日本にも、市民ロビイストが必要ではないか?

(写真:ロイター/アフロ)

 先日、『変革のための市民ロビー活動(“Lobbing for Change")』の著者の、アルベルト・アルマノ氏の話を聞く機会があった。同氏は、大学の法律の教授であり、公益を専門分野にする弁護士である。そしてまた公益のためのロビー活動を推進するために連携を生み出す活動をする組織“The Good Lobby”の設立者・所長でもある。非常にエネルギーに溢れ、説得力のあるプレゼンで、とてもチャーミングな方であった。

 ロビー活動やその活動を行うロビイスト、市民活動というとどうしてもアメリカの社会や政治を考えがちだが、アマルノ氏の話を聞いて、EU・ヨーロッパでもやはりロビー活動や市民活動が実は活発に行われていることを知った。その中で、同氏は、SNSを通じて、市民の情報が米国の企業などに収奪される状況を抑えるための法整備を行った市民ロビイストの事例などをあげていたが、それらの活動は、今後の日本社会においても当然に考えられるべきことであると感じた(注)。

 同氏の話からもわかるように、いわゆる民主主義の国や地域では、さまざまな形で市民が、政治や政策に関わり、それらに影響を与える活動や動きが行われていることがわかる。

 では、翻って日本はどうだろうか。日本でも、市民が様々な形で、社会や政治に関わってきてはいるが、実際の成果になったものは、NPO法の制定、DV法改正、刑法の性犯罪規定改正など非常に限定されているのが現状だ。

 もちろん、市民が政治や政策に関わるといっても、国や地域の文化や歴史により、違いや特色があるだろう。その意味では、学ぶことは多々あっても、アメリカ的なロビー活動やアマルノ氏のEUでの市民ロビイストを単に真似るだけでは、日本ではうまくいかないだろう。

 そのような状況も踏まえて、日本において、市民が政治や政策に影響を与えるグラスルーツの活動をどう進めていけるかを学ぶ学校である「グラスルーツスクール」が開講する。同スクールの目的は、緊張感を持ちながらも行政と連携して公共領域の課題解決を図ることのできる、パブリックマインドを持った地域の担い手を育成することだ。正に日本型市民ロビイストをつくるということ。しかも、同スクールの学長は、先述したNPO法の設立と改定の中心的な役割を果たした松原明氏(NPO法人シーズ創業者・理事)。その意味からも、同スクールは、単なる学びの場であるのでなく、最終的には政策や社会の問題解決において、実際の成果を出していくことを目指している。特に、松原学長の話およびノウハウは、NPO法の制定と改定における貴重な経験に基づいた知見から得られた実践知であるので、それを学べば、日本における政策や法律の作成において、市民が有効に機能し、大きな成果を生み出していく上で大きな力になるに違いない。

 また、同スクールが開始・継続されていくことで、これまでは個人の経験知であったものが、社会的知見の蓄積になるだろう。そして、そのことが引いては、市民の政治や政策形成における社会的役割を高め、日本を、正に市民が社会を支え育てる、より民主主義的な社会にしてくれることになるだろう。筆者は、そのような思いをもって、同スクールの運営に関わっていきたいと考えている。

(注) 最近公開された映画「ザ・サークル」は、SNSを通じた情報収集で、社会的な安全性が高まる一方で、個人のプライバシーや自由や人権などの侵害や別の意味の社会的なリスクを描いており、アルマニ氏が指摘した事例にリンクする。