきだ(写真:アフロ)

 インバウンド観光は、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的感染の拡大で壊滅的な打撃を受けた。同感染は現在も一進一退の状況にあるが、日本を含めた世界はそれに対して、ワクチンを含め医療的対応も徐々にできるようになってきており、まだまだ予断を許さない面もあるが、次のステージに入ってきており、経済活動や国際的な人の移動も活発になってきている。遠からずほぼ以前の状態に戻るのではないかと予測できるようになってきたと考えられる。それは、インバウンド観光に関しても当てはまることであろう。

 そこで、本記事では、コロナ禍前までのインバウンド観光の状況について、再確認していきたい。

 国連世界観光機関(UNWTO)による、世界観光指標(UNWTO World Tourism Barometer)、によると、2018年の世界の国際観光客到着数は14億人(2019年2月発表)、2019年の同数字は15億人(2020年1月20日発表)に達したという。そして、同指標によると、国際観光客到着数は10年連続の成長を示したという(新型コロナウイルスの影響は加味されていない)。

 同機関による2010年発表の長期予測では、「14億人に到達するのは2020年」と見込まれていたことを考えると、その予測は2年前倒しで、2018年に達成されたことになる。そしてこれは、前年比6%の増加であり、世界経済における成長率3.7%(当時)を大きく上回ったのである。また、2019年には、経済成長の鈍化・不確実性がみられたが(注1)、それでも世界の国際観光客到着数は、4%増加したのである。

 また、このインバウンド観光で、どの地域が伸びているかをみてみると、「図表1:世界の地域別国際観光客到着数の増加率について」のとおりである。

 世界的にもインバウンド観光は、このように、(少なくもコロナ禍前までは)確実に大きく成長してきているといえたのである。

 では日本のインバウンド観光は、現在どのような状況にあるのだろうか。まず、それをみていこう。

 近年における日本政府の観光立国に向けての政策が功を奏して、インバウンド観光において、年々訪日外国人数の増加が認められるといえる。

外国人観光客も増えてきている
外国人観光客も増えてきている提供:イメージマート

 図表2「年別訪日外国人数の推移(1964年以降)」を見てもわかるように、訪日外国人数は、全体としては徐々に増加傾向にはあるが、その数が1,000万人を超えたのは2013年、2015年にほぼ2,000万人(約1974万人)、2016年約2,404万人、2017年約2869万人となり、2018年には実に3,000万人(約3119万人)を超え、2019年は3,188万人(前年比+2.2%)となった。そのことは、訪日外国人数は、この6年間で約3倍に増加したことを意味するのである 。

 では、このような日本のインバウンド観光は、世界的にみて、どのような状況にあるのかについてみていこう。

 国連世界観光機関(UNWTO)が発表したデータによると、日本の2018年外国人観光者数は世界で第11位であった。上位15カ国のランキングは「図表3:世界各国・地域への外国人訪問者数ランキング」のとおりである。

 日本は、2017年には前年の14位から2つランクアップし12位。2018年にはさらに11位に躍進した。アジアの中でも「中国」「トルコ」「タイ」に次ぐ、第4位にランクインされている。他方、トップであるフランスと比較すれば、その差は約2.8倍。その意味からすると、日本のインバウンド観光市場は、いまだ「伸びしろ」があると考えることができるだろう。

 今後も、観光業、特にインバウンド観光について考えていきたい(注2)。

出所(図表1:UNWTO「世界観光指標2019年1月号について」図表2:JTB総合研究所2019年 図表3:国連世界観光機関)
出所(図表1:UNWTO「世界観光指標2019年1月号について」図表2:JTB総合研究所2019年 図表3:国連世界観光機関)

(注1)これは、英国のEU離脱(Brexit)の不確実性、トーマス・クック社の破綻、地政学的や社会的な緊張や世界経済の成長における鈍化などによる。

(注2)筆者の所属する大学院で、上記の記事の内容を受けて、観光に関して考える次のような企画を計画している。もしご興味があれば、ぜひご参加ください。

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     城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科

       アフターコロナにおける観光振興の可能性と展望

           観光理解促進フィールドワーク:

       インバウンド×マーケティング×データサイエンス

 下記の要領で、観光振興への理解促進につながるフィールドワーク&発表会を開催。

 同イベントでは、「インバウンド×マーケティング×データサイエンス」をコンセプトに、都民や都内在勤・在学者と共に、都内観光地域を対象としたフィールドワークも実施しながら、対象地域の観光戦略の成果は公開され、アフターコロナにおける新しい観光の可能性について考えていくものです。多くの方々のご参加をお持ちしています。

                       記

〇開催日時

・1日目:令和5(2023)年2月4日(土)9:00~17:00 

内容:講義、バーチャルツアー、フィールドワーク(グループワーク)など

・2日目:令和5(2023)年2月11日(土)10:00~17:00

    内容:グループワーク、講演・成果発表会(公開・対面・オンライン)

〇会場:城西国際大学東京紀尾井町キャンパス(東京都千代田区紀尾井町3-26)など

〇対象者・定員:都内在住・在勤又は在学の方

①フィールドワーク参加者(定員:20名)(※先着順・両日参加できることが条件)

②発表会(会場参加又はオンライン視聴)(定員:会場20名、オンライン100名)

〇参加費:無料。会場及びフィールドワーク現地までの交通費、昼食代等は自己負担。

〇募集期間:

①フィールドワーク参加希望者:令和5(2023)年1月25日(水)17時まで

               締切りを延長して、参加者継続公募中!

②発表会の聴講希望者:令和5(2023)年1月25日(水)17時まで

〇申込方法:次の申込フォームより申込み。

詳細は城西国際大学HP参照。

〇本企画は、東京都の「都民の観光振興への理解促進事業」の一環で実施。

【問い合わせ先】城西国際大学事務局:info@tokyo-jiu.net 

インバウンド観光も再開されてきている
インバウンド観光も再開されてきている写真:ロイター/アフロ

一般社団経済安全保障経営センター研究主幹

東京大学法学部卒。マラヤ大学、イーストウエスト・センター奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て、東京財団設立に参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・フロンティア研究機構副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立に参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。㈱RSテクノロジーズ 顧問、PHP総研特任フェロー等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数

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