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世界Sフライ級王者・中谷潤人は統一戦に弾みをつけるか 米メディアが初防衛戦を予想

杉浦大介スポーツライター
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

9月18日 東京 有明アリーナ

WBO世界スーパーフライ級タイトル戦

王者

中谷潤人(M.T/25歳/25-0, 19KOs)

12回戦

アルヒ・コルテス(メキシコ/28歳/25-3-2, 10KOs)

 日本が誇る2階級制覇王者・中谷潤人(M.T)が18日、現在保持するWBO世界スーパーフライ級王座の初防衛戦に臨む。

 対戦相手は昨年9月、メキシコの英雄ファン・フランシスコ・エストラーダに善戦して評価を上げたアルヒ・コルテス(メキシコ)。この実力者が相手でも、今や軽量級のスター候補と目されるようになった中谷がやはり断然優位と見られている。5月、ラスベガスでアンドルー・モロニー(豪州)を痛烈な12回KOで下した中谷は、再び鮮烈なシーンを生み出してくれるのか。

 楽しみな一戦を前に、ラスベガス在住のボクシング・ジャーナリスト、ショーン・ジッテル氏がこの試合の展望、予想、中谷の今度の見通しを語ってくれた。

 FightHype.comのレポーターを務め、厳格な全米ボクシング記者協会(BWAA)からビデオグラファーとしては史上初めてメンバーに迎えられたジッテル氏。甘いマスクと確かな眼力を備えた新進気鋭のジャーナリストは、中谷の今戦&今後をどうに見ているのか。

ビデオグラファーとしては史上初めて全米ボクシング記者協会(BWAA)のメンバーに迎えられたジッテル氏 撮影・杉浦大介
ビデオグラファーとしては史上初めて全米ボクシング記者協会(BWAA)のメンバーに迎えられたジッテル氏 撮影・杉浦大介

 (以下、ジッテル氏の1人語り)

ジャブを生かす姿を見せられるか

 今回の防衛戦の相手となるコルテスは、中谷にとってインファイトのパンチの交換時に前戦のモロニーよりは怖い選手になると思います。中谷は素晴らしいボクサーファイターに成長しており、あれほどの長身&痩身ながら、インサイドの戦いも上手にこなします。今戦でも、そして今後も、接近戦の際のアッパーカットは中谷にとって重要なパンチであり続けるのでしょう。

 コルテスは手数が多く、メキシカンらしく恐れを知らない選手です。中谷戦はとても面白い試合になると思いますが、一枚上のハードパンチャーである王者の方がよりいいパンチを決め続けるというのが私の予想です。

 壮絶な打ち合いになったとしても、中谷は勝ち残れると思います。ただ、今戦では中谷がジャブを上手に使う姿も見たいところです。

 コルテスはただ前に出てくるだけでなく、随所に距離を取ろうとする場面もあるはず。そこで中谷が小柄な相手に強打を打ち込むだけでなく、ジャブをこれまで以上に有効に決める姿が見れるかどうかを私は楽しみにしています。

距離をとっても接近戦でも戦えるオールラウンドな強さが中谷の魅力
距離をとっても接近戦でも戦えるオールラウンドな強さが中谷の魅力写真:森田直樹/アフロスポーツ

 いずれにしても、KOにしろ、そうでないにしろ、私は中谷の勝利を予想します。コルテスに大苦戦したエストラーダよりも快適な形で勝利を手にできるでしょう。

近未来の標的は田中か、井岡か、エストラーダか

 中谷が今戦をクリアしたら、個人的にはその後、指名挑戦者の田中恒成(SOUL BOX畑中)か、田中に勝った井岡一翔(志成)と対戦するのを見たいところです。どちらも素晴らしいカードであり、日本のボクシング史に刻まれる一戦になるでしょう。

 井岡に敗れたとはいえ、田中はとてもいいボクサーです。井岡は将来、殿堂入りを果たすほどの選手であり、中谷との対戦は統一戦でもあります。

 この2人以外では、ローマン・“チョコラティート”・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)と中谷の日本での対戦も素晴らしいカードです。ゴンサレスはすでに全盛期を過ぎてはいますが、ここで激突すれば中谷のキャリアの大きな助けになりますし、“レジェンド(=ゴンサレス)”の最後のビッグマネーファイトの舞台としても申し分ありません。

中谷とエストラーダの激突はドリームマッチだが••••••
中谷とエストラーダの激突はドリームマッチだが••••••写真:ロイター/アフロ

 スーパーフライ級で最高のカードを選ぶなら、エストラーダ対中谷戦なのでしょう。25歳にして伝説的なボクサーと対戦し、勝てば、中谷は単なるタイトルホルダーではなく、”階級最強”の称号が得られます。エストラーダには井岡との対戦の噂がありますが、より魅力的なのは中谷戦の方です。

 ただ、あくまで個人的な意見ですが、様々な要素を考え、最も理に叶うビッグファイトは中谷対井岡戦なのではないかというのが私の見方です。階級最強を決める試合ではないとしても、日本では莫大な注目を集める統一戦になりますし、中谷は勝てば満場一致の形で“井上尚弥に次ぐ日本人ボクサー”の称号を手にできます。そんな背景から、近い将来の日本人新旧対決を私は熱望しているんです。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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