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ハードパンチャーか、アウトボクサーか Sライト級の好カードを元世界王者が予想

杉浦大介スポーツライター
Ed Mulholland/Matchroom

12月9日 サンフランシスコ チェイスセンター

WBC世界スーパーライト級タイトル戦王者

レジス・プログレイス(アメリカ/34歳/29-1, 24KOs)

12回戦 

世界ライト級4団体統一王者

デビン・ヘイニー(アメリカ/25歳/30-0, 15KOs)

 中量級の楽しみな一戦がまもなくゴングを迎える。世界ライト級の4冠を制し、前戦では際どい判定ながらワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)を下したヘイニーが2階級制覇に挑戦する。対する王者プログレイスは好戦的なサウスポーのパンチャーであり、噛み合った好ファイトが十分に期待できそうだ。

 注目のタイトル戦を前に、現在はESPN系列の解説者として活動する元WBO世界スーパーフェザー級王者ジャメル・ヘリングに予想、分析をしてもらった。

 かつて伊藤雅雪(現プロモーター)を下して世界王者になった聡明な38歳の目に、サンフランシスコに2万人近い観衆を集めるとみられる垂涎のタイトルマッチはどう映っているのか。

 (以下、ヘリングの1人語り)

パンチャーとアウトボクサーの激突

 プログレイス対ヘイニー戦は多くの好カードが実現した2023年の年末を飾るにふさわしいマッチアップですね。ヘイニーはプログレイスのハードパンチを浴びた際に耐えられるのか、前戦のダニエリト・ソリージャ(プエルトリコ)戦で意外な苦戦(判定勝ち)を味わったプログレイスは本来のボクシングを取り戻せるのか、と様々な注目ポイントが頭に浮かびます。

 中でも鍵を挙げるとすれば、プログレイスが11回KOで快勝した(2022年11月の)ホセ・セペダ(メキシコ)戦のように距離を詰められるかどうかでしょう。

 ヘイニーは普段通りにアウトボクシングをするはずです。ジャブが有効に機能すればヘイニーが優位になります。ヘイニーは過去の戦いではサウスポー相手には通常ほどジャブを上手く使えてはいなかったので、プログレイスとの間の距離の奪い合いが重要な意味を持ってくると見ています。

 ヘイニーとってはスーパーライト級での初戦であり、そこにも未知数の要素が存在しますね。計量での姿を見る限り、ヘイニーの身体は大きいですが、今後は相手も大きくなるし、パワーも増します。試合当日、体つきがどうなるか、昇級の影響がどう出るかにも注目しておきたいと思っています。

 試合展開を予測しておくと、ヘイニーは早い段階から距離を制してポイントを奪おうとするでしょう。ヘイニーはリング全体を使う戦い方を熟知していますし、ロープを背負うことも滅多にありません。

 その選手を攻略しようと思えば、プログレイスは序盤からシャープである必要があると思っています。プログレイスがジャブにカウンターのフックを合わせることができれば面白くなります。

 難しいですが、ここであえて予想するなら60/40でヘイニー優位ではないでしょうか。そんな見方が一般的にも最も多いようですね。

Ed Mulholland/Matchroom
Ed Mulholland/Matchroom

 ただ、私はプログレイスとスパーリングをした経験があるのですが、彼は私が同日にスパーをしたエロール・スペンス・ジュニア(アメリカ)と同等以上のパンチャーでした。スペンス、プログレイスのサイズの違いを考えればプログレイスのパワーは印象的で、ファン、関係者が考えている以上のものがあると思っています。ヘイニーは過去、パンチを浴びてダメージを受けた経験もあるだけに、被弾後の姿が見ものです。

 サンフランシスコ出身のヘイニーには地の利もあり、やはりライト級の4冠王者がここでもアウトボクシングで判定勝ちを飾る可能性が最も高いとは思います。それでもプログレイスにはKO勝ちのチャンスがあるだけに、この試合は最後まで目の離せない一戦になることでしょう。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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