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“インスタ離れ”の声も ショッピング機能は成功するのか

砂押貴久STEKKEY 代表
ZOZOTOWNが「ShopNow」機能を使って投稿した

「インスタグラム」が日本でも画像のタグ付けからECに直接リンクする「ShopNow」機能を解禁したことで、“気になった商品をそのまま買い物”できるようになった。

今までであれば、気になる商品は「インスタから離脱して、ブラウザから購入サイトを探して…」といったわずらわしさがあった。そのため、この手間から開放されることは、売り手・買い手ともに便利な機能であることには間違いない。

現在は一部のブランドやショップアカウントでしか「ShopNow」機能を使えないが、今後さまざまなビジネスアカウントで利用できるよう拡大していくはずだ。

その一方で懸念の声も挙がっている。大きく分けて二つ。

広告臭が強い投稿が増える

投稿写真のタグをクリックすると、商品の価格が書いたページに遷移。更にクリックするとECサイトの購入ページに遷移する仕様だ
投稿写真のタグをクリックすると、商品の価格が書いたページに遷移。更にクリックするとECサイトの購入ページに遷移する仕様だ

「インスタグラム」は「ブランドの世界観」を伝える場としてイメージ・コミュニケーションに特化してきたが、「フェイスブック」が買収後は広告面の販売が始まり、今回の仕様追加で「物撮り写真」のような販売・広告色が強い投稿が増えることが予想され、持ち味のオーガニック感が薄れていくことへの懸念だ。

個人ユーザーの利用可否が今後に影響

そして、もう一つの懸念は「今後、ShopNow機能が個人アカウントにも適用されるか」だ。仮にビジネスアカウントの個人ユーザーにも任意でタグが付けられるようになると、そこに着目して企業が影響力が強い人(インフルエンサー)へタグ付けを依頼することになるだろう。ここまではビジネスの話なので問題はない。問題はそれを「仕事」であることを隠して行うステルス・マーケティングのケースが多発し“ステマグラム”にならないかだ。

また、これまで「認知拡大」を目的として話題だったインフルエンサー・マーケティングが終焉に向かう可能性もある。この機能によって、どのユーザーがどの投稿でどの程度購入したかまでわかることで、「売上向上」を目的としてインフルエンサーを利用する可能性が高い。そうなると、企業の要望に叶う人は少なくなるだけでなく、そのようなプレッシャーが嫌で“インスタ離れ”を生みかねない。

インフルエンサーと呼ばれる多くのフォロワーを抱えるユーザーが消えていけばマーケティングの崩壊だけでなくユーザー損失を生みかねない。このように一歩間違えると「インスタグラム」が終焉に向かう可能性もある機能だけに、今後の動向に注目だ。

STEKKEY 代表

1987年東京生まれ。ファッションジャーナリストを経て、WWD JAPAN.comのチーフプランナーに就任。サイトリニューアルや広告メニュー立案を行いデジタル部門の確立したのち、2018年に株式会社STEKKEYを設立。ファッション、ビューティー、ライフスタイルブランドなど、これまで100を超えるブランドのブランディング、クリエイティブ制作、デジタルコミュニケーション戦略やサービス開発などに携わる。Yahoo!ニュースオーサーに加え、Forbes JAPAN Web オフィシャル・コラムニストも務めている。問い合わせ:info@stekkey.com

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