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実は要注意選手が不在? イラン人記者に聞くアジアカップ準決勝 「日本とは五分の勝負」

杉山孝フリーランス・ライター/編集者/翻訳家
アズムンの他にも要注意の選手が…(写真:ロイター/アフロ)

歴代有数の強力チーム

昨年12月に発表されたFIFAランキングで、AFC(アジアサッカー連盟)内でトップに立っているのは世界ランク29位のイランだ。それに続くのが41位のオーストラリアで、50位の日本は「3番手」となる。

ここまでの戦いぶりを見ると、イランはグループステージ3試合を7得点無失点と2勝1分けで首位通過した。日本が準々決勝で1-0と下したベトナムにも、第2戦で2-0と勝利している。準々決勝でも、中国を3-0と振り切った。

昨夏のワールドカップ・ロシア大会でも、グループ敗退を喫したものの、初戦でモロッコとの激闘を1-0で制し、スペインにも0-1と肉薄、ポルトガルとは0-0で引き分けた。そうした結果が反映されたランキングの正当性を、今大会の数字でも証明している。

この代表チーム、そして日本戦を、イランの記者はどうみているのか。国内メディアのチーフとして大会を取材しているペジマン・ラフバル記者に聞いた。

イランは、アジアカップで2度の優勝経験がある。1968年と1976年に、アジアの頂点に立っている。そうした歴史を持つ強国だが、今大会に臨む選手らは「歴代でも指折りの最強チームだと思う」とラフバル記者は語る。

これまでの最強年代に数えられるのは、上記の1970年前後のチーム、日本代表とプレーオフでアジア第3代表出場権を争い、大陸間プレーオフの末にフランス・ワールドカップに出場した1998年のチームだという。さらにはアジアカップで3位となった1996年を引き合いに、「それ以来の非常に力のあるチームだと思う」と話した。

要注意選手は出場停止だが…

日本にとって最も危険な存在となり得る存在としては、メフディ・タレミの名を挙げた。だが、このFWは準々決勝の中国戦で今大会2枚目のイエローカードを受け、日本戦では出場停止となる。そこで“要注意選手”として挙げたのは、今大会でも4得点しており、日本でも名が知られているサルダル・アズムンだ。「アジアのどのチームを相手にしても、得点することができると思う。とてもヘディングが強いし、すごくスピードがあり、技術も高い。素晴らしいFWとしての、すべての要素を備えている」。

さらに、FW以上にラフバル記者が誇る選手がいる。アリレザ・ベイランバンドだ。「一番の強みはGKだ。オマーン戦ではPKをセーブしたし、素晴らしい反応を示していた。ここまでの5試合を完封している。日本戦は彼にはとても良いテストになるし、大きな試練になるだろう」。

国内外でも、イランを称賛する声が多い現状だが、ラフバル記者は冷静だ。本来の“一押し”が出場停止であることを考慮したのだろうか、「日本が勝利する可能性は50パーセント」と話す。

ラフバル記者は「とても質の高い選手たちがいる」と、日本代表を評する。また、興味深いのが、「日本はミステリアスなチーム」と話したこと。日本がここまでさまざまな内容で勝利をつかんできたことが、そう言わしめているのかもしれない。

一方で、国内の声はラフバル記者以上に楽観的だそうだ。「イランのファンは、勝てるという大きな自信を持っている。日本はそれほどパワフルではないとみているし、日本相手に何かやってやるには、とても良い機会だと思っている」。

ただし、ラフバル記者はイランの国技での対戦も例に挙げて、警戒を解かない。「日本との試合は、いつも一筋縄ではいかないし、簡単なゲームにはならない。サッカーだけではなく、レスリングでも日本は素晴らしい。今回の試合も五分五分で、とてもハードなものになると思っている」。

代表チームも一分の隙もなく、全力で立ち向かってくることだろう。

フリーランス・ライター/編集者/翻訳家

1975年生まれ。新聞社で少年サッカーから高校ラグビー、決勝含む日韓W杯、中村俊輔の国外挑戦までと、サッカーをメインにみっちりスポーツを取材。サッカー専門誌編集部を経て09年に独立。同時にGoal.com日本版編集長を約3年務め、同サイトの日本での人気確立・発展に尽力。現在はライター・編集者・翻訳家としてサッカーとスポーツ、その周辺を追い続ける。

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