日本の政策形成(2)…政治・政策リテラシー講座23

先の拙記事「日本の政策形成(1)…政治・政策リテラシー講座22」で述べたように、日本では新たなる政策形成、ひいては政治決定のメカニズムが必要になってきているのです。

 

  そのようなことは、実や国会議員や官僚の間でもそれなりの共通認識になってきています。行政中心の政策形成だけでは、日本という国家の運営がうまくいかなくなってきたのです。そして、その現状を認識し、それを乗り越えていくために、政治主導や官邸主導などが、政治の側でも叫ばれるようになってきており、実際にそれに向けてのいくつもの試みがなされてきたのです。

それらの試みは、たとえば国鉄やNTTの民営化、小選挙区制の導入、中央省庁改革、小泉政権でも経済財政諮問会議を中心とする官邸主導の政策形成の手法の実現などです。それらは主に1990年代ごろを中心にそれ以降に行われてきた試みです。

しかしながら、現実にはそれらの試みにも関わらず、行政主導の政策形成を大きく変えることはできませんでした。そして、政策・政治と国民・有権者の間の齟齬から、政治主導や脱官僚を標ぼうする民主党が、2009年の総選挙で大勝し、政権を獲得し、戦後のほぼ全期間を占めてきた自民党が与党である政治体制(1955年の保守合同などによってできた仕組みなので、55年体制と呼ばれます)を大きく変えたのです(注1)

  民主党は、官僚中心の政策形成を変更するために、政務三役(注2)による省庁のコントロールなどの政治主導での政策形成を試みました。また「新しい公共」(注3)という考えのもと、日本社会の現場で活躍するNPOなどの人材などを政策形成に活かすことや討論型世論調査(DP、注4)の活用なども行い、従来とは異なる情報収集や世論の把握、新しい政策形成のやり方を行おうとしました。

しかし、民主党は、経験不足であったこともあり、政権や党の運営に失敗し、さらに結局は自民党が以前におこなっていた官僚中心の政策形成とほぼ同様の手法に回帰してしまうなどの失態を演じました。その結果、国民の支持を失い、2012年12月の総選挙で大敗し、自民党が政権に復帰したのです。

  また、これらの出来事と並行する形で、自民党や民主党が、行政以外の政策情報源を構築するために、政党シンクタンク(政策研究機関)をつくる試み(注5)も、2005年ごろにありました。しかし、結局は必ずしもうまくいかず、現在はほとんど消滅してしまいました(注6)

  さらに、1997年前後には、独立系の民間シンクタンク(注7)が出来て、活躍しました。だが、その後、そのいくつかは消滅したり、活動が低下しています。他方、別の新しいシンクタンクが誕生してきてもいます。しかしながら、日本の民間シンクタンクが、政策形成過程を大きく変えてきているとはいえません。

  以上のことをまとめれば、日本でも、官僚中心の政策形成過程を変えようとするさまざまかつ多くの試みが行われてきたといえます。そして、政権交代などの大きな変化もありましたが、政権再交代で政権が自民党に戻り、「官僚主導」のやり方に回帰したことで、この20年で振出に戻った感があります。もちろん、若干の変化は今も残っていますし、今も新しい変化や改善に向けて試みは生まれていますが。

  私たちは、そのような現状を認識した上で、過去の成功や失敗の経験も踏まえて、日本の今後のために、新しい政策形成のやり方を模索し続けていかなければなりません。

(注1)日本新党の細川護煕および新生党の羽田孜の連立政権も、一時的(1993年8月9日~1994年6月30日)に成立した非自民党政権です。

(注2)政府三役とは、大臣、副大臣、政務官のことで、官僚でなく政治の側の人材です。

(注3)新しい公共に関しては、次の通りです。

「20世紀は、経済社会システムにおいて行政が大きな役割を担った時代でした。しかしながら、経済社会が成熟するにつれ、個人の価値観は多様化し、行政の一元的判断に基づく「上からの公益の実施では社会のニーズが満たされなくなってきました。そして現在、官民の役割分担の見直しが行われ、民間企業や個人と並んでNPOなどの民間セクターが重要な役割を担いつつあります。これまでの行政により独占的に担われてきた「公共」を、これからは市民・事業者・行政の協働によって「公共」を実現しなければなりません。これが「新しい公共」の考え方です。

 その一方で、現在の法律や予算などの制度は既存の枠にとらわれており、「新しい公共」の担い手が利用しやすい制度とはなっていません。そこで、「新しい公共」の担い手の皆さまと協同し、新たな制度や政策を構築するための議論を行い、その「新しい公共」を創出するルール、担い方のルールを定めていかなければなりません。」 (出所:「新しい公共」@民主党)

(注4)DP(deliberative poll)は、賛否が分かれるテーマに関して、討論を通して意見がどのように変化するかをみる世論調査の手法です。

(注5)自民党が「シンクタンク2005・日本」(2006年3月)、民主党が「公共政策プラットフォーム(プラトン)」(2005年)を設立しました。詳しくは、『日本に「民主主義」を起業する…自伝的シンクタンク論』や「日本になぜ(米国型)シンクタンクが育たなかったのか?(季刊 政策・経営研究 2011年vol.2)」など参照。

(注6)拙記事「万感の思いで迎える自民党シンクタンク解散」参照。

(注7)それらは、国際研究奨学財団(のちの東京財団)、構想日本などです。なお、詳しくは、(注5)の関連資料参照。