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デュラント、カイリーの移籍以降、苦しむネッツはどこに向かうのか ベテラン記者が分析

杉浦大介スポーツライター
シモンズは今季も最初の37戦中、プレーしたのは6戦のみと故障に悩まされている(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨季途中から新体制に入ったブルックリン・ネッツが苦しんでいる。

 ケビン・デュラント、カイリー・アービングといったスーパースターたちが2022~23シーズン途中にチームを去ったおかげで核が不在となり、多くの職人的選手を揃えたロースターに止むなく方向転換。今季最初の23戦を13勝10敗で乗り切ったまではよかったが、以降、2度の5連敗を経験するなど停滞中だ。

 1月7日のゲームを終えた時点で16勝21敗。連戦の2日目だった昨年12月27日のミルウォーキー・バックス戦では主力選手を意図的に休ませ、NBAから10万ドルの罰金処分を受けて批判されたこともあった。ワシントン・ウィザーズ、ポートランド・トレイルブレイザーズといった再建中のチームにも敗れており、ファンのフラストレーションもそろそろピークに達しようとしている。

 今後、ネッツはどこに進むべきなのか。Netsdailyのサイトマネージャーを務め、 “プーチ”の愛称でネッツファン、関係者に長年親しまれてきたアンソニー・プチオ記者(Twitter : @APOOCH)に意見を求めてみた。

”プーチ”のニックネームでファンから親しまれるプチオ記者 撮影・杉浦大介
”プーチ”のニックネームでファンから親しまれるプチオ記者 撮影・杉浦大介

 以下、プチオ記者の1人語り。

 新たなアイデンティティ構築に苦戦

 ご存知の通り、現在のネッツには多くの課題があります。だいたいリーグの平均かそれ以下のところにいるチームであり、多くのファン、関係者が“停滞中”という印象を受けていることでしょう。

 行き詰まっているのは仕方ない部分もあります。2019年以降、ネッツはデュラント、アービング、ジェームズ・ハーデンというビッグ3中心のチーム作りを押し進め、その過程で多くの犠牲も払いました。それが昨季途中、やり直しを求められたのですから、方向転換が難しいのは当然です。

 それでも今季序盤、常にハードにプレーする見ていて楽しいチームという新しいアイデンティティを確立しかけているようにも見えました。昨年11月下旬から12月13日まで9戦中7勝を挙げ、敵地フェニックスで強豪サンズを下した頃には楽観論も出てきていました。

 ただ、シーズン中盤に差し掛かり、負けが増え、同じように見るのは難しくなっています。残念なのはやはり故障者が多かったことですね。誰かが戻ってきたら、また誰かが離脱、2人が戻ってきたら3人が欠場といったことの繰り返し。“全員が健康体ならば”と言われ続けながらここまできてしまった印象もあります。

昨年12月、渡邊雄太(左)が移籍したサンズに敵地で勝った際には期待を持たせたが••••••
昨年12月、渡邊雄太(左)が移籍したサンズに敵地で勝った際には期待を持たせたが••••••写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 特に2022年2月、ハーデンの見返りとして獲得されたベン・シモンズのコンディションがなかなか整わず、復帰の目処が整っていないことがネッツに暗い影を落としています。チーム最高給選手が離脱中であれば、チームの潜在能力がどの程度なのかを測りづらいのは事実。とはいえ、ケガ人が出るのもまたこのゲームの一部であり、そこまで含めて総合力ということなのでしょう。

最大のポジティブな要素は“ドラフト指名権を持っていること”

 明るい材料を挙げるなら、3年目のキャメロン・トーマスには向上の跡が見えることです。トーマスにフランチャイズプレーヤー候補と呼べるほどのポテンシャルがあるかどうかはともかく、まだ22歳と若く、その得点力(平均20.3得点)には魅力はあります。また、ミケル・ブリッジス、キャメロン・ジョンソンも好選手ではあり、彼らはチームの基盤にできるプレイヤーたちなのでしょう。

 ただ、現実的に考えてみて下さい。ブリッジス、ジョンソン、トーマスという3人が軸のチームでは優勝は狙えません。少なくとも今の時点ではチーム全体が経験不足なのに加え、多くの選手たちのポジション、役割が被っており、力が出し切れていないのが現実です。付け加えればジャック・ボーンHCももう48歳と特に若いわけではりません。総合的に見て、今のメンバーでこのまま進もうとしても、伸びしろは限られていると思います。

 ネッツにとって最大のポジティブな要素は、2025年以降、複数のドラフト指名権を保持していることなのかもしれません。そういった意味でのフレキシビリティはあり、大きく向上するポテンシャルがないわけではないのです。

押し出されるように新エースを務めるブリッジス(背番号1)も攻守両面で優れた選手だが、No.1オプションに相応しいかには疑問が呈される
押し出されるように新エースを務めるブリッジス(背番号1)も攻守両面で優れた選手だが、No.1オプションに相応しいかには疑問が呈される写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

2月10日のトレード期限までに動くかどうか

 今のネッツには大型補強が必須だと思います。振り返ってみれば、2018~19シーズン、ケニー・アトキンソンHCの指揮下、ディアンジェロ・ラッセル、スペンサー・ディンウィディー、ジャレット・アレンといった選手たちの台頭でネッツはエキサイティングなチームに成長しました。その後、前述通り、デュラント、アービングといったスーパースターたちの加入でアリーナは常に満員になりました。

 それが今季は観客動員でリーグ20位。今のチームにもいい選手はいますが、ファンを惹きつける魅力のあるスターは不在になってしまいました。

 勝ち星は伸びておらず、ファンの期待感が消失し、その一方でフレキシビリティは備えているのであれば、時間を無駄にしてはいけないというのが私の考え方です。早く何かを変えなければいけません。長い時間をかけた再建ではなく、迅速な方向転換が必要だと思っています。

クリーブランド・キャバリアーズのドノバン・ミッチェルをネッツが獲得に動くという見方も
クリーブランド・キャバリアーズのドノバン・ミッチェルをネッツが獲得に動くという見方も写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 私は長年、このチームを見てきました。今の状況のまま、ショーン・マークスGMが陣頭指揮を執るフロントがトレード期限をやり過ごすとは考えていません。

 近いうちに間違いなく何らかの大きな動きがあるでしょう。ネッツには他に選択肢があるとは思えず、2月のトレード期限には注目チームの1つになるとここで予想しておきます。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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