新しい形式のアート・イベント「ART BATTLE Tokyo」に行ってみた

ART BATTLE TOKYO Vol.2の様子(筆者撮影)

 面白いイベントに行ってきた。それは、7月6日に東京・天王洲の寺田倉庫で開催された「ART BATTLE Tokyo(ABT)」で、今回はその「Vol.2」だった。

 筆者は元々政策が専門だ。だが、政策は、ある意味「社会をデザインし、社会を設計すること」、つまり「社会をアート」することだと考えている。そのために、素人ではあるがアートに非常に関心があり、アートに接することや観ることで、新しい社会を構築していく上でのインスピレーションを得ようとしてきている。その意味からも、最近教育で関心が高まる「STEAM教育」(注1)にも関心がある。

 いずれにしろ、筆者はこのようにして日ごろからアートに関心を持っていたのだが、たまたまABTの開催を知り、直感的に面白いかと思い、参加させていただいた。

 

 「ART BATTLE(AB)」は、2001に米国ニューヨークで生まれ、その後イギリス、カナダ、フランスなどの都市で開催されてきており、これまでに世界50都市で、2千回以上開催されてきているそうです。ABは、制限時間内で、アーティストがアート・パフォーマンスを行い、同イベントによる投票で、勝者を決定するアートのイベントである。

 今回のイベントは、12人のアーティストが参加。全員参加のエキシビション、6名ずつ参加の20分間でアートを製作するというパフォーマンスが2ラウンドあり、各ラウンドで投票で選ばれた各2名、計4名がファイナル・ラウンドに臨み、最終的にKATHMIさんが勝ち抜き、プレゼンターのコシノ・ジュンコさんから、ファイトマネーと賞状を得て、12月に開催される全国大会の出場権を手にした(注2)。同全国大会に勝ち抜けば、はじめて開催される2020年の世界大会(東京開催)への日本代表になることができる。

 

コシノ・ジョンコさんからのファイト・マネーの授与(筆者撮影)
コシノ・ジョンコさんからのファイト・マネーの授与(筆者撮影)

 

優勝したKATHMIさん(筆者撮影)
優勝したKATHMIさん(筆者撮影)

 このABTの面白いのは、アーティストがアート作品をどのように作成していくのかのパフォーマンスが、直にみられることだ。

 アートは、美術館や劇場などで、完成した(最終)作品を観たり、感じたり、触れたりすることはできる。だが、それを作成したアーティストや役者などと直接話したり、その作成プロセスを観たり、接することはあまりない。   

アーティストの製作の様子(筆者撮影)
アーティストの製作の様子(筆者撮影)

 最近では、アーティスト等が同席するオークション・イベントなどがあり、作成したアーティストと話すことができ、作品について話したり、アーティストの人柄などを知ることのできる機会も増えてきている。だがその場合も、作品は飽くまでも完成されたものを見るだけだ。

 演劇も、舞台後に一部役者と話す機会があったり、映画でも舞台挨拶があったり、様々なメーキングの動画が製作されてきていて、以前に比べれば、アートやアーティストに関して、様々な角度から接したり、知る機会は増えてきている。

参加アーティストの集合写真(筆者撮影)
参加アーティストの集合写真(筆者撮影)

 だが、やはりアート作成のプロセスに直に接したり、直接観たり、それと共にアーティストと会話を交わす機会は少ない。

 その意味からも、ABT(あるいはAB)は非常に興味深い機会だと思う。アーティストとの距離も非常に近く、観客が容易にアーティストに話しかけたり、一緒に写真を撮ったりできる。

 また、このABTは、アーティストも観客も共にこのイベントを楽しんでいて、いわゆるアート鑑賞ではなく、まさにアート製作のプロセス(注3)やその雰囲気を直接に味わうことのできるエンターテインメントなのだと思う。

 参加者も、20、30歳代の方々が中心で(注4)、家族連れも多く、外国人も参加者も多く(注5)、観客は400名程度、アーティストやスタッフ、メディアなども入れれば500名程度の参加者で、全体が大いに盛り上がっていた。

 このABTのようなイベントは、参加者とアートとの関係性を変える試みとして、また新しい社会やアートの役割の可能性を考える上で、非常に興味深いものだと思った。

(注1)「『STEAM』とは、サイエンス(Science/科学)、テクノロジー(Technology/技術)、エンジニアリング(Engineering/工学)、アート(Art/芸術)、マセマティックス(Mathematics/数学)の頭文字を取った造語。児童生徒が数学・科学の基礎を身につけた上で、技術や工学を応用して、問題に取り組む「STEM(ステム)」にアートの感覚、具体的にはデザインの原則を用いたり、想像力に富み、創造的な手法を活用したりすることによる問題解決を奨励すること。このために必要な能力を統合的に学習することが『STEAM教育』である。」(「STEAM教育」[若林朋子・ライター/2019年]の一部:出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」)

(注2)今回のイベントでは、さらにバスケットボールを使ったパフォーマンスなどもあり、飽きることのないプログラム構成。

(注3)参加アーティストの中には、アートの製作プロセスそのものを、観客に向けて、見た目でもアピール十分なパフォーマススをして、投票を得る努力をしている者もいた。

(注4)参加アーティストも、20、30代で若い。

(注5)筆者が、アート系のイベントに行くといつも感じることがある。それは、そのような場には、外国の方の比率が非常に高いことだ。なぜそうなのか。日本人は、アートにあまり関心がないのか。非常に興味深く、今後その理由を考えていきたいポイントだと思っている。