洋服も接客なしで店頭で買える時代に 渋谷の無人店舗体験レポート

ガチ(自費)で実際に無人店舗を体験してみた。写真はすべて筆者が撮影。

ショッピングの新体験と働き方改革として注目されるキャッシュレスな無人店舗。海外では「Amazon Go」「Bingo Box」、日本ではコンビニ業界が実験を開始するなど、無人店舗が熱を帯びてきた。

2月9日に渋谷パルコ パート2の跡地に開業した「ホテル コエ トーキョー(hotel koe tokyo)」もその一つだ。「ホテル コエ トーキョー」はストライプインターナショナル(以下、ストライプ)が構想から2年かけたホテル併設型旗艦店。1階はレストラン&イベントスペース、2階はアパレル&雑貨ショップ、3階はホテルとライフスタイルを提案するストライプならではの構成だ。アパレルショップの営業時間は10時~23時。内、21時~23時の2時間で無人店舗を実施している。

無人店舗の利点は、経営者目線で考える「ロー・コストオペレーションの実現」、消費者目線で考える「夜でも買えるという利便性」が挙げられる。それ以外にも、洋服のショッピング特有の「販売員に声を掛けられたくない」「お見送りされたくない」といった「接客されるのが苦手」な人にとっても魅力的なこのサービス。今回は実際にショッピングを体験した感想を通じて無人店舗の可能性や課題を伝えたい。

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店舗全体のクリエイティブディレクション・設計・インテリアデザインは、谷尻誠氏と吉田愛氏による建築設計事務所のサポーズデザインオフィス。ロゴやグラフィックデザインなどは、国内外で数々の賞を受賞するグラフィックデザイナーの川上シュン氏が担当している。

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アパレルショップは2階のため、まずは中央の大階段をのぼる。

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階段をのぼると無人の光景が広がる。貸し切り状態のような爽快感!だが、1階がレストラン営業しているせいか不思議と無人特有の静けさは感じない。まずはフラフラと店内を一周してみる。

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店内中央を囲むようにあるロングテーブルの上にはハッシュタグやWi-FiのID/PASSを記載したカードが置いてある。そのため「いつもならNGな店内撮影」も可能。ただし他のお客さんに迷惑がかからないように。

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取り扱いは「コエ(koe)」「コエ×トム ブラウン(koe×THOM BROWNE)」が中心。商品価格帯はトップスが1990円~3990円、ボトムスが2990円~4990円と手軽に購入出来るのが魅力だ。

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いつもなら「見るのをためらう」女性コーナーも堂々と見える。なんなら試着も堂々とできる。

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同じく人目が気になる「値札を見る」行為も堂々とできる。いつもなら「タグなんて見ない」と決め込んで、痛い目にあってる人もこれで安心してタグを見れる。

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最初は無人店舗に恐る恐るだったが、徐々に慣れてきたせいか、広い店内をショッパーを持ち歩くのも面倒なので、ロングテーブルの上に試着したいアイテムを置く。無人ならではの贅沢。

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「試着していいですか?」とこちらから声を掛けることもないので、いよいよ「いつもと違う空気感」を感じ始める。今回は普段「似合うか似合わないかわかりにくいから手を出さない」アイテムを試してみたかったため、キャップとサングラスを選んだ。

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試着中に「そうだ!写真撮影は自由だ!」と思い出し、試着室から「これ似合う?」と友人にメッセージ。返信を待つ時間も気にしなくていいので、優雅に「似合う」の一言だけを待つことができる。

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買う物を決めたら、いよいよ本番!検証の目玉でもある会計タイム!

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無人店舗のカギを握るセルフ&キャッシュレスの「スマートレジ」。シンプルでわかりやすい操作手順が記されている。

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まずは商品のタグに記載されているバーコードを照らし合わせる。

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一点一点読み込むと瞬時に会計が表示される。すべて読み込んだら、右下の「クレジット支払」ボタンを押す。

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カードを通すと「カード会社名」と「支払方法」が表示された。支払方法は一括のみ。現在対応している支払方法はクレジットカード(VISA、JCB、Mastercard、AMERICAN EXPRESS、Diners Clubなど)のみ。今後は「Suica」や「PASMO」などの交通系電子マネー、 Apple Payで使用できる決済手段、楽天EdyやWAONなどの電子マネーに順次対応していく予定だ。今回の決済は「LINE Pay(JCB)」を使用した。

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支払いが終わると自動でレシートが出てくる。

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会計が終わったらハンガーを外し、4種類のショッパーから好きに選んで購入商品をつめこむ。

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以上でショッピングは終了!

時間や人目を気にしなくていいから滞在時間が長くなる

店内が広いということもあるが、結果的に入店から会計まで1時間も滞在した。普段であれば、サーッと店内を回って退店するが、無人特有の「解放感」のお陰で、ゆっくりと商品(特に着こなしに自信がないアイテム)に向き合うことが出来た。

無人店舗だけど無人感を感じない

写真には映っていないが21時~22時の時間帯は想像していたよりもお客さんの入りが多く、10組程度と居合わせたため孤独を感じなかった。そのため、試着や会計時以外は無人店舗だということを忘れる空気だった。

会計は迷うことがない

正直、体験する前は「会計が面倒」と思っていたが、体験してみるとその印象はなかった。実際にショッピングしていたお客さん(35歳・男性・メーカー勤務)に取材すると「無人店舗とは知らず普通に入店しましたが、レジ操作も迷わず煩わしさはなかったです。特に良かったのは、試着して似合わなかったものを店員に返却する気まずさがなくて良かったです」と無人ならではのメリットを感じたようだ。

無人だからこその課題

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ここまで無人の魅力を紹介してきたが、いくつか困ったこともあった。まず「在庫確認ができない」ことだ。サイズやカラーバリエーションについて店員さんに聞けないので、「目の前にそれがない=諦める」しかなかった。

次は試着後の問題。「試着して似合わなかったものを店員に返却する気まずさがなくて良かった」というメリットもあるが、自分で元の位置にもって行かないといけない面倒さは感じた。そして店内が広いこともあり、どこに置いてあったか思い出せない商品もあった。だが、この問題は試着室の前に返却ラックを置いておけば解決する問題だ。ボックスのような中身が見えないものにしてしまうと、他のお客さんがそのアイテムを発見できなくなってしまうため、小物を置いたりできる棚とハンガーが掛けられるラックがあれば最適だ。

他にもTAX FREEなど、無人では対応が難しい問題もあるが「大きな問題は何もない」と感じた。

気になる万引き対策

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いくら治安がいい日本と言えど、万引きの対策は必要だ。店内はまんべんなく防犯カメラが置いてあるが、商品にあの黒い防犯タグが付いていない。だが一見「普通のタグのようにみえる」このタグはRFIDタグと呼ばれるもので、レジを通っていない商品は1階の入り口センサーでアラートが鳴るシステムになっている。

なぜ無人営業をすることになったのか?

業界では「効率を追い求めると提案力が失われる」と危惧する声もあるが、篠永奈緒美「koe」事業部クリエイティブディレクターは「アパレル業界は21時以降も営業しているショップ自体が少ないため、これまで遅い時間しか買い物ができない方々は休日やECサイトでしか購入できませんでした。この店舗では店頭購入のニーズにお応えするためロー・コストオペレーションの手段として実験的に無人店舗を導入しました」。また、このような一部の時間帯(夜)だけにすることで無人店舗の特有課題でもある店内物流も翌朝に対応できる。

客層や日中との違いについては「ブランドの平均より少し男性の方が多い傾向ですが、男女比は6:4でともに30代後半が中心。日中はお土産として雑貨も動きますが、21時以降は雑貨の購入は少なくウェアがメイン」となっている。

無人店舗はアリ!

筆者は元々、販売員の接客を受けたことで着こなしの広がりや服に込められた想いを知ってファッションに興味を持った。だからこそアパレルの有人店舗はセレクトショップを中心に絶対的に必要不可欠と感じる。

ただ無人店舗は「接客が苦手」「なんとなくショッピングしたい」というような気持ちの問題から「ECで買うとサイズ感がわからないもの」「似合うかチャレンジしたいもの」「とりいそぎで必要なもの。でもコンビニにはないもの」などを購入する手段として広がってほしいと感じた。